【モビリティ戦略特集】  帝人モビリティ部門部門長  帆高寿昌氏

2018年11月9日

 軽量化が最重要課題、それにプラスアルファの価値を提案

 ━自動車業界の現状をどう見ますか。

帆高部門長01 ガソリン・ディーゼルの時代は最終消費者を頂点とし、その下に自動車メーカーがあり、ティア1・ティア2・ティア3があるという構造になっていました。

 これがEVになり、基本的な構造は変わらないものの、電池やモーターなど、これまでになかったものが入ってきて、ティア0.5のような形ができた。ただ、ここでも自動車メーカーは最終消費者とのタッチポイントをしっかり持っているので、それほど危機感はありません。新興のEVメーカーも出てきていますが、自動車メーカーはまだイニシアチブを持っています。

 ところが、自動運転が入ってくるようになると、自動車メーカーと最終消費者の間にサービス企業が入ってきて、ある意味、コンシェルジュ的なサービスを始めるようになる。そうすると、自動車メーカーですらイニシアチブを取りづらくなったり、ティア1がいつの間にかティア2・ティア3になったりしてしまう可能性があります。

 帝人としても、その中心にいるプラットフォームに仲間入りできるようなビジネス構造にしなければならない、という危機感を持っています。

 ━ティア1になったわけですが、素材メーカーが川中・川下に進出することについて。

 当社が大きく舵を切ったのは、昨年の1月に北米最大の自動車向け複合材料メーカーのCSP社が、帝人グループに入ったためです。これにより、コンポジットのティア1としてのプラットフォームが構築できました。

 帝人は素材事業から始まりましたが、自動車に限らず、電子・電気なども含めて、商品価値が高い時代は、素材の価値も認めてもらえていました。しかし

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【モビリティ戦略特集】 東レ理事自動車材料戦略推進室長  石野裕喜夫氏

2018年11月9日

 4つの切り口で提案、炭素繊維は補強材用途が現実的

 ━自動車業界の現状をどう見ますか。

石野室長001 われわれの見方では、自動車に求めるものには地域性があり、電動化が最初に進むのは中国だろうと見ています。軽量化は欧州と日本が積極的で、米国で軽量化の話をしてもピンとこないようです。米国では大きなピックアップトラックが人気で、一時に比べれば良くなったとはいえ、相変わらず燃費は良くありません。

 それでは、米国で何に最も関心があるかと言えば、自動運転です。したがって、自動運転が先行して導入されるのは米国になるでしょう。都市と都市の空隙地帯を高速道路で走る際、「ここからここまでは自動運転可能」というような仕組みを作る上で、米国は極めて向いていると思います。

 速度の自動設定のメカニズムも、米国で最初に採用されています。一方、それを日本で使おうとしても、すぐに前の車に追い付いて役に立ちません。このため、日本では車間距離を維持するようなシステムになっています。

 ━自動車材料への取り組みについて。

 基本的には4つの切り口で提案しています。軽量化、電動化、安全性、快適性です。自動運転がどこまで進むか分かりませんが、ドライバーが運転から解放されると、室内の快適性に目が行くようになるだろうということで、快適性も挙げています。

 ただ、今言ったように、国によって事情が異なりますので、それぞれに合わせた形で対応しています。例えば、中国には自動車関連部材の総合的なショールームである「オートモーティブセンター中国」があり、欧州ではドイツのミュンヘン近郊に「オートモーティブセンター欧州」を立ち上げましたが、それぞれ置いているものが異なります。中国ではどちらかと言えば電動車向けの部品類を多く、欧州は軽量化を中心にバランス良く展示しています。

 当社は「素材には社会を変える力がある」と言っていますが、自動車材料に取り組むわれわれは

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【モビリティ戦略特集】 三井化学常務執行役員モビリティ事業本部長 佐藤幸一郎氏

2018年11月9日

 一歩先のソリューション提案、開発力を上げるモビリティ戦略

 ━EV化が進む自動車業界の現状をどう見ていますか。

佐藤常務01 佐藤 ハイブリッドを含めた電動化はどんどん進むだろうと見ています。ただ「Pure EV」は、普通の経済効果だけでは進むのに相当時間がかかるでしょう。電池の性能やインフラの問題もあるし、「Well-to-Wheel」の考え方から、全体としてEVが環境に良いとなってくるには、技術も社会も変わっていかなければいけない。

