北海道大学 AIプラットフォームの開発を成功、触媒設計を加速

, ,

2020年5月8日

 北海道大学はこのほど、触媒データをオープンに共有でき、プログラミングを必要としない機械学習・データ可視化を可能とした触媒インフォマティクス・プラットフォーム「Catalyst Aquisition by Data Science(CADS)」の開発に成功し、ウェブ上で公開を開始した。近年、AIを適用した触媒開発が活発化しており、触媒インフォマティクスと呼ばれる新規分野として、学術界・産業界から注目されている。

 触媒インフォマティクスは多くの技術の融合分野で専門性が高い上、高度なプログラミング技術を必要とすること、各々の触媒研究者の所有するデータを統合的に蓄積・共有するデータセンターが存在しないことが、触媒インフォマティクスを推進する上で大きな障害であった。

 今回開発されたプラットフォームによって、研究者が持つデータの可視化や機械学習による触媒設計が可能となった。プログラミングやデータ科学の事前知識がなくても、ウェブブラウザ上での簡単なマウス操作で、触媒インフォマティクスを用いた触媒設計ができる。

 また、各自の触媒データをアップロードすることにより、世界の触媒研究者と情報共有でき、触媒データセンターとしての役割も果たせる。実際にOCM(メタン酸化カップリング)触媒データをCADSで分析し、インタラクティブ可視化などによって、OCMの反応収率に影響する要因の切り口を見いだした。今後CADSの普及により、データ駆動型の効率的かつ直接的な触媒設計が加速すると期待される。

 なお、同研究は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業CREST研究領域「多様な天然炭素資源の活用に資する革新的触媒と創出技術」研究課題「実験・計算・データ科学の統合によるメタン変換触媒の探索・発見と反応機構の解明・制御」の支援を受けて実施された。また、研究成果は4月に「Reaction Chemistry & Engineering」誌にオンライン公開された。

ダイセル・北大 AD予防に植物性セラミドの有効性を発見

, , , ,

2019年12月23日

 ダイセルはこのほど、北海道大学との共同研究により、同社の機能性食品素材である植物性(こんにゃく由来)のセラミドが、アルツハイマー病(AD)の発症を予防する効果を持つことを発見したと発表した。

 こんにゃくセラミドは全身のうるおいを保つ効果を持ち、美容サプリメントや飲料などに使用されている。ダイセルと北大は、2016年に同学内の「次世代物質生命科学研究センター」内に共同で設置した産業創出講座を中心に、こんにゃくセラミドなど、同社の機能性食品素材の効能を研究してきた。そして今回、北大の五十嵐靖之招聘客員教授、湯山耕平特任准教授らとの研究により、こんにゃくセラミドにAD発症の予防効果があることを発見した。

 ADの発症は「アミロイドβペプチド(Aβ)」が脳内に過度に蓄積することが原因の1つとされる。五十嵐教授らのグループは、Aβが「エクソソーム」という物質と結合することで分解・除去されることを解明してきた。

 今回の研究では、Aβが過剰に発現したマウスに対し、こんにゃくセラミド1日1㎎の経口投与を2週間継続したところ、血液・脳内のエクソソーム量の上昇などが確認され、こんにゃくセラミドに神経細胞由来のエクソソーム分泌を促す作用があることを確認。さらに、増加したエクソソームがAβを分解・除去し、脳内のAβ濃度が低下して、短期記憶の改善効果が認められた。

 こんにゃくセラミドは、AD発症を防止できる可能性があり、今回の知見は新たな機能性食品や新薬開発に繋がることが考えられる。両者は今後、さらにヒト介入試験により、こんにゃくセラミドの認知機能改善効果について検証していく予定だ。

 なお、この研究の成果は、11月14日公開の「Scientific Reports誌」に掲載された。ダイセルは今後も、社会的課題の解決に貢献する素材を提供していく考えだ。