足元は需給タイト、高機能・高付加価値品に注力
ポリカーボネート(PC)は、ビスフェノールA(BPA)とホスゲンまたはジフェニルカーボネートを重合して作られるエンジニアリングプラスチック。1955年にバイエルとGEが各々単独で特許出願し、1958年にバイエルが商業生産を開始した。日本での商業生産は、1960年に帝人化成(現帝人)により始まっている。
現在、グローバルではコベストロ(旧バイエル)とSABIC(旧GE)が2大メーカーの地位を占め、
2021年9月3日
2021年8月10日
GHG排出削減に注力、循環型社会構築もテーマ
わが国化学産業は、世界的にグリーン化の流れが加速してきたことで、原燃料の見直しや事業ポートフォリオ改革を迫られている。政府は昨年宣言した2050年カーボンニュートラルの実現に向け、2030年の計画について、GHG排出削減目標を46%(2013年比)に引き上げ、エネルギー基本計画では再エネ比率を36~38%(2019年実績18%)に高めた。エネルギー多消費型である化学産業にとっては、いずれもチャレンジングな目標となっており、各社の自助努力に加え、イノベーションが必要不可欠となる。
さらに、廃プラの利用など循環型社会構築への貢献も大きなテーマだ。ケミカルリサイクル技術を導入する動きが活発化しているが、社会実装のためには、業界の垣根を超えた連携に加え、行政のサポートがより重要になってくるだろう。今回の夏季特集では、環境対応に取り組みながら、いかに企業成長を図っていくのか、業界を代表する首脳の方々に聞いた。
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◇インタビュー◇
信越化学工業代表取締役会長 金川千尋氏
▽変化を成長の機会に、製品と技術で社会の課題解決に貢献
三菱ケミカル代表取締役社長 和賀昌之氏
▽ CN実現は官民の議論と消費行動がカギ、あらゆる可能性探る
旭化成代表取締役社長 小堀秀毅氏
▽グリーン・デジタル・パーソンを高め、社会貢献で事業成長
三井化学代表取締役社長 橋本 修氏
▽事業ポートフォリオ変革し、社会課題視点のビジネスモデルへ
昭和電工代表取締役社長 森川宏平氏
▽各事業が成長軌道に回帰、個性派企業に向け基盤整備に注力
東ソー代表取締役社長 山本寿宣氏
▽新中計も基本方針を継続、CNへのコミットは現時点で困難
JSR代表取締役社長兼COO 川橋信夫氏
▽成長事業であるDSとLSに注力、企業価値の向上に邁進
プライムポリマー代表取締役社長 藤本健介氏
▽PEメタロセン化、PPは新設備で高付加価値と環境貢献図る
PSジャパン代表取締役社長 室園康博氏
▽新中計は環境対応と能力増強がテーマ、新規難燃にも注力
2021年8月10日
変化を成長の機会に、製品と技術で社会の課題解決に貢献
━2020年度の総括と、経常利益4000億円を達成した要因をお聞かせください。
当社は昨年の1-3月期から四半期ごとに利益を連続して伸ばすことができました。これを牽引しているのがシンテックです。半導体シリコンも引き続き大きな収益を上げました。コロナ禍の中にあっても、このような実績を上げることができました。国内外の当社グループの皆さんがウイルスの感染防止に努め、業務に邁進してくれたことを誇りに思い、皆さんの取り組みに感謝しています。
━コロナ禍や米中関係などの地政学リスクが事業環境に与えるインパクトと今後の見通しは。
コロナ禍がいつ収束するかはわかりません。各国でワクチンの接種が進むなど、人類の英知が必ずや新型コロナウイルス感染症を克服するものと確信しています。一方、
2021年8月10日
2021年8月10日
グリーン・デジタル・パーソンを高め、社会貢献で事業成長
━2020年はどのような年でしたか。
昨年はコロナパンデミックが発生し、歴史上に残る大転換の年となった。その中において、脱炭素・循環型社会と健康で快適な長寿社会が、世界共通の目指すべき姿としてより明確になったと言える。
歴史を振り返ると、明治維新で欧州のような法整備を目指した新たな国づくり、米国を追いかけて果たした第2次大戦後の復興など、日本人は目指すものがあると力を発揮する傾向にある。我々のような素材型産業にとっても脱炭素・循環型社会と長寿社会というターゲットがクリアになり、どちらの社会に対しても貢献できることから、ビジネスのチャンスが広がったと捉えている。
