東レ PPS樹脂の耐トラッキンググレードが安全規格を取得

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2018年9月20日

 東レは19日、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂「トレリナ」の耐トラッキング性と強度を向上させた新グレード「A660HV」で、国際的な製品安全規格のUL規格で「ランク0(ゼロ)」、IEC規格で耐トラッキング性の最高ランク「材料グループⅠ」を取得したと発表した。

 600V以上の耐電圧特性をもつ同製品を、高耐圧化・小型化が進む新エネルギー車の電装部品など、高い耐トラッキング性が求められる用途へ展開する。

 PPSは難燃性に優れた素材だが、ナイロンやポリエステルに比べ炭化導電路を形成しやすく、耐トラッキング性が低いことで知られている。

 同社はこれまで、トレリナ耐トラッキング性グレードをパワー半導体モジュール用途を中心に販売してきたが、従来の同グレードはフィラーを高充填しているため靱性が低く、強度が不足する傾向にあった。

 この問題に対し、同社は複数のポリマーをナノメートルオーダーで分散させることで、優れた特性を発現させることができる「NANOALLOY(ナノアロイ)」技術を用い、PPSに耐トラッキング性ポリマーを微分散することで、難燃性と耐トラッキング性を両立しながら、強度の向上を実現した。

 一般的なPPSに比べ、絶縁設計で沿面距離を約半分に縮めることが可能となり、製品の高耐圧化・小型化への貢献が期待される。

 同社は今後、同製品を鉄道や太陽光発電に使われるパワー半導体モジュールのハウジング用途に加え、高耐圧化・小型化のニーズが高まる新エネルギー車のパワーコントロールユニットやバッテリー、充電器などへの提案を進めていく考えだ。

ポリプラスチックス 無理抜き成形可能なPPSのグレード公開

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2018年9月20日

 ポリプラスチックスは19日、「ジュラファイドPPS(ポリフェニレンサルファイド)」の無理抜き成形が可能なグレードを検証し、各種データとともにその検証結果をwebサイトに公開した。

 従来、自動車の冷却系部品(冷却水制御バルブ、インレット、アウトレットパイプなど)は6‐6ポリアミドや芳香族ポリアミドが主に使用されてきたが、ポリアミドは加水分解による強度低下や吸水による寸法変化などを起こすため、設計者にとっては使用が難しい材料。このため、冷却系部品でPPSが採用される事例が非常に増加している。

 ただPPSには、ポリアミドを用いて部品を成形する際に行われる「無理抜き成形」が難しいという課題があることに加え、バリレスが求められる部品にPPSを使用する場合、バリ取り工程が必要になることが多く、コストアップにつながっている。そこで、ユーザーの設計の自由度を高め、材料選定拡大の一助になると考え、ジュラファイドPPSの無理抜き成形が可能なグレードを公開した。

 同社は、エンジニアリングプラスチックのリーディングカンパニーとして、材料技術だけでなく、成形・加工技術の開発にも積極的に取り組んでいる。今回、公開した製品・技術に加え、成形・加工技術を融合させた同社の新たな発想を生産者に届けたいと考えており、今後も技術情報を発信していく方針だ。

帝人フロンティア 高級シルクウール調ポリエステル素材を開発

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2018年9月18日

 帝人フロンティアはこのほど、シルクウールの風合いと外観を兼ね備えた高級シルクウール調ポリエステル素材「ソロテックス ミナージュ」を開発したと発表した。今年度から販売を開始し、高級ファッション向けを中心に幅広く展開する。

 シルクウールの質感と外観を再現するため、ストレート形状のポリエステル長繊維を独自の高次糸加工技術で異位相太細構造とし、「ソロテックス」とブレンドさせて高次染色後加工を行った。

 これにより、天然素材に近い緻密な斑のある染着に加えて、これまでのウール調素材に見られるカサつき感を抑え、ウール独特の反発性としなやかさの発現を可能とし、シルクウールのような風合いと外観を併せ持つ素材を実現した。

 形態回復性やクッション性などの特徴を持つソロテックスを使用しているため、天然素材では実現が困難なウォッシャブルや防シワなどのイージーケアを可能とし、加工により撥水や防汚などの機能を容易に付与することができる。このため、幅広いファッションアイテムへの採用が期待できる。

