ダウ 世界初、炭素排出量ゼロのエチレン工場を計画

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2021年11月8日

 ダウはこのほど、スコープ1、2のCO2排出に関して、世界初となる炭素排出量正味ゼロの統合型エチレンクラッカーおよび誘導体工場を建設すると発表した。

 カナダのアルバータ州フォート・サスカチュワンに所在する既存設備を改修するとともに、エチレンおよびポリエチレン(PE)の生産能力を3倍に増強する。年間約10億ドル(またはD&A水準の3分の1)の設備投資を工場ごとに段階的に実施し、2030年までにエチレンクラッカーは約180万tの生産能力を追加。誘導品の生産能力や設備改修を通じて、低炭素またはゼロ炭素排出の認証を受けた約320万tのPEおよびエチレン誘導体を生産・供給できる見込みだ。

 これにより、2030年までに、ダウの世界のエチレン生産能力約20%が脱炭素化される一方、PEの供給は約15%増加し、バリューチェーン全体で約10億ドルのEBITDA増大が見込まれる。

 今回のプロジェクトは、同社のTX-9(米国テキサス州)投資に関する成功に基づいている。TX-9のクラッカーおよび誘導体装置と比較して、約15%低い資本集約度の実現が期待される。フォート・サスカチュワンの拠点を選択した理由として、炭素回収インフラの存在、競争力のある原料、政府との魅力的なパートナシップなどが挙げられる。

 同社は、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指し、2030年までに炭素排出量を約30%削減(2005年比)することを掲げている。今回のプロジェクトは、その取り組みを大きく推進すると見られる。

ダウ 循環型プラの生産能力を拡大、22年から供給開始

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2021年11月5日

 ダウはこのほど、プラスチック廃棄物の抑制、GHG排出削減、化石燃料由来のバージン・プラスチックと同等の性能をもつリサイクルプラスチック製品を顧客へ提供する取り組みが進展しており、2022年から、完全循環型ポリマーを顧客へ初期供給することができると発表した。

 同社は、気候変動およびプラ廃棄物に対応するために、サステナビリティ目標の達成に向けて重要な段階を進めている。2030年までに、直接またはパートナシップを通じて100万tのプラを回収、再利用、リサイクルし、2035年までに包装用に販売される製品の100%を再利用またはリサイクルを可能にする目標を設定している。

 具体的な取り組みとして、オランダでは、フエニックス社との間で循環型プラ生産の拡大に向けた初期契約を拡大し、第2工場をヴェールトに建設する。同工場では2万tの廃プラが熱分解原料油に加工処理され、ダウの生産拠点(テルネーゼン)において循環型プラの生産に使用される。また、グンバー社との間では同原料油を精製する最終契約を締結。今年からクラッカーに対応した原料をダウに供給する。

 ダウも、同原料油の精製能力を拡大するために、テルネーゼン拠点において市場開発規模での精製装置の設計、エンジニアリング、建設を進めている。また、米国では、ニューホープエナジー社(テキサス州タイラー)との間で、リサイクルプラ由来の熱分解原料油の供給について複数年契約を締結し、ダウはそれを原料に循環型プラを生産する計画。さらに、循環型プラ製品の認定取得にも力を注ぐ。欧州各国および米国の主要拠点において、国際持続可能性カーボン認証(ISCC)の取得を進めている。

 一方、ダウは高度なプラスチックリサイクルソリューションの世界的パイオニアであるミュラ社と提携した。ミュラ社の新しい高度リサイクルプロセスである「HydroPRS」(熱水プラスチックリサイクルソリューション)は、これまでリサイクルできず焼却や埋め立て処分されていた包装軟質プラをはじめ、あらゆる形態のプラスチックがリサイクルできる。

 現在、ミュラ社は同プロセスを用いた世界初の工場を、英国のティーズサイドで建設中。2023年には年間2万tの最初の生産ラインが稼働を開始し、ダウはリサイクル原料として供給を受ける予定だ。

ダウ クロックスとCFP削減に向けて協力関係を発表

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2021年10月28日

 ダウはこのほど、革新的なカジュアル・フットウェアで世界をリードするクロックスと、環境への責任を果たすと同時に実効性能を追求したシューズの生産を目指して、画期的な協力関係を発表した。

 ダウは、同社の新技術「エコリブリウム」を使用したバイオベースの素材をクロックスに供給し、クロックスは「クロスライト」の主要素材として採用する。これにより、クロックスが現在使用している「クロスライト」素材に比べてCO2排出量をさらに減らすことができ、クロックスの顧客へよりサステナブルな選択肢を提供する。