 2030年までの「Pure EV」普及率について様々な数字がありますが、おおむね10%程度です。そんな中で、例えば中国は国策的にEV化をやるという動きに出ている。そこには目先の環境問題もあるでしょうが、内燃機関がなくなることで圧倒的に技術的なキャッチアップがしやすいといった考えがあると思います。

 エンジンの開発・制御といった最大の技術ハードルがなくなることで、新規参入者にとっては、西欧あるいは日本をキャッチアップするときに、有利な舞台になっていく。その意味でもEV化は進んでいくだろうと思います。

 ━EV化が御社のビジネスに与える影響は。

 佐藤 現在、燃料タンクに使われる接着性ポリオレフィン「アドマー」、ギアオイルの添加剤「ルーカント」などがありますが、エンジンが小さくなっていき、最終的になくなってしまえば需要としては減っていく傾向だと思います。しかし、内燃機関が完全になくなるまでには時間がかかるでしょうから、まだまだ息は長いと思っています。

 一方、モーターに替わることでバッテリーは大きくなる。バッテリー材料を本格的にやっている他社に比べると、当社のビジネスは、まだこれからだと思っていますが、それでもLIBのセパレータに使う超高分子量ポリエチレン「ハイゼックスミリオン」、あるいは電気系統で求められる耐熱のプラスチックなどを開発しており、トータルではプラスになってくると思います。

 ━注力しているPPコンパウンドの今後の戦略について。

 佐藤 PPコンパウンドは

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【モビリティ戦略特集】 旭化成専務執行役員高機能ポリマー事業本部長 吉田浩氏

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2018年11月9日

高機能ポリマー事業本部企画管理部長 桑葉幸文氏              オートモーティブ事業推進室長 宇高道尊氏

 エレクトロニクスと独自技術を強みに、旭化成の本気を提案

 ━今の自動車業界の現状と、CASEの動きをどう見ますか。

吉田本部長 吉田 CASEに代表されるように自動車業界では、自動車の役割や機能が大きく変わろうとしています。ハードの面では、エンジン、ディーゼルからEVになっていくだろうし、所有からシェア、自動運転という非常に大きな流れになってきます。

 その中で旭化成が、マーケットにどうアプローチしていくか。強みの1つは、われわれが他の化学メーカーにないエレクトロニクスの事業領域を持っていることです。エレクトロニクス事業では、各種センサー製品に強みがあるので、この分野を生かし違った特色、独自のアプローチができると思っています。

 ご存じのように日本では、OEMがあって、ティア1、ティア2、それからわれわれ素材メーカーがあります。ところが欧州では、OEMを囲むようにして、エンジニアリング会社や部品メーカーがあります。今後、世界的な流れとして、ティア1、ティア2という階層別のアプローチから、たとえば素材メーカーが直接OEMに提案をする、というような仕事のやり方が必要になってくると思っています。

 そのため、この2年間ぐらいは、当社の製品や技術をOEMに直接アピールするために、プライベート展示会を頻繁に行っています。その場でディスカッションをし、そこから様々な商売のネタが出てきています。これは数年前とはかなり違った動きです。

 OEMも、こういった大きな流れを踏まえて、自動車社会および自動車産業がこの先どうなるかという仮説を持っている。従ってわれわれ素材メーカーに対してどう考えているのかという意見を求める機会が非常に多くなっています。ソリューションの提案を直接OEMに行うといった機会が、今後は増えていくと考えています。

 ━そこまで踏み込まないと、新しいものが出てこない。

 吉田 これまでは

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【モビリティ戦略特集】 経済産業省製造産業局素材産業課革新素材室長 沼舘建氏

2018年11月9日

革新的素材の開発を加速、素材から提案力強化が重要

 ━自動車産業の動向をどう見ていますか。 

沼舘室長01 沼舘 欧州では昨年、英国が内燃機関で走るガソリン車やディーゼル車の販売を2040年までに禁止する方針を打ち出した。また電気のみで走行可能な距離が50マイルに満たないハイブリッド車も販売禁止の対象に含めるといった案も検討しているとの情報も伝えられている。