 合繊素材による天然素材の再現は、これまでもさまざまに行われており、ウール調やシルク調などの合繊素材が開発されてきた。1950年代に流通し始めたシルクとウールのハイブリッド素材であるシルクウールは、ふくらみやしなやかさ、ソフト性、ミックス感のある杢外観、発色性など、合繊素材では同時に再現することが難しい特性を兼ね備えており、合繊素材でそれを実現することはできなかった。

 こうした中、同社は独自の糸加工技術を基盤として、糸構造や染色加工の最適化を図ることで、同製品を開発した。

 今後は高い審美性を持つ快適ファッション素材として販売を開始し、中肉素材を中心に高級ファッション向けのジャケットやアウター、ボトム用途に積極的に提案。これにより、今年度に1万m/年、来年度に5万m/年、再来年度には10万m/年の販売を目指す。

GLM スポーツEVのフロント窓に帝人のPC樹脂を採用

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2018年9月14日

 EV(電気自動車)メーカーのGLM(京都市左京区)は13日、帝人と共同開発している樹脂製のフロント窓(フロントウインドー)を搭載したスポーツタイプのEV(スポーツEV)で、「道路運送車両の保安基準(第29条)」を満たす国内認証を取得し、7月に自動車登録番号標(ナンバープレート)を取得したと発表した。

樹脂ウィンドーでナンバーを取得したスポーツEV
樹脂ウィンドーでナンバーを取得したスポーツEV

 GLMが販売するスポーツEV「トミーカイラZZ」への採用を念頭に共同開発しており、約2年をかけ公道での走行が可能になった。認証を取得した車体をベースに、年内には受注生産体制を整え、同車の特別仕様車として来春、販売する。樹脂製のフロントウインドーを搭載した市販車はこれまでなく、世界初を目指す。

 樹脂は軽量でガラスの200倍の耐衝撃性を持つ、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)を採用。その表面に帝人が開発したコーティング剤による特殊加工を施すことで、傷つきやすいPC樹脂の耐摩耗性を、強化ガラス並みに高めることに成功し、車に適用できるようにした。

 このPC樹脂を自動車のフロントウインドー用に縦約700mm、横約1300mmの曲面を持つ一枚板として射出プレス成形。全体の厚みを6mmと均一に保ちながら、窓枠にあたる外側部分を10mmの厚みにするなど両社で改良を重ね、窓枠(Aピラー)をなくすことに成功した。

 Aピラーなどをなくしたことで、搭載した窓の重量は11.8kgと、従来のガラス窓とAピラーの組み合わせに比べ6.6kg(約36%減)も軽くなり、電費の向上も見込める。また、ピラーレスになったことで、オープンカー特有の開放的な視界がより楽しめるメリットも生み出す。

 PC樹脂はガラスに比べて半分ほどの重さで、車体の軽量化に寄与する素材として期待されてきた。しかし、ガラスに比べて耐摩耗性が低く、窓の開閉やワイパーなどにより表面が傷つきやすいことが大きな課題で、これまでのハードコート技術(ウエット法)だけでは、保安基準に対応する耐久性を満たすことができなかった。

 今回、トミーカイラZZに搭載した帝人の樹脂製窓は、透明性が高いPC樹脂に、さらに保護層を作る技術(プラズマCVD法で無機材料をコーティング)を加え、耐摩耗性を0.5~1.5%の耐摩耗性を実現した。これは強化ガラス(耐摩耗性0.5~1.0%)並みに傷つきにくい高い性能となっている。

帝人フロンティア 麻調の合繊素材を19春夏から販売

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2018年9月12日

 帝人フロンティアは11日、亜麻のようなナチュラルな表情感と清涼感を表現した、新しい麻(リネン)調ポリエステル素材「シャレールリュクス」を開発し、2019年春夏から快適ファッション素材として販売を開始すると発表した。

 近年、天然素材の需要が高まっているが、原料価格の高騰やイージーケア性、機能性に対するニーズが増していることなどから、天然素材調の合繊素材が関心を集めている。また、麻を中心とする1980年代のレトロ調素材がファッショントレンドとして注目され、機能性に優れた麻調素材の需要が高まっている。

