【バイオプラ特集・インタビュー】日本バイオプラスチック協会

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2019年11月8日

事務局長 横尾真介氏

バイオマスと生分解性、特長を訴求し普及を図る

━バイオプラ協会の沿革についてお聞かせください。

 横尾 当協会は1989年に生分解性プラスチック研究会(BPS)として発足した。当時は脂肪族ポリエステル系を中心とした生分解性プラの研究開発が進んでおり、実用化に関心を持つ企業が集まったのが始まりだ。

横尾事務局長02
横尾事務局長

 2000年にはグリーンプラ識別表示制度(GPマーク)を開始した。そうした中、2005年に「愛・地球博」が開催され、テーマである循環型社会の気運が高まったことに加え、原油価格が100ドル近くに高騰したため、バイオマス原料とナフサとの価格差が縮小し、石油資源の削減に寄与する植物由来の再生可能プラへ一気に注目が集まった。

 当協会は、バイオマスプラを取り込み、2006年にバイオマスプラ識別表示制度(BPマーク)を開始したこともあり、2007年に名称を「日本バイオプラスチック協会」に改称した。しかし、その後、原油価格が急落したことや、技術的なハードルがあったことからバイオマスプラへの関心が徐々に薄れ、当協会の会員数も2006、7年をピークに2017年まで減り続けた。

 しかしここにきて、地球温暖化問題や海洋プラごみ問題への関心が高まったことで、昨年には会員減少に歯止めがかかり、今年になって退会した企業が戻ってくるなど増加傾向となっている。

━バイオプラの普及に向け、どのような活動をしていますか。

 横尾 当協会の活動では、主に2つの柱でバイオプラの普及拡大を推進している。1つは先ほどもお話しした認証事業だ。BP(バイオマスプラ)マークやGP(グリーンプラ)マークが付いている製品が、地球環境に貢献していると、消費者が見ただけで判別できる識別表示制度に注力している。

 認証制度を始めた頃は、エコブームの追い風もあり企業の登録数が増加した。しかし、販売につながらなければ3年後の更新を行わないケースも多くあり、認証制度の浸透は難しい状況にある。そういった意味において、この制度のメリットを、消費者だけでなく企業も享受できる環境にしていかなければならないだろう。

 もう1つの活動は

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【バイオプラ特集・インタビュー】三菱ケミカル

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2019年11月8日

サステイナブルポリマーズ事業部長 三浦健治氏 / 企画管理グループ マネジャー 小林哲也氏

デュラビオ、PBSとも需要増加、設備投資を検討

━海洋ゴミ問題からプラスチックに逆風が吹いています。

 三浦 プラスチックという言葉自体がかなり悪者のように、報道などでは扱われている。ただ、そこは冷静になって、何が環境に負荷が大きいかを検証する必要があるだろう。プラスチックごみによる海洋をはじめとした環境汚染の問題と、温暖化ガス排出問題はしっかり分けて考えていくべきだ。

三浦部長02
三浦サステイナブルポリマーズ事業部長

 当事業部ではバイオエンプラ「DURABIO(デュラビオ)」と生分解性樹脂「BioPBS(バイオPBS)」の2製品を扱っているが、両製品ともバイオマス由来であり温室効果ガスの問題に対応できる。また、「BioPBS」に関しては、生分解性があることからごみ流出問題による環境汚染にも対応していける製品だ。

 昨年、ウミガメの鼻にストローが刺さった動画が公開されたことで、海洋プラスチックごみに対する世界の関心が一気に高まった。こうした背景の下、環境問題を意識していかないと企業としての存続が危うくなるといった考えを顧客が持ち始めており、当社製品への引き合いが強くなっている状況だ。

━三菱ケミカルではサステナビリティを重視しています。

 三浦 2011年に当時の小林喜光前社長(現会長)が、地球環境を維持していくためにはサステナビリティは避けて通れない課題という認識から、「KAITEKI」経営を打ち出した。経営指標の1つの軸としてMOS(マネジメントオブサステナビリティ)を掲げ、その中において、バイオマス由来や生分解性などのバイオプラスチックを大きな柱の1つに位置づけている。

 こうした中、三菱化学の時代の2010年にサステイナブルリソース事業推進室を立ち上げ、2013年にサステイナブルリソース事業部(現サステイナブルポリマーズ事業部)に組織変更した。当社はCSRの一環としてだけではなく、事業部としてバイオプラスチックを推進するという強い意思を持ってきている。

━バイオエンプラ「デュラビオ」の開発経緯についてお聞かせください。

 三浦 環境に優しいバイオマス原料を使って、従来にはない新しい機能性のある商品開発を目指したのが最初のコンセプトだ。その中の1つとして、ガラス代替をテーマとし樹脂開発をスタートした。

 ただ開発する上で、1つの大きな課題だったのは、

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【バイオプラ特集・インタビュー】三井化学

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2019年11月8日

理事・ESG推進室長  右田健氏 / 研究開発本部 研究開発企画管理部長 伊藤潔氏

経営にESG要素を組み込むプラスチック戦略

━環境意識が高まる中、いち早くESG推進室を設置されました。

 右田 ESGやSDGsといった様々な動きがある中で、まずは企業としてサステナブルな成長や発展を目指していく必要がある。社会課題から事業を考え、企業の方向性を決めていくことがESG推進室新設の本来の目的だ。