 先日も、英議会のビジネス・エネルギー・産業戦略委員会では、温室効果ガス排出削減に向けて販売禁止時期を8年前倒し、EV導入の奨励策が必要といった提言もなされたようだ。こうした動きが自動車産業に影響を与えることから経済産業省としても注視している。

 一方、中国ではEV普及の動きが強まっており、2019年にはEVの生産や販売を義務付ける「NEV」規制が導入される予定だ。欧州や中国でのEV化の流れは加速していくことが予想され、その流れを逃すことなくウォッチしていく必要があるだろう。素材産業にとっても自動車産業の100年に1度の変革期をチャンスとして捉え、成長につなげていくことが求められる。

 すでに素材産業の各社では、様々な攻めの展開がはじまっていると承知しており、現場からの声としても聞いている。今後は「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」といった潮流のなかで、高機能に対するニーズを積極的に取り込みながら、新たな素材や材料の創出、また更なる広がりというものが進展していくのではないか。

 ━温室効果ガス(GHG)やCO2による地球温暖化といった環境問題も、自動車産業に影響を与えています。

 沼舘 経済産業省の自動車課では、自動車業界を取り巻く環境が大きく変化していく中で、わが国の自動車産業が世界のイノベーションをリードし、環境問題や渋滞問題などの解決に積極的に貢献していく戦略づくりを進めている。

 その一環として、今年4月に「自動車新時代戦略会議」を立ち上げた。7月には中間整理が発表され、その中ではとりわけ電動化について、世界に向けて長期的なゴールが掲げられた。

 2050年までに世界で供給する日本車について、世界最高水準の環境性能を実現するとして、1台当たりのGHG排出量八割程度の削減を目指すとして、乗用車の電動化率は100%に達すると想定されている。この方針から、自動車産業では環境性能を含めた電動化が加速化していくことが見込まれ、自動車メーカーでは経営戦略の見直しの動きが想定される。

 素材産業にとっては、

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三井化学・コクヨ 形状記憶素材の特性を「壺」で可視化

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2018年11月8日

 三井化学はこのほど、形状記憶シートの特性を「壺」で表現した作品を、広告・クリエイティブの専門誌「月刊ブレーン」12月号の誌上で発表した。

 同社は、クリエイターとのコラボレーションプロジェクト〝Material Meets Creative Team〟を進めており、これまでに無かった新しい視点で「素材の魅力」を分かりやすく伝える活動を行っている。

UNFRAGMENT
UNFRAGMENT

 第6弾となった今回は、三井化学東セロの新開発品である「形状記憶シート」と、クリエイターの佐々木拓氏(コクヨ・クリエイティブセンター)とのコラボにより、初めから割れている壺「UNFRAGMENT」を製作し発表した。

 同作品は、その形状記憶性に着目し、「ゆっくりと元に戻る」特性をプロダクトに落とし込んだ。壊れた陶器を修繕することで新たな価値を生む金継ぎの技術を参考に、手で広げると壺が開き、時間の経過とともに元の状態に戻っていく。割れた状態と金継ぎされた状態を行き来する作品で、これまでに無いプロダクトの時間軸を表現した。

 三井化学東セロの形状記憶シートは、三井化学が開発した特殊ポリマーを発泡・シート化した製品で、特にその触感は高い評価を得ている。常温∼50℃付近で柔軟性を増す特性があり、人に触れている部分は柔らかく、触れていない部分は若干硬いため、サポートされている感覚が生まれる素材。

 各種ヘルスケアや医療、介護、スポーツ、シート、クッションなどの利用者にフィットするような用途で、世界に1つだけの製品開発に貢献できる素材として注目されている。

クレハの4-9月期 PGA事業の一時的な費用増響き営業減益

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2018年11月8日

 クレハの2019年3月期第2四半期連結決算(国際会計基準:IFRS)は、増収となったものの、機能製品事業でシェールオイル・ガス掘削用途向けPGA(ポリグリコール酸)事業の一時的な費用増があったことから、営業減益となった。税引前四半期利益は金融収支の改善により増益だった。

小林社長
小林社長

 今年度は中期経営計画の最終年度となるが、7日に行った決算説明会で、小林豊社長は「ほとんどの既存事業で改善が図られ、数字的には達成できるだろう。しかし、

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国際臭素会議 横浜でアジア会議を開催、日本の研究者らが講演