 また、クロックスは、サステナブルな生産ラインを新設するのではなく、バイオベースの新素材の導入によって既存製品を改良するという独自の手法を用いることで、カーボン・フットプリント(CFP)がより少ないフットウェアの生産を追求する。この手法を採用することにより、クロックスは、ブランドに期待されている性能や履き心地の良さを変えることなく、環境負荷がより少ないシューズを顧客に提供していく。

 両社は協力体制の下、ともにカーボン・ニュートラルに向けた取り組みを進めていく。クロックスは、ネットゼロ・ブランドを目指す取り組みの一環として、2030年までにシューズのCFPを50%削減することを目標に掲げる。一方、ダウは2030年までに年間炭素排出量を正味500万t削減することを目標としており、顧客企業と協働し、多くのソリューションのひとつとして代替原料・素材を活用して、顧客企業による排出量削減の取り組みを支援していく。

ダウ 米国ハリケーン被災地復興に向け、200万ドル寄付

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2021年9月21日

 ダウはこのほど、米国ルイジアナ州が広範囲にわたって被災した、ハリケーン「アイダ」による災害に対し、ダウとダウ・カンパニー基金が、被災地への緊急支援と長期的な復興支援のため、200万ドルを寄付すると発表した。支援には、影響を受けた同社従業員への支援も含まれる。

 ジム・フィッタリング会長兼CEOは、「現在最も重要なのは、当社の従業員、操業、地域社会の安全だ。ダウのチームはパートナーやステークホルダーと緊密に協力し、ハリケーンの直接的および長期的な影響に対する支援を行っている」と述べている。

 この寄付の一環として、ダウは被災した人々の直接支援を行っている地元の教区、地域、国のパートナーと協力。復興・再建に向けた取り組みが始まり次第、ダウは引き続きコミュニティパートナーと協力し、金銭的投資や物資寄付、ボランティア、チーム・ルビコンと提携している社内の退役軍人ネットワーク(VetNet)を通じて、地域全体で現時点では特定されていない地域社会のニーズを調査し、対応していく。

 VetNetはダウの従業員リソースグループ(草の根ネットワーク)の1つ。慈善活動やコミュニティサービス、危機対応のためのリソースの提供を通じて、従業員が地域社会に貢献することを支援している。

 ルイジアナ州では何千人ものダウ従業員が生活している。困難に直面する従業員を支援するために、ダウは無利子ローンや必要に応じた仮設住宅を用意。また、同僚のために寄付を行えるダウ従業員救済基金を提供している。

ダウ ESG報告書を発表、取り組みの透明性を一層強化

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2021年9月10日

 ダウはこのほど、環境・社会・ガバナンスに関する初の統合ESGリポート「INtersections(インターセクションズ)」を発表した。

 同報告書は、環境スチュワードシップに関して同社が実現した顕著な取り組みや、全ての事業、チーム、サプライチェーンおよび地域社会を通じて、社会にもたらす好ましい影響をまとめている。同報告書は、2003年から毎年発表してきたサステナビリティ報告書、また2018年から毎年発表してきたインクルージョンおよびダイバーシティ報告書「Shine(シャイン)」を進化させたものとなる。

 「インターセクションズ」には、世界をより良くしようと努力するダウの目指す目標とコミットメントへの取り組み状況が詳細にまとめられている。具体的な重点取り組み領域としては、CO2排出量の削減、プラスチックに対するサーキュラーエコノミー(循環型経済)の構築、コミュニティー支援、公平性のある職場に向けた活動などが挙げられる。さらに、アカウンタビリティ(説明責任)の推進、長期にわたるステークホルダーの利益保護を目的とした、業界で最高基準のダウのコーポレートガバナンスの慣行についてもまとめられている。

 ジム・フィッタリング会長兼最高経営責任者は「昨年に起きた出来事により、多くのステークホルダーの生活においてダウのチームが担う、重要かつ積極的な役割が浮き彫りになった。素材科学の専門技術を生かし、かつ当社パートナーとの連携を通じて世界にサステナブルな未来をもたらすという目的の下、私たちはこの役割に真剣に向き合い、顕著な進展を遂げた。今年のESG統合報告書の発表は、大胆な目標設定に対する当社のコミットメントと、取り組み状況の測定を再確認するものであり、また、業績に関する透明性を高める目的にも適うものだ」とコメントしている。

 

ダウ アクリル酸メチルを5万t増強、需要増加に対応

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2021年8月25日

 ダウは24日、大規模かつ集約された生産設備を通じて、供給安定性と原材料へのアクセス向上を図るため、メキシコ湾岸地域にアクリル酸メチル生産設備への投資を決定したと発表した。セント・チャールズ工場(米国ルイジアナ州)に年産5万tの生産設備を新設する計画で、2022年前半の操業開始を予定している。