ただ、今までの延長線上では対応できないほど市場ニーズが高度化しており、
2021年8月10日
事業ポートフォリオ変革し、社会課題視点のビジネスモデルへ
━6月に長期経営計画「VISION2030」を発表されました。
2025年をターゲットにした長期計画を2016年に発表してちょうど5年が経った。その中間点に差し掛かったこともあり、これまでの取り組みの評価を行った。また5年のうちに事業環境も大きく変化しており、その評価と環境変化を踏まえてもう一度長計を見直すことにした。策定にあたっては、経営層に加え、10年後の会社を担う30代から40代でチームを組んでもらい、侃々諤々と様々な議論を進めてきた。
━その中では、事業ポートフォリオの変革が1つの核です。
ポートフォリオについてはこれまで、モビリティ、ヘルスケア、フード&パッケージング(F&P)の成長3領域を中心にドライブをかけて会社を成長させていく、というのが基本的な考え方になっていた。ところがつぶさに見ると、
2021年8月10日
各事業が成長軌道に回帰、個性派企業に向け基盤整備に注力
━コロナ禍が事業に与える影響について。
社会生活や経済などあらゆる面でコロナ禍の影響を大きく受けた2020年に対し、2021年は日常生活における感染防止対策の浸透、企業でのテレワークや学校などでのリモート授業の普及など、いわゆる「新常態(ニューノーマル)」が定着し、ワクチン接種が先行している国を中心に、世界経済は回復に向かいつつある。
当社も昨年以降、事業所内の感染防止策の徹底やリモートワークを積極的に推進しているが、海外の当社グループの一部事業所やお客様の工場などでは、政府による都市のロックダウンにより操業停止となるなど生産に影響が出た。また、世界規模で経済が停滞したことにより販売数量が大幅に減少したため、昨年度の収益は大きな影響を受けた。しかし、年後半からは回復が見えはじめ、
2021年8月10日
2021年8月10日
成長事業であるDSとLSに注力、企業価値の向上に邁進
━足元の状況について。
昨年はコロナ禍においても、デジタル化の進展により半導体を主とする電子材料は好調だった。今年度に入ってからも、さらにデジタルソリューション(DS)事業の市場は向上しており、昨年を上回ることが予想されている。当社もこの好況をしっかり捉え、シェア拡大に注力していく。またライフサイエンス(LS)事業についても、当社のバイオ医薬品のCDMO(開発・製造受託)のパイプラインは拡大しており、今後も堅調に伸びていくと見ている。石油化学系事業についても、昨年後半から回復基調が継続している。
当社は、以前から2025~2030年の間にドラスティックな環境変化が起こると想定し、様々な準備を進めてきた。しかし、コロナ禍によってそれが前倒しで具現化しており、まさに何が起こってもおかしくない状況に突入したと言える。
━3月発表の経営方針の内容について。
経営方針の策定にあたり、強い体質で将来にわたって生き残って成長を続けるために、サステナビリティ(持続可能性)とレジリエンス(強靭性)を判断基準とし、全ての事業について見直しを図った。その結果、
2021年8月10日
PEメタロセン化、PPは新設備で高付加価値と環境貢献図る
━現在の事業環境と今後の見通しについて。
ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)の動向を把握する際は、国産レジンに輸入レジンと輸入製品を加えたものを内需として、その12カ月の移動平均を見ているが、高密度PE(HD)は、2019年9月あたりからレジ袋有料化の影響で徐々に落ち始め、今年に入ってからはほぼ横バイで推移している。
直近で言えば、5月は対前年比で93%、コロナ禍前の2019年との比較では90%程度となっている。直鎖状低密度PE(LL)と低密度PE(LD)を合わせた内需は、一昨年9月あたりから下降トレンドにあったものの、足元では回復傾向にある。5月は対前年比で96%、対19年比で91%だ。
一方PPを見ると、昨年4月から6月を底に需要が盛り返しており、5月は対前年比で98%、対19年比93%で推移している。こうした傾向からPEとPPとも、今年の内需は対前年比で100%超、対19年比では95~100%近くまで回復してくると見ている。
━PP回復傾向の要因とは。
自動車生産の回復は