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2018年11月8日

 「臭素科学・環境フォーラム(BSEF)アジア会議」が5日、横浜市の横浜グランドインターコンチネンタルホテルで開催され=写真、日本の臭素研究者、自動車・電気電子機器業界の専門家らが講演を行った。

臭素会議 BSEF(国際臭素会議)は、臭素と臭素系難燃剤の科学・環境面での理解を深めることを目的に、世界の4メーカーで構成。本部をブリュッセルに置き、米国・中国・日本・インド・ブラジルに支部がある。

 BSEFジャパンは本部との連携を通じて、行政当局・ユーザー、利害関係者への科学的情報の提供などを行っており、アルベマール日本、ICLジャパン、ランクセス・ソリューションズ・ジャパン、東ソーの4社がメンバーとなっている。

 フォーラムでは、最初にBSEFのカストゥリランガン・カンナ会長(ランクセス・グローバルプロダクトアドボカシー担当)があいさつを行い、世界的な規制の現状、規制の関係でポリマー系が延びていること、臭素系難燃剤がアジアで好調なことなどを紹介した。

 講演では、西澤技術研究所の西澤仁代表が「臭素系難燃剤‐実用に向けた高効率難燃剤の役割」をテーマに、臭素系難燃剤が

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旭化成 コンセプトカー「アクシー」がドイツのデザイン賞を受賞

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2018年11月8日

 旭化成は7日、EVメーカーであるGLM(京都市)と共同開発したコンセプトカー「AKXY(アクシー)」が、ドイツの「ドイツデザインアワード Special Mention Category 2019」を受賞したと発表した。授賞式は来年2月8日にフランクフルトで開催される予定。

走るコンセプトカー「アクシー」
走るコンセプトカー「アクシー」

 アクシーは昨年5月に発表した走るコンセプトカー。これまで国内外の様々な展示会や顧客とのプライベート展示会で活用し、自動車関連産業の関係者と未来の自動車と自動車がもたらすソリューションについてディスカッションを行ってきた。

 今回、「このコンセプトカーはすべての内装と外装の要素が調和し、先進的なデザインに落とし込まれている。その形状と機能は細部に至るまで印象的で、未来の自動車の姿を彷彿させる」との評価から、同賞を受賞することになった。

 アクシーの開発・運用責任者であるオートモーティブ事業推進室の宇高道尊室長は「アクシーは有機的なイメージをもつ曲線と、無機的なイメージを持つ直線を巧みに組み合わせ、当社が理想とする安全・環境・快適な自動車を表した未来的なデザインにしている。そのことが評価され、今回の受賞に至ったことは大変嬉しい」と述べている。

 同社は、アクシーを今後も国内外の展示会などを通じて最大限活用し、より多くの顧客とのコネクトを続け、自動車の安全性と快適性の向上、環境への貢献に応じた多様なキーアイテムを総合的に提案していく考えだ。

宇部興産 機械部門の米子会社で組立工場の拡張が完了

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2018年11月8日

 宇部興産は7日、宇部興産機械の米国子会社UBE Machinery(UMI)で、射出成形機の組立工場の拡張工事が完了し、10月25日にオープンセレモニーを開催したと発表した。

拡張工事が完了した組立工場02
拡張工事が完了した組立工場

 拡張により、大型射出成形機の供給能力が倍増する。工場拡張に併せ、型締力3000t以上の超大型の射出成形機を組み立てるための大型クレーン、重量物搬送用の構内台車、最新鋭の粉体塗装設備を追加で導入するなど、効率的でより高い品質に寄与する生産体制を実現した。

 射出成形機の組み立てだけでなく、制御装置や油圧部品など、設備の老朽化した機器を最新の機器に刷新するリビルド事業のさらなる取り込みも図る。

 宇部興産機械は、宇部興産グループの機械事業の中核会社。昨年1月の宇部興産機械とU-MHIプラテック(旧三菱重工プラスチックテクノロジー)との射出成形機部門の事業統合を機に、グローバルな市場ニーズに対応した商品ラインアップのもと、UMIは北米市場での拡販を図ってきた。

 今回の拡張工事は、米系ローカルの顧客を中心に需要が高い、省スペースタイプの大型サーボ油圧2プラテン機の旺盛なニーズに応えるもの。