 こうした中、同社は独自の太さ斑加工技術を駆使することで、亜麻糸が持つ特有の糸斑を再現したシャレールリュクスを開発した。

 同製品は、天然麻素材のようなシャリ感・ハリ・自然な外観と、天然麻素材にはないイージーケア性や機能加工付与性を兼ね備えた麻調ポリエステル素材。特徴として、自然な麻調外観や優れた機能性を持つ。

 今後の展開として、高い審美性が求められる快適ファッション素材として販売を開始し、アウターやジャケット、ボトムス、ブラウスなど幅広い用途に向けて積極的に提案していく。積極的に展開を図ることにより、今年度は年間1万m、来年度は同10万m、20年度には同25万mの販売を目指す。

DNP リサイクルしやすいフィルムパッケージ2種を開発

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2018年9月7日

 大日本印刷(DNP)は6日、食品や日用品などに使用されるフィルムパッケージ向けに、よりリサイクルしやすい単一素材(モノマテリアル)で構成したパッケージ2種を開発したと発表した。

 近年、海洋プラスチック汚染が大きくクローズアップされ、全世界でリサイクルの推進が求められている。これまでのフィルムパッケージは、特性の異なる複数の素材を組み合わせて各種機能を付与しているため、リサイクルがしにくいという問題があった。

 同社はモノマテリアルによるフィルムパッケージの開発に注力し、製品化に成功。これまで培ってきたプラスチック基材へのコンバーティング技術や製膜技術、蒸着技術などを生かして必要な性能を付与することで、フィルムパッケージとしての機能を損なうことなく、PE素材とPP素材のモノマテリアルパッケージを実現した。

 さらに、地球温暖化防止への取り組みとして、一部に植物由来原料を使用したフィルムを使用することで、石油由来の原材料の使用を削減するとともに、ライフサイクル全体のCO2排出量の削減にも寄与していく。

 昨今の環境に対する危機感から、コストがアップしても環境配慮の取り組みを推進する企業が増加しており、今後はさらに環境配慮パッケージへの要求が高まっていくことが予測される。同社は、製造するフィルムパッケージをリサイクルしやすいモノマテリアルパッケージなどに切り替えることで、2025年度で国内と海外市場を併せて年間500億円の売上を目指す。

 今後も、モノマテリアルパッケージの性能向上や、製品ラインアップの拡充を進めていくことに加え、フィルムパッケージのリサイクルを推進する技術の開発や、スキーム(枠組み・仕組み)の構築についても、リサイクル業者や食品・日用品メーカー、流通企業などと共同で推進していく考えだ。

AGC インドネシアでPVCの生産能力を増強

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2018年9月6日

 AGCは5日、インドネシアのグループ会社アサヒマス・ケミカル社(ASC社)での塩化ビニル樹脂(PVC)生産能力を20万t増強し、75万tに拡大すると発表した。操業開始は、2021年の第2四半期を予定しており、東南アジア地域でのPVC年間生産能力は約120万tとなる。

 同社が行う東南アジアのクロール・アルカリ事業は、インドネシア、タイ、ベトナムで展開。同地域では製造業やインフラ事業などが経済成長に伴い継続的に拡大しており、今後もクロール・アルカリ事業で手掛けているカセイソーダやPVCの需要は安定的に伸長することが見込まれている。

 この旺盛な需要に対応するため、ASC社では16年のカセイソーダやPVCなどの大規模増強に続き、今回のPVC生産能力増強を決定した。

 同社グループは経営方針「AGC plus」のもと、東南アジアでのクロール・アルカリ事業拡大に注力。今後もさらなる能力増強を実施し、東南アジア地域ナンバーワンのポジションを確固たるものにするとともに、同地域の経済発展に貢献していく考えだ。

三菱ケミカル 薄膜・高強度のPP系多孔質フィルムを開発

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2018年9月6日

 三菱ケミカルはこのほど、リチウムイオン電池(LiB)や分離膜などで省エネ・省資源に貢献できるポリプロピレン(PP)系多孔質フィルムを開発したと発表した。

 この研究成果は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の1つである「超薄膜化・強靭化『しなやかなタフポリマー』の実現」の一環として取り組んだもの。