右田室長
右田理事・ESG推進室長

 われわれ素材メーカーは、プロダクトアウトになりがちだが、そうではなく、長期的に何が課題で、そのためにどんな技術や事業が必要になるかをきちっと考えていかなければならない。今のままのポートフォリオが、20年、30年経てば通用しなくなる可能性もある。ESGを利益も追求できる形で捉え、経営そのものとして進めていく考えだ。

 ただ、その後、海洋プラスチックごみなどの廃プラ問題が俄かにクローズアップされ、ESG推進室の役割が大きくなってきたというのが現状だ。

━その中で、プラごみ問題をどう捉えていますか。

 右田 グローバルな課題として重要な気候変動問題とプラスチックごみ問題については、表裏一体のものと捉えている。これらの課題への対応を通じて循環経済の実現に貢献していく考えだ。

 例えば、リサイクルは気候変動問題とプラごみ問題双方にとって重要な対策である。化学メーカーとして追求していくため、当社はリサイクル戦略とバイオマス戦略の両面からのアプローチを、プラスチック戦略の基本方針と位置づけた。CO2削減につながるバイオマスプラを拡充することで気候変動に対応し、資源循環へも貢献していく。

 一方では、回収しやすい材料研究、モノマテリアル化の提案、リサイクル技術開発といった戦略で循環経済への貢献を図る。つまり、今までは原料・素材生産から消費までの、一方通行の動脈系でしかやってこなかったが、それに加え、静脈系である回収・分別・リサイクルというところにも、新たなビジネス機会を見つけていくということだ。バリューチェーン全体を視野に入れた循環経済モデルの構築を推進していく。

━製品ポートフォリオも変わってくる。

 右田 足元の製品構成は主に

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【バイオプラ特集・インタビュー】東洋スチレン

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2019年11月8日

常務執行役員技術本部長 和田福明氏 / 管理本部長  藤沢一秋氏

バイオポリスチレンで環境貢献、次世代製品にも注力

━プラスチックの資源化が課題となっています。

 和田 プラスチックは「割れなくて強い」という特長を生かして日常生活の中で役立ってきた。廃プラが海洋に流出することで、逆にその特長が海洋プラごみ問題を引き起こしてしまっている状況だ。

トーヨーエネライツBMの用途例
バイオポリスチレンの用途例

 化学業界では「海洋プラスチック問題対応協議会(JaIME)」が日化協を中心に設立されるなど取り組みが始まっており、その動向を注視している。これまで、プラスチックはワンウェイ(使い捨て)を前提とした事業フローとなっていた。

 しかし海洋プラごみ問題を契機に、プラスチックを循環可能なリサイクル資源にしていく気運が世界中で高まってきている。企業だけでなく一般消費者も、プラスチックを循環型社会の中で考えていく必要があるだろう。

━ポリスチレン(PS)はリサイクルが進んでいます。

 藤沢 PSの再生市場はモノがないくらい引き合いが強くなっており、顧客からの要望があっても、回収されたPSを確保することが難しい状況だ。回収しきれないPSをどうやってマテリアルリサイクル(MR)に組み込んでいくかが大きな課題となっている。

 和田 再生品は品質面で課題があるが、当社はバージン品と混ぜるなどの加工を行い、顧客はそれを用いた製品設計を進めるなど、用途開発が加速しているところだ。その一つの例としてコピー機のトナーカートリッジがあるが、回収品に不足分を加えることで再生品として成立している。

 同様に、テレビのバックカバーなど家電リサイクル法でシステムの整備が進んでいる分野もある。ただ、それ以外の分野で、樹脂メーカーとしてどれだけ責任を持って取り組めるかが長期的なテーマとなってくるだろう。

━そうした中、技術本部内に環境対策推進室を立ち上げました。

 藤沢 企業においても環境問題への対応が求められてきている。これまで、環境省や経済産業省など行政の動きを注視するなど情報収集を行ってきたが、10月1日に技術本部内に環境対策推進室を立ち上げた。

 PSケミカルリサイクル(CR)技術やバイオ製品の

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東洋紡 海水淡水化へ新技術、サウジで共同実証実験を開始

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2019年11月7日

 東洋紡は、海水淡水化プラントから排出される濃縮海水を効率的に利用する新しい膜技術の実用化に向け、先月9日にサウジアラビアの海水淡水化公団(SWCC)と、東洋紡の連結子会社であるAJMCとともに、共同実証実験の実施に関する覚書を締結した。

調印式で(左から)AJMC のサイードCEO、SWCC のアルハズミ総裁、東洋紡の楢原社長
調印式で(左から)AJMC のサイードCEO、SWCC のアルハズミ総裁、東洋紡の楢原社長

