新中計は環境対応と能力増強がテーマ、新規難燃にも注力
━PSの業況はいかがですか。
昨年は、春先に新型コロナウイルスの感染が拡大した影響を受け、4-6月期の内需は前年同期比で20%も落ち込んだ。これが最後まで響いたことで、2020年(暦年)の国内出荷は前年から3万6000tも減少する結果となった。しかし、昨年後半から巣ごもり需要が定着したこともあり、足元ではコロナ禍以前にまで需要が回復している。
PS需要の約6割を占める食品包材用途では、好調なスーパー向けに加え、市場が拡大しているテイクアウトや宅配向け容器の引き合いが強い。PSの嵌合性(かんごうせい)や剛性が評価されている。さらに、自宅で快適に過ごすために、ウイルス対策として空気清浄機やエアコン、また冷蔵庫やテレビといった生活家電が売れ始め、電気・工業用途も好調に推移している。当社の工場の稼働率も、HIPS系はフル稼働となり、GPPSも高稼働が継続している状況だ。
2021年の見通しについては、2019年並み(64万3000t)に回復することを見込んでいる。上半期(1-6月期)の国内出荷も33万1000tとなっており、仮に夏場に落ち込んだとしても十分達成できるだろう。ただ、
昨年の石化製品の需要は4-6月が底となり、一部の事業では7-9月にも響いた。しかし10月以降は持ち直し、足元では自動車を中心に回復基調を強めている。IMFの発表では、世界のGDPの成長率は昨年がマイナス3.3%だったが、今年は6%、来年は4.4%の成長を見込むなど、世界経済は、コロナ禍当初には想像できなかったスピードと力強さで立ち直りつつある。中でも、GDPが昨年のコロナ禍でも2.3%、そして今年の見通しが8.4%と勢いのある中国が、牽引役となっていくだろう。
2019年の半ばごろから、徐々に景気後退の傾向が出てきており、昨年初頭にはコロナの影響で、一気に世界中が大打撃を受けた。加えて、原油急落に連動し国産ナフサが4万5000円/klから2万5000円/kl程度まで下落したことから、利益面では在庫評価損が大きく響いた。足元では、コロナ禍にあっても昨年の後半ごろから数量的には世界経済が回復しつつある。
2020年度を振り返ってみると、上期(4-9月期)はナフサ価格の急落に伴う在庫評価損や川下製品の需要減少など、コロナ禍の影響を大きく受けた。オレフィンやポリプロピレン(PP)の販売が落ち込む中、特にPPは自動車関連用途の需要鈍化が響き、ナフサクラッカーの稼働率も低下した。しかし、下期(10-3月期)には自動車産業をはじめとした世界経済の回復とともに原燃料価格が上昇に転じ、製品市況が上向いてきたことでスプレッドが拡大し、クラッカーも高稼働を回復した。
2020年は、新型コロナにより需要が落ち込む中、2019年末より中国・韓国では製油所・クラッカーの新増設があり、順調に稼働したことから供給過剰となった。その結果、需給バランスが大きく崩れ、上期には市況が大きく下落し当社の業績も悪化した。しかし昨年度後半から、中国経済が立ち直り、各国の経済活動も活発化し始めた。自動車生産が本格化してきたことに加え、生活必需品の需要も底堅く推移したことから、石化製品の需要も回復傾向となっている。