 同プログラムでは、PP系の多孔質フィルムであるLiBのセパレーターに着目し、そのタフ化を目指した研究開発に取り組んできた。車載用への需要が高まっているLiBは、高容量化が重要課題であり、セパレーターの薄膜化が有効であると言われている。しかし、単に薄くすると機械的強度が下がり、本来のセパレーターの機能を担保できないという問題があった。

 同プログラムではセパレーターを構成する多孔質フィルムの薄膜化と高強度化の両立を目指し、各種製法による多孔質フィルムについて、放射光X線散乱法などを用いた高次構造解析と機械的特性試験との結果から、高強度化するための材料設計指針を構築し、それを具現化するため、材料と製膜プロセスの両面から検討を重ねた。

 その結果、従来の性能(電気絶縁性、リチウムイオン透過性)を維持しながら、厚みを従来の主流であった20~30μmから5μmまで薄膜化するとともに、単位厚みあたりの突き刺し強度を2~3倍まで高めることに成功。これにより、理論上、電池容量を20%程度向上させることが可能となった。

 ImPACTプログラム・マネージャーの伊藤耕三氏(東京大学教授)は「今回の研究は多孔質フィルムをタフ化する新たな材料設計指針の確立につながるとともに、LiBの高容量化を実現可能な画期的成果と言える。今後は同成果が他の多孔質フィルムにも適用され、幅広い用途に展開されることを期待している」と話している。

昭和電工 分析用カラム「Shodex」の新製品を開発

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2018年9月4日

 昭和電工は3日、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)用の分離・分析カラム「Shodex」で、水酸化物系溶液対応陰イオン分析用のイオンクロマトグラフィ用カラム「IC SI‐36 4D」を開発したと発表した。年内の発売を予定している。

 新製品で7種の標準陰イオン、亜硫酸イオン、炭酸イオンを分析したところ、高い分離能を示した。水酸化物溶離液は炭酸系溶離液と比較してバックグラウンド電気伝導度が低いため、高感度に分析が可能。二種類の溶媒の切り替え(グラジエント)を必要とせず、一種類の溶媒(アイソクラティック)で30分以内に分離させることができる。

 イオンクロマトグラフィは、主に水中の無機イオンの分析に用いられ、水道中のハロゲン系不純物や標準陰イオンの測定などに用いられる分析方法。同社はこれまで、炭酸系溶離液を用いたイオンクロマトグラフィ用カラムを提供していたが、今回新たに水酸化物溶離液に対応した陰イオン分析用カラムを開発した。従来の炭酸系溶離液を用いたカラムに比べ、高感度な分析が可能になる。

ゼオン化成 樹脂製住宅外装材で新シリーズ

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2018年9月4日

 ゼオン化成は3日、樹脂製住宅外装材「ゼオンサイディング」の新シリーズ「GRAYNE」を上市したと発表した。木目の自然な美しさを色合いから手触りまでを再現した。

 日本ゼオンのグループ企業である同社は、プラスチック加工技術をベースに樹脂コンパウンド、住宅外装材(サイディング材)、防音建材、真空成型品、消臭剤、高機能フイルムなどさまざまな産業資材を製造販売しており、このうちサイディング材は、塩化ビニール樹脂を材料とした「樹脂サイディング」を取り扱っている。

 樹脂サイディングは、特に北米で広く普及しているサイディング材で、一般に使われる窯業系と比較して、寒冷地の凍害や海岸地域の塩害に強く、耐久性に優れている。さらにシーリング不要の施工により、メンテナンス費用を削減できるという特長を持つため、自然環境の変化が激しい日本の家屋にも最適な外装材と言える。

 これまで、国内唯一の樹脂サイディング材メーカーとして展開してきたが、このたび、リアルな木目デザインを持つ新シリーズの販売を9月から開始した。

 同製品は、天然シダー材から型取りしたリアルな木目模様と、ハイブリッド構造による色の深みを持たせたパネル形状からなるデザイン。これまでの樹脂サイディングにない意匠性を実現し、アーリーアメリカンスタイルのニューイングランド様式だけでなく、その木目模様から純和風の杉板の家まで幅広い住宅に風雅な装いをもたらす。

 人気の濃色を含む新しい6色の魅力的なカラーバリエーションで、新築からリフォームやリノベーションに至る幅広い外装材のニーズに応える。また、時速120kmゴルフボールにも耐えうる耐衝撃性で優れた耐久性も実現している。