三井化学 眼球手術訓練シミュレーターがグッドデザイン賞に

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2019年11月6日

 三井化学と名古屋大学はこのほど、ヒトの眼に近い眼球モデルを搭載した眼球手術訓練シミュレーター「Bionic‐EyE」が、2019年度グッドデザイン賞(主催:日本デザイン振興会)を受賞したと発表した。高い技術に加え、医療従事者の技術向上や、将来的な医療用ロボットの性能向上への貢献が高く評価された。

 同シミュレーターは、東京大学と共に行った、内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)によるオープンイノベーションで開発。三井化学の材料技術と、名古屋大学未来社会創造機構・新井史人教授と小俣誠二特任助教の精密工学技術に、東京大学眼科教室・相原一教授の医学的知見や、東京大学工学研究科・光石衛教授と原田香奈子准教授の医療ロボット技術を組み合わせた。

 ヒトの眼球の特性を研究し、材料を層状に構成することで、数ミクロンの非常に繊細な組織である白目の感触を忠実に再現。難易度の高い緑内障の手術スキルを画期的に向上させることに貢献している。

 緑内障は失明原因の第1位。患者が増加する中、緑内障手術時の白目の薄切りと縫合という難易度の高い手術には、若手医師の早期育成が喫緊の課題となっている。従来の訓練では、ヒトの眼球より硬いブタの眼球を使用するなど、訓練の有効性や衛生面、動物愛護の観点からも問題があった。

慶大・東大 実験とMI融合で効率化、LIB負極材を開発

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2019年9月13日

 慶應義塾大学と東京大学の研究グループはこのほど、実験主導型のマテリアルズ・インフォマティクス(MI)により、リチウムイオン二次電池(LIB)の負極となる世界最高水準の性能をもつ有機材料の開発に成功した。

 同研究では有機材料の新たな設計指針を確立するとともに、極めて少ない実験数で高容量・高耐久性の材料が得られる手法を示した。同開発は、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業「さきがけ」によるもの。

 電池の省資源化に向けて、LIBの負極として金属を使わない有機材料が求められるが、従来は研究者の試行錯誤や経験と勘で探索されており、設計指針は明らかでなかった。

 一方、MIは研究者の経験と勘の関与を減らすための手段だが、一般的に、大規模なデータ(ビッグデータ)に対して機械学習を行うため、実験科学者の小規模な自前データや経験知をどう活用するかに課題があった

 。そこで、慶大理工学部の緒明佑哉准教授らの研究グループは、東大大学院新領域創成科学研究科の五十嵐康彦助教らと共同で、小規模でも比較的正確な実験データと実験科学者の経験と勘を融合した「実験主導型MI」の手法を探索した。

 具体的には、まず16個の有機化合物について負極としての容量を実測し、容量を決定づけている少数の要因をスパースモデリングで抽出した。スパースモデリングとは、現象を説明する要因は少数(スパース)であるという仮定に基づき、適切な規範に従ってデータに含まれる主要因を抽出するデータ科学的手法の一つ。

 この学習結果をもとに、抽出した因子を変数とした容量予測式(予測モデル)を構築。次に、市販の化合物の中から、研究者の経験と勘も交えながら、負極としてある程度の容量が見込まれる11個の化合物を選び、実験をする前に容量の予測値を算出した。

 予測値の高かった3個の化合物について容量を実測すると、2個の化合物で高容量を示した。さらに、そのうちの1つであるチオフェン化合物を重合すると、容量・耐久性・高速充放電特性が向上した高分子の負極材料が得られた。

 同研究では、少ない実験データ、研究者の経験と勘、機械学習を融合し、高性能な材料の探索に成功したことから、材料探索を効率化する上で、実験科学とMIの融合の有効性を明らかにした。また、今回確立した有機負極材料の設計指針により、さらなる性能向上や新物質の発見が期待されている。

東大など 金属性プラスチック実現、イオンで電子を制御

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2019年9月10日

 東京大学と科学技術振興機構(JST)、産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、世界で初めてイオン交換が半導体プラスチックでも可能であることを明らかにしたと発表した。

 イオン交換は古くから水の精製、タンパク質の分離精製、工業用排水処理などに応用されている。今回の研究では、極めて普遍的なイオン交換を使い、半導体プラスチックの電子状態を制御する革新的な原理を明らかにした。また、この原理を利用して、半導体プラスチックの電子状態を精密に制御し、金属的な性質を示すプラスチックの実現にも成功した。

 半導体中の電子の数やエネルギーは、半導体の結晶の中に少量の不純物(ドーパント)を添加することで制御することができる。不純物ドーピングはエレクトロニクスデバイスを支える最も重要な半導体技術で、半導体プラスチックにも適用されており、電気が流れるプラスチックである導電性高分子は、さまざまな電極材料や機能性コーティング剤として産業応用が拡大されつつある。

 しかし、ドーパント分子は大気中の水や酸素と反応して、ドーパントとしての機能が簡単に失われてしまうため、この酸化還元反応の制約を乗り越えることが望まれていた。

 東京大学大学院新領域創成科学研究科の山下侑特任研究員、竹谷純一教授(産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ研究員など兼務)、渡邉峻一郎特任准教授(JST戦略的創造研究推進事業研究員など兼務)の研究グループは、これまで半導体プラスチックとドーパント分子の二分子系で行われていたドーピング手法に対し、新たにイオンを添加することで、従来よりも圧倒的に高い伝導性をもつ導電性高分子の開発に成功した。

