【石油化学事業の展望】石油化学事業の収益安定が課題

2021年6月4日

海外市場の競争激化、脱炭素化への対応もカギに

 わが国化学産業の根幹をなす石油化学事業は、大きな転換点を迎えている。コロナ禍よって落ち込んだ需要は回復基調にあるものの、今年はアジア地域で大型コンプレックスの稼働が予定されるなど、需給バランスの悪化が懸念されている。各社はこれまで市況変動への体制を強化するため、設備の構造改革や製品の高付加価値化を進めてきた。しかし、コスト競争力の高い海外メーカーとの競争で生き残るためには、もう一段の構造改革やバリューチェーンの強化など、早急に次の一手を打つ必要があるだろう。一方、脱炭素化の動きも加速している。

 昨年、政府はカーボンニュートラルを宣言し、今年4月には2030年のGHG削減目標も引き上げた。CO2を排出する石化事業にとっては野心的な目標となっており、これにどう貢献していくかが問われている。原燃料のグリーン化やCO2利用、また水素やアンモニアの活用といったイノベーションが求められているが、サステナブルな事業にするためには収益性との両立が必要不可欠だ。

 また、サーキュラーエコノミーに向けた廃棄プラスチックのリサイクルも重要なテーマだが、技術開発や設備投資などの面から一社単独でソリューションを提供することが難しい。政府の支援の下、サプライチェーン全体でシステムを構築していく必要があるだろう。

 今回の「石化事業の展望特集」では、各社の石化担当役員の方々に、将来の石化事業やコンビナートのあるべき姿、また事業戦略や環境対策などについて聞いた。

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◇インタビュー◇

旭化成常務執行役員 小野 善広氏
▽構造改革で基盤強化、基盤技術で社会のGHG削減に貢献

出光興産常務執行役員 本間 潔氏
▽環境変化に対応、収益安定化に向けバリューチェーンを強化

東ソー取締役常務執行役員 安達 徹氏
▽中京地区センターの責任、差別化によるポリマー事業の拡大

三井化学専務執行役員 芳野 正氏
▽ニッチ分野に注力しダウンフローを強化・拡大、ボラ低減へ

三菱ケミカル常務執行役員 半田 繁氏
▽社会変化は素材のニーズを大きく変える、問われる新たな視点

【石油化学事業の展望】旭化成常務執行役員 小野 善広氏

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2021年6月4日

構造改革で基盤強化、基盤技術で社会のGHG削減に貢献

足元の事業環境と2021年の見通しについて。

  昨年の石化製品の需要は4-6月が底となり、一部の事業では7-9月にも響いた。しかし10月以降は持ち直し、足元では自動車を中心に回復基調を強めている。IMFの発表では、世界のGDPの成長率は昨年がマイナス3.3%だったが、今年は6%、来年は4.4%の成長を見込むなど、世界経済は、コロナ禍当初には想像できなかったスピードと力強さで立ち直りつつある。中でも、GDPが昨年のコロナ禍でも2.3%、そして今年の見通しが8.4%と勢いのある中国が、牽引役となっていくだろう。

 当社の石化事業は

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【石油化学事業の展望】三菱ケミカル常務執行役員 半田 繁氏

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2021年6月4日

社会変化は素材のニーズを大きく変える、問われる新たな視点    

石化の足元の事業環境と今年度の見通しについて。

  2019年の半ばごろから、徐々に景気後退の傾向が出てきており、昨年初頭にはコロナの影響で、一気に世界中が大打撃を受けた。加えて、原油急落に連動し国産ナフサが4万5000円/klから2万5000円/kl程度まで下落したことから、利益面では在庫評価損が大きく響いた。足元では、コロナ禍にあっても昨年の後半ごろから数量的には世界経済が回復しつつある。

 今期の石化の見通しで言えば、誘導品についてはワールドワイドにフォーミュラでの商売が定着してきているため、状況によってはスプレッド変動による若干の上下はあるかも知れないが、

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【石油化学事業の展望】三井化学専務執行役員 芳野 正氏

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2021年6月4日

ニッチ分野に注力しダウンフローを強化・拡大、ボラ低減へ  

石化事業の足元と2021年の見通しについて。

  2020年度を振り返ってみると、上期(4-9月期)はナフサ価格の急落に伴う在庫評価損や川下製品の需要減少など、コロナ禍の影響を大きく受けた。オレフィンやポリプロピレン(PP)の販売が落ち込む中、特にPPは自動車関連用途の需要鈍化が響き、ナフサクラッカーの稼働率も低下した。しかし、下期(10-3月期)には自動車産業をはじめとした世界経済の回復とともに原燃料価格が上昇に転じ、製品市況が上向いてきたことでスプレッドが拡大し、クラッカーも高稼働を回復した。

 当社の場合、オレフィン、ポリオレフィンなどの石化部門とアセトンやフェノールといった基礎化学品部門、ウレタン部門を合わせて基盤素材セグメントとして括っている。2020年度の基盤素材は、期初予想は赤字予算でスタートしたものの、最終的には300億円程度の改善があり、コア営業利益196億円と黒字で着地することができた。今年度については、

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【石油化学事業の展望】東ソー取締役常務執行役員 安達 徹氏

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2021年6月4日

中京地区センターの責任、差別化によるポリマー事業の拡大

足元の事業環境と2021年の見通しについて。

  昨年度の事業環境を見ると、オレフィン事業は、コロナ影響で前半は内需が低調だったが、後半は回復基調の内需と経済が好調な中国への輸出が牽引し、国内プラントは高稼働となった。また、各社の設備トラブルや北米の寒波の影響により供給が制約されたため、後半の需給は比較的タイトで推移し、製品市況も高かった。

 それに対し今年度は、海外で大型コンプレックスの稼働が予定されており、徐々に需給は軟化してくると見ている。ただ将来的には、新興国の人口が増加してくることに加え、アジア諸国の中間所得者層の拡大が続くことから、基礎化学品の需要は堅調な伸びを示すだろう。

 一方、ポリマー事業は、

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【石油化学事業の展望特集】出光興産常務執行役員 本間 潔氏

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2021年6月4日

環境変化に対応、収益安定化に向けバリューチェーンを強化 

足元の石化の事業環境と、今年の見通しについて。

 2020年は、新型コロナにより需要が落ち込む中、2019年末より中国・韓国では製油所・クラッカーの新増設があり、順調に稼働したことから供給過剰となった。その結果、需給バランスが大きく崩れ、上期には市況が大きく下落し当社の業績も悪化した。しかし昨年度後半から、中国経済が立ち直り、各国の経済活動も活発化し始めた。自動車生産が本格化してきたことに加え、生活必需品の需要も底堅く推移したことから、石化製品の需要も回復傾向となっている。

 しかし、製品によっては

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