 実用化を目指すのは、「ブラインコンセントレーション(塩水濃縮)膜」=BC膜=と呼ばれる、高濃度の海水を処理するための新しい膜技術だ。東洋紡が長年培った中空糸型逆浸透(RO)膜の技術を応用したもの。BC膜を活用することで、海水淡水化プラントで真水を製造する過程で排出される濃縮海水を、希釈された海水とさらに高濃度な濃縮海水とに分離できる。

 希釈された海水は、海水淡水化プラントで再利用し、造水量を増加させ、高濃度の濃縮海水からは、蒸発・結晶化工程を経て、効率的な有価物の回収が期待されている。BC膜技術の実用化により、濃縮海水を余すことなく再利用する無排水化の実現に向けた取り組みを支援していく考えだ。

 雨水や地下水に乏しい中東地域では、海水から飲料水を作り出す海水淡水化プラントが多く稼働しており、中でもサウジアラビアでは、厳しい気候や人口増加、経済成長を背景に旺盛なプラント需要がある。

 東洋紡は、1980年代から海水淡水化プラント用として中空糸型RO膜を長年にわたり供給してきた。現在、中空糸型RO膜が作り出す真水は1日あたり約160万t、640万人分の使用量に相当する。

 今回の覚書締結を受け、3者はSWCCのアル・ジュバイル海水淡水化プラントに設置される実証実験装置の運転を開始する予定。BC膜の基本特性を把握するとともに、運転ノウハウを確立し、早期の実用化を目指す。

インドPVC輸入 6月は前年比8%増と高水準

2019年11月7日

上期では112万2000t、台湾がシェアトップに

 貿易統計によると、インドの6月の塩ビ樹脂(PVC)輸入は前年同月比8.3%増の18万1000tとなった。前月より減少したものの高水準を維持している。例年、6月はモンスーン期に当たり需要が減少するが、今年は雨量が少なく農業用パイプ向けなどに旺盛な需要が続いている状況だ。

 上期(1-6月期)で見ても、第1四半期(1-3月期)56万1000t、第2四半期(4-6月期)

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ランクセス 日本法人の社長交代、張谷氏が次期社長に

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2019年11月6日

 ドイツのランクセスはこのほど、来年1月1日付で、ランクセス日本法人とランクセス・ソリューションズ・ジャパンの次期社長に、タイヤ&スペシャリティーラバーズ事業部の張谷廷河(はりがい・たいが)日本/韓国統括責任者が就任すると発表した。

張谷次期社長
張谷次期社長

 張谷次期社長はアドバンスト工業化学品(AII)ビジネスユニット日本統括責任者を兼任する。ランクセスとランクセス・ソリューションズ・ジャパンの辻英男社長は、12月31日付で退任する。

 張谷次期社長は1981年韓国ソウル生まれの38歳。北京大学・早稲田大学大学院を卒業・修了後、2009年に三井化学に入社。ヘルスケア事業部ビジョンケアグループでの営業などを経て、2013年にランクセスに入社した。

 同社ではブチルゴム事業部での営業、タイヤ&スペシャリティーラバーズ事業部でのグローバルキーアカウントなどを担当。化学業界での約10年間の経験とともに、過去5年間は海外の様々な営業とマーケティングプロジェクトに従事し、マネージメント経験を積んできた。また、ドイツや韓国、米国、中国などの在住経験があり、化学業界での管理会計担当としてのキャリアも持つ。

 ランクセスは今後、張谷次期社長の財務・営業の知識と豊富な海外経験を生かし、日本でのビジネスの強化を図り、アジア・グローバルネットワークとの連携強化を図っていく。

アジア石化市況 エチレンは4週続落の700ドル

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2019年11月5日

ベンゼンも下落基調、キシレンは3週ぶりに反発

 アジア地域の10月第2週の石化市況では、エチレンは下値、上値とも50ドル/t安と大幅に下落し、700~750ドル/tでの取引となった。これで4週続落となったが、その間で170ドル/tも下落したことになる。

 その要因として、アジア地域で大型設備が立ち上がり供給過剰による先安観が強まっていることや、国慶節休暇明けの中国需要が盛り上がらず在庫消化が遅れていることが挙げられる。スプレッドも、

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NEDO ドローン運航管理システム相互接続試験を報告

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2019年11月1日

 NEDOは30日、都内で記者会見を開催し、10月23~24日に実施した同一空域で複数事業者のドローンが安全に飛行するための運航管理システムとの相互接続試験の結果を報告した。

NEDOの宮本プロジェクトマネージャー
NEDOの宮本プロジェクトマネージャー

 今回の試験にはNEDOプロジェクト参画の17事業者に加え、一般のドローン事業者12社が参加。福島県、南相馬市、福島イノベーション・コースト構想推進機構の協力のもと、「福島ロボットテストフィールド」(波江町)で飛行試験を実施し、運航管理システムの実用性や相互接続に関するセキュリティー対策の有効性を実証した。

 NEDOロボット・AI部の宮本和彦プロジェクトマネージャーは、「21種類もの多岐にわたる用途のドローンが、システムに相互接続した。試験では最大37機が

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