 ダウ・パフォーマンス・モノマーズおよびプラスチック添加剤事業部のグローバルビジネスディレクターであるジム・ナウブ氏は、「アクリル酸メチルは、水処理や熱可塑性プラスチック製品からインキ、樹脂、包装材料に至るまで幅広い用途で活用される重要な原料であり、市場の需要が高まっている。今回の生産増強により、北米だけでなく、世界の顧客へも同製品の供給が可能になる。ルイジアナ州での投資によって広がる可能性に期待している」とコメントしている。

 なお、新規生産設備が稼働すると同時に、セント・チャールズ工場では、主にアクリル酸メチルとアクリル酸2-エチルヘキシルの生産に注力する。アクリル酸エチルの生産は、既存需要に対応する生産能力をもつテキサス州ディアパーク工場が担う。

ダウ 主要製品の増産プロジェクトを推進、需要増に対応

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2021年8月6日

 ダウは21日、高リターンを創出する段階的な能力拡大計画を発表した。同計画では、サステナブルなソリューションに重点を置くとともに、GDPを上回る成長を続ける、主要な最終市場全域における需要増をサポートする。

 同社のコンシューマーソリューションズ事業では、①シリコーンエラストマー、放熱材料、②シリコーンポリマー、シーラント、③シリコーンエンジニアードマテリアル、感圧接着剤、④CatHEC(カチオン性ヒドロキシエチルセルロース)、ポリマー、PEG(ポリエチレングリコール)、といった生産能力の増強が予定されている。これらの生産拡大は、2019~2020年にかけて実施された20超の主要なデボトルネック、効率向上、設備投資増強プロジェクトを含む、これまでの投資の延長となる。

 一方、ポリウレタンおよびコンストラクション・ケミカルズ事業においては、タイのマプタプットに所在する既存設備におけるプロピレングリコール(PG)の生産能力を年間8万t増強し、総生産能力を年間25万tに高める計画。2024年の稼働開始を予定している。これにより同工場はPGの生産設備としてアジア太平洋地域で最大規模となり、アジア太平洋全域およびインドにおける顧客の成長を支える。

 業界をリードするダウのPGフランチャイズでは、基礎化学品の性能を高めるとともに、化粧品、食品、医薬品をはじめ、多くの日用品に使われる高品質な原料を製造している。また、同社は先日、米国テキサス州フリーポートにMDI蒸留・プレポリマーの統合生産設備を建設する計画を発表。この投資により、川下市場におけるポリウレタンシステム製品の需要増加をサポートするとともに、建設、コンシューマー、産業各市場における魅力的な用途でのダウの主導的なポジションを推進する。

 

ダウ リサイクル原料を活用したポリウレタンを供給

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2021年7月7日

 ダウは6日、化石原料ベースの供給原料に代わる、モビリティ分野の廃棄物を原材料とした循環型原料をベースとする新ポリウレタンソリューションの生産に向けたマスバランスアプローチを発表した。

 新しい「SPECFLEX C」と「VORANOL C」の製品群は初期段階において、代表的自動車サプライヤーであるアディエント社とオートノイム社との協力により、モビリティ分野に提供される。両製品は、自動車OEMメーカーが、より循環型の製品に対する市場ニーズや規制要件を満たし、サステナビリティ目標を達成する上で役立つよう設計されている。マスバランスアプローチにより、リサイクル原料を使用し、化石原料の使用を削減しながら、既存製品と同等の性能を持つ循環型ポリウレタン製品を生産する。

 ダウのポリウレタンおよびモビリティサイエンス担当グローバルディレクターであるエスター・クインタニラ博士は、「自動車業界は著しい変革を遂げている。その原動力として、市場の需要や業界自身の熱意、排出・廃棄削減に関わる規制基準の強化が挙げられる。EUのELV(使用済み車両)指令はその一例であり、ダウは当初から循環性をもたらす製品を生み出すことに情熱を注いできた。業界の声に耳を傾けることで、マスバランスアプローチが自動車OEMにとって規制基準を遵守し、それぞれの熱意あふれる目標を達成するための非常に効率的で有効な方法だと確信した」と述べている。

 また両製品は、リサイクル材料から生産されたポリウレタン中間体の量が最終製品の適正量に対応しているかを検証する、独立したマスバランス認証機関による認証を受けており、その報告が正確で監査も可能であることが確認される。

 「SPECFLEX C」は、消費者向けや輸送用途の内装や外装、パワートレインにおいて、快適性や吸音性を目的として一般的に使用される幅広いフレキシブルフォームシステムを可能にする。

