信州大学先鋭材料研究所の髙坂泰弘(こうさか・やすひろ)准教授らはこのほど、頭痛薬の主成分であるアスピリン(アセチルサリチル酸)を原料に、ケミカルリサイクル(CR)が容易なプラスチックを合成することに成功した。

今回、2019年に報告した技術を発展させ、
2023年1月16日
2022年12月2日
2022年6月23日
2022年6月1日
2022年3月1日
2021年9月28日
マイクロ波化学は27日、マイクロ波プロセスを活用した汎用プラスチック分解技術の開発を目的とするケミカルリサイクル(CR)の小型実証設備を大阪事業所内に完成させたと発表した。
同社はマイクロ波によるプラ分解技術の開発を独自で推進。「PlaWave」と名付けられた分解技術は、①様々なプラスチックに適用でき熱分解にも解重合にも対応可能、②ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)ではオイルとガスの作り分けが可能、③マイクロ波の直接・選択加熱により従来技術と比較し省エネや設備コンパクト化によるコスト低減が可能、といった特長がある。マイクロ波は、カーボンニュートラル達成のために不可欠である電化技術。再生可能エネルギーなどの脱炭素電源を利用することでグリーンなプラ循環を可能とする。
昨年12月には、同社の研究開発テーマ「マイクロ波プロセスを応用したプラスチックの新規CR法の開発」が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の中小・ベンチャー企業対象「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」に採択され、今回の小型実証設備の開発に至った。
この小型実証設備は1時間当たり5kg程度の処理能力があり、ポリスチレンをはじめとした様々なプラで実証を重ねていく予定。2022年秋には年産数百t規模の大型実証プラントを建設し、2025年頃までに同1万t規模までスケールアップする計画で、廃プラを油化する技術開発を進めるとともに、これまで難しいとされてきたPEやPPのガス化実証を行う。
同社は今後、「PlaWave」を国内外の企業に導入することで、サーキュラーエコノミーを推進していく。
2021年5月25日
三菱ケミカルと連結子会社三菱ケミカルメタクリレーツは24日、PMMA(アクリル樹脂)のケミカルリサイクル(CR)の事業化に向け、今年6月に日本国内で実証設備を建設し、事業化に向けた実証試験を進めると発表した。
アクリル樹脂は優れた透明性・耐光性をもつプラスチック製品で、自動車のランプカバー、看板、水族館の水槽、塗料、建材などに幅広く用いられており、その世界需要は300万tを越える。また昨今では、飛沫感染防止用のアクリル樹脂板の需要が世界各地で増加している。
両社は、かねてからアクリル樹脂のリサイクルに向けた検討を推進。環境に対する意識が世界でも先行し、よりスピード感が要求される欧州においては、現行のリサイクル技術を導入したアクリル樹脂リサイクル設備建設の検討を進めており、近いうちに決定する見通し。
一方、日本国内では、アクリル樹脂のリサイクル技術検討のパートナーであるマイクロ波化学と協力。同社大阪事業所内で新たに建設を進めていた実証設備が6月に完成する。欧州と日本国内でその地域特性に合わせたそれぞれのアプローチで、2024年の稼働を視野に、アクリル樹脂のリサイクルプラントの建設に向けた検討を本格化する考えだ。
廃アクリル樹脂は、製造工場から出る廃材に限らず、将来的には広く市場から回収することを視野に入れる。廃車からのテールランプなどのアクリル樹脂の回収、そのCRや再利用について、本田技研工業とともにスキームの検討を進めており、今回の実証設備を用いたリサイクルシステムの実証試験についても共同で実施していく。
三菱ケミカルのアクリル樹脂リサイクル技術により製造されたMMA(メチルメタクリレート)とそれを原料として製造されたアクリル樹脂は、透明性をはじめ通常品と同水準の性能を保つとともに、製造工程でのCO2の排出量が従来よりも70%以上削減できると見込んでおり、環境負荷低減に大いに貢献することが可能である。
同社はMMAおよびアクリル樹脂における世界ナンバーワンシェアのメーカーとして、同事業のサーキュラー・エコノミー実現に向けた取り組みを積極的にリードしていく。
2021年4月22日
帝人、伊藤忠商事、日揮ホールディングスは21日、廃棄されるポリエステル繊維製品からポリエステルをケミカルリサイクル(CR)する技術のライセンス事業に向けた共同協議書を締結したと発表した。
昨今、温室効果ガス(GHG)による地球温暖化や、廃棄プラスチック、遺棄漁具などによる海洋汚染といった環境破壊が深刻化し、世界中で対策が急がれている。日本でも2050年までにCO2をはじめとするGHG排出量をゼロにする目標が掲げられるなど、持続可能な社会の実現に向けて様々な取り組みが始まっている。繊維産業界も同様に、衣料品の大量廃棄問題や製造工程のCO2排出量などの環境負荷がクローズアップされ、サステナビリティ課題の解決が急務となっている。
こうした中、帝人は、繊維製品を原料としたポリエステルのCR技術を使った大規模プラントを操業し、廃棄される繊維製品からポリエステル繊維を生産するCR技術を世界に先駆けて実用化し、グローバルに事業展開している。
日揮HDは、世界屈指のエンジニアリング技術をもち、オイル&ガス、インフラを中心とする様々な分野での豊富な実績を国内外で保有。また、昨今では環境配慮型のプラント建設や、環境関連技術のビジネス化に注力している。
伊藤忠商事は、2019年より繊維産業の大量廃棄問題の解決を目指す「RENU」プロジェクトを始動。使用済みの衣料や生産工程で発生する生地片などを原材料とするリサイクルポリエステル素材のグローバル市場への展開を推進してきた。
今回の協議書締結に基づき、帝人のポリエステルのCR技術、グローバルにエンジニアリング事業を展開する日揮の知見、伊藤忠商事のもつ繊維業界の幅広いネットワークを活用し、ポリエステルのCR技術の国内外へのライセンス展開や、コスト効率に優れたCRシステムの構築を検討する。これにより、繊維製品の大量廃棄問題に対する有効な解決手段のさらなる拡大を目指す。
2020年7月1日
帝人フロンティアは30日、植物由来成分を使用した原料と、使用済みポリエステル繊維などをケミカルリサイクル(CR)により再生した原料を基に、「SOLOTEX ECO‐Hybrid(ソロテックス エコ ハイブリッド)」を開発したと発表した。
環境に優しいだけでなく、ストレッチ性を持つのが特長。サイド・バイ・サイド型複合繊維と呼ばれる、熱収縮性の違う2種類のポリマーを貼り合わせて糸にし、コイル状のクリンプ構造を発現させることでストレッチ性を付与した繊維。2020年秋冬シーズンから、原糸・テキスタイルをファッション衣料やスポーツ衣料、学生服・ユニフォームなど幅広い用途へ展開し、今年度に5億円、2022年度に15億円の販売を目指す。
近年、衣料用素材に対し、ストレッチやソフトな風合いなどの快適性とともに、環境配慮型素材へのニーズが高まっている。こうした中、原料の約40%が植物由来で、ストレッチ性などを持つポリトリメチレンテレフタレート(PTT)と、通常のポリエチレンテレフタレート(PET)を貼り合わせたサイド・バイ・サイド型複合繊維「ソロテックス」の需要は拡大。同社では、PETの部分をリサイクル原料に置き換えることにより、全ての原料を環境配慮型とした新しい「ソロテックス」の開発を進めてきた。しかし、その課題は、PTTとリサイクルPETのサイド・バイ・サイド型複合繊維には、クリンプ構造にばらつきがあることだった。
そこで、同社がこれまで培ってきたポリマーを適正に貼り合わせる技術の向上を図り、植物由来原料を使用したPTTと、CR原料を使用したPETを貼り合わせた「ソロテックス エコ ハイブリッド」の開発に成功した。他の特長として、33~330デシテックスという幅広い繊度や、様々に加工された原糸に対応できるほか、ソフトな風合いを持ち、石油由来の原料と同等のストレッチ性や染色加工性といった素材特性を備える。
2020年4月15日
米社とライセンス契約、実証設備建設の検討開始
大手ポリスチレン(PS)メーカーである東洋スチレン(出資比率:デンカ50%、日鉄ケミカル&マテリアル35%、ダイセル15%)は、地球温暖化や廃棄プラスチックといった環境問題への対応として、バイオPSやリサイクルに取り組んでいる。
昨年にはバイオ化ニーズの高まりから、PSとポリ乳酸(PLA)をアロイ化した「トーヨーエネライツ」を上市。顧客から高い評価を得ており、引き合いが強まっている状況だ。
一方、リサイクルではマテリアルリサイクル(MR)に注力。再生品は品質的な課題があるが、バージン品を組み合わせるなど品質向上に取り組んでいる。
こうした中、昨年10月には環境対策推進室を創設。使用済みPSのケミカルリサイクル(CR)の事業化を検討してきたが、今回、CR事業実証を進めるため、米国アジリックス社(オレゴン州ポートランド)と技術ライセンス契約を締結した。
PSは熱分解によりスチレンモノマー(SM)に戻る性質を持っているが、アジリックス社の熱分解技術は、PSを高収率でSMに変換することが可能。また、同社は使用済みPSの熱分解SM化設備を商業運転している唯一の存在であり、さらにイネオス社など複数の海外PS/SMメーカーとの連携・合弁事業を進行している。
東洋スチレンは今後、アジリックス社からの技術導入を受け、親会社であるデンカ千葉工場(千葉県市原市)内に、使用済みPSの熱分解SM化実証設備(年間処理能力:約3000t)建設の具体的検討に着手し、2021年の操業開始を目指す方針だ。
PSリサイクルのMRでは、使用済みPS食品容器を再び同じ用途(食品接触部)に使用することは品質安全上困難とされてきた。それに対し、使用済みPSをSM(熱分解SM)に戻す今回のCR方式であれば、その課題をクリアできる。
熱分解SMを原料に使用したリフレッシュPSは、品質安全上も全く問題がなく用途に制限がない。また、ワンウェイ(使い捨て)仕様と比較すると、地球温暖化ガスであるCO2の排出量を、少なくとも半減させる効果も期待できる。この事業化計画を実現し、熱分解SMを使用したリフレッシュPSを製造販売できれば、CRによる真のサーキュラーエコノミー(循環型経済)への第一歩を踏み出せることになる。
東洋スチレンは、アジリックス社から技術導入するCR設備により、先ずは製造時に発生するポストインダストリアル材料を中心(一部ポストコンシューマー材料含む)とした実証試験操業を行い、PSの優れたリサイクル性を広く一般に認知させる。そのうえで、政府、コンシューマー、関係団体、需要家などの関係先と協同でスケールアップを図り、将来の目標であるポストコンシューマー材料に対象を広げていく考えだ。