 さらに適切なイオンを選定することで、イオン変換効率がほぼ100%になること、ドーピング量が増大することも明らかにした。このように高いドーピング量をもつ半導体は、金属のような電気抵抗の温度依存性を示すことも分かった。

 イオンは低い電圧で大量の電荷を駆動・蓄積でき、他の化学種との高い反応性をもつ。電子もイオンも電荷を運ぶ媒体であるため、両方の特徴を生かしたイオントロニクスの研究が盛んに行われているが、今回の研究で実現した金属性プラスチック内のイオン交換反応により、イオントロニクスデバイスの実現を大きく前進させることが期待されている。

JXTGエネルギーなど 水素の低コスト化へ、世界初の技術検証に成功

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2019年3月27日

 JXTGエネルギーはこのほど、千代田化工建設、東京大学、クイーンズランド工科大学(QUT)とともに、オーストラリアで有機ハイドライド(水素を貯蔵・運搬できる物質の一種)を低コストで製造し、日本で水素を取り出す世界初の技術検証に成功したと発表した。

 同検証は、東京大学主催の水素サプライチェーン構築を目指す社会連携研究に、各工程に必要な技術と知見をもつJXTGエネルギー(有機ハイドライド電解合成技術)、QUT(高効率の追尾型太陽光発電システム)、千代田化工建設(水素取り出し技術)が参画して実施した。

 同検証の特徴は、水素の利活用拡大に不可欠な水素の低コスト化を実現するため、有機ハイドライド製造の工程を簡素化した点にある。

 従来、水素を貯蔵・運搬する際には、水電解によって生成した水素をタンクに貯蔵し、一旦有機ハイドライドの一種であるメチルシクロヘキサン(MCH)に変換して運搬する必要があった。

 しかし、同検証では、水とトルエンから直接MCHを製造する「有機ハイドライド電解合成法」と呼ばれる製法を用いたことで、従来に比べ工程を大幅に簡略化することができた。将来的にはMCH製造に関わる設備費を約50%低減することが可能となる。

 さらに、MCH製造に必要な電力として、太陽光発電の電気を用いたことで、製造時にCO2を排出しない「CO2フリー水素」約0.2㎏の製造に成功した。

 今後は、水素社会の実現と地球温暖化の防止を目指し、同製法による「CO2フリー水素」製造技術の社会実装に向けた開発に取り組んでいく。

 

東大など 水の「負の誘電率」発見、高エネ密度の蓄電可能に

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2019年3月15日

 東京大学と産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、ナノ空間に閉じ込められた水の「負の誘電率」を発見した。これにより、高エネルギー密度の蓄電デバイスの開発につながることが期待される。

 電気を蓄えるデバイスの一種である電気二重層キャパシタ(EDLC)は、繰り返しの利用による劣化がほとんどなく、リチウムイオン電池に比べ高出力であるなどの特徴がある。

 この特徴を生かして、小惑星探査機「はやぶさ」に搭載された、小型移動ロボットの動力源として利用されるなど、幅広い用途で利用されており、今後、省エネルギー社会で電力の高効率な利用を可能にする蓄電デバイスとして、応用範囲の拡大が期待されている。

 EDLCは電気二重層と呼ばれる、電子とイオンがペアになる現象により電気を蓄える。このため、より効率的に電気を蓄えるためには、ナノ空間で高密度に電子とイオンを閉じ込める必要がある。

 これまで、イオンをナノ空間に閉じ込める際、イオンに結合している水分子も一緒に閉じ込められることが知られていたが、この水分子の特性は不明なままで、水分子が共存するナノ空間で、効果的に電子とイオンを閉じ込める方法論も知られていなかった。

 東大大学院工学系研究科の山田淳夫教授と大久保將史准教授らのグループは、産総研の大谷実研究チーム長、安藤康伸主任研究員との共同研究により、「マキシン」と呼ばれる層状化合物の層間ナノ空間に、リチウムイオンとともに閉じ込められた水分子が、通常の正の値ではなく「負の誘電率」を持つことを発見。従来未開拓であったナノ空間での水分子の異常な物性を明らかにした。

 さらに、この「負の誘電率」を利用すると、少ないエネルギーでイオンを高密度に蓄えることが可能となるため、高エネルギー密度のEDLCの開発にもつながることが示された。

 

NEDOなど 酸素生成光電極を開発、太陽光で水を高効率に分解

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2019年2月13日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)はこのほど、東京大学とともに、窒化タンタル(Ta3N5)光触媒を使い、太陽光で水を高効率に分解できる赤色透明な酸素生成光電極の開発に成功。水の分解反応による水素/酸素製造で、世界トップレベルの太陽光エネルギー変換効率5.5%を達成した。

 ARPChemには三井化学・三菱ケミカル・富士フイルム・国際石油開発帝石・TOTO・ファインセラミックスセンターが参加している。

 この成果は、今回開発に成功した窒化タンタルからなる赤色透明な酸素生成光電極と水素生成光電極を組み合わせた、2段型構造の水分解用タンデムセルを構成することで得られた。エネルギー変換技術としての人工光合成の有用性を示すものとなっている。

 今回開発した酸素生成光電極は、より波長の長い光を水分解に利用できる水素生成光電極との組み合せに適しているという。今後は光電極のさらなる高性能化と水分解用タンデムセルの構造最適化を進め、2021年度末までに、目標とする太陽光エネルギー変換効率10%の達成を目指す。

 NEDOは、太陽