 一方、「VORANOL C」は、低粘度で低密度から高密度までの幅広い、かつ取り扱いが容易な製品群の生産を可能にし、あらゆる用途に最適な負荷レベルを選択できる柔軟性をもたらす。自動車分野のシートで市場をリードするアディエント社と、吸音と熱管理の代表的サプライヤーであるオートノイム社は、ダウとパートナーシップを結ぶことで、両製品の使用を開拓する。

 

ダウとシェル 低炭素クラッカー開発の進捗状況を報告

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2021年7月6日

 ダウとシェルはこのほど、電熱分解炉の技術プログラムの進捗状況を発表した。これは、昨年締結した共同開発契約に続くものであり、化学産業の柱をなすプロセスの1つ、CO2排出量を大幅に削減する可能性をもたらす。 

低炭素クラッカー共同技術開発
低炭素クラッカー共同技術開発

 両社は、オランダ政府が資金提供を行うMOOI(ミッション主導の研究、開発、イノベーション補助金)で、共同プログラムが350万ユーロ(約4億6000万円)を獲得したこと、またオランダ応用科学研究機構(TNO)およびサステナブルプロセス技術研究所(ISPT)と協働することを明らかにした。この複数企業による協力は、短期的な進捗と長期的なブレークスルーに必要となる、重要なマイルストーン達成の加速を目的としている。

 初年度のプログラムでは、既存の熱分解炉の電化を目指すと同時に、長期的には電化された熱分解炉の新設計に活用する革新的な技術を追求している。この2本立てのアプローチを通じて、両社の2030年のCO2削減目標を達成するために必要な大幅な排出削減、さらにはパリ協定に沿った両社の2050年までのネット・0排出目標の達成を目指す。

 オランダと米国の共同チームは、電気設計、金属学、炭化水素技術、計算流体力学などの専門知識を展開することにより、コンセプトの絞り込み、排出削減効果の実証、特許の推進、電気加熱構造の耐久性の実証、装置サプライヤーとの提携を行った。両社は現在、数メガワット規模のパイロットプラント建設の審査を行っており、投資支援を前提に2025年の稼働を目指している。

 2つの新たな協力機関は、さらなる専門性と低炭素未来の実現に向けた共通の取り組みを行う。TNOは、高温伝熱応用に深い知見をもち、産業規模で展開できる革新的な電気技術の特定に主導的な役割を果たしている。また、ロッテルダムでの最先端のフィールド・ラボラトリー・インダストリアル・エレクトリフィケーションの設立パートナーでもある。ISPTは、推奨されるコンセプトのシステム統合に注力している。これは、エネルギー転換期の化学品産業について、画期的な技術動向をユーティリティやインフラに結びつけるものとなる。

ダウ テキサス州にMDI蒸留・プレポリマー設備を建設

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2021年7月2日

 ダウはこのほど、米国テキサス州フリーポートにある世界規模の製造拠点に、MDI蒸留・プレポリマー統合生産設備を建設すると発表した。

 今回の投資により、川下のポリウレタンシステム製品の需要拡大をサポートするとともに、GDPを上回る成長を遂げている建設、コンシューマー、各産業の市場をターゲットに、魅力的な用途でのダウの主導的ポジションを推進する。フリーポートの新しいMDI設備は、テキサス州ラ・ポルテにある現在の北米での生産能力を代替するものであり、供給能力は30%強化される。なお、2023年に見込まれる新MDI施設の操業に合わせて、ラ・ポルテ拠点のポリウレタン設備は閉鎖される予定だ。

 一方、フリーポートの新設備は、環境面でも優れている。原材料の輸送がいらず、また既存の熱エネルギーの利用により火力発電が不要となり、CO2排出量を削減。水の利用量についても、生産効率の向上により取水量と廃水排出量を削減する。

 ダウの広範なポリウレタンシステムの製品群は、硬質、半硬質、軟質フォームや塗料、接着剤、シーラント、エラストマー、コンポジット製品を生産するために、主要なポリウレタン・コンポーネントの供給を強化する。その用途は、工業およびインフラ向けのソリューションから床材、家具、寝具、フットウェア分野で消費者に快適さを届けるソリューション、自動車の内装やエネルギー効率の高い絶縁材料などのソリューションにまで及んでいる。

 ダウの工業中間体とインフラストラクチャー事業部門プレジデントであるジェーン・パルミエリ氏は、「今回のMDIへの投資は、既存のインフラを最適化し、ポリウレタン分野での当社の世界的リーダーとしての地位を強固なものとし、川下のシステムのお客様に対し成長をさらにサポートすることが可能になる。また、フリーポート拠点での統合によって、川上の主要なポリウレタン原料をコスト競争力のある形で供給し、川下における高価値ポリウレタン市場での当社の成長をサポートする信頼性の高い供給ポジションを確保するとともに、よりサステナブルな生産工程を実現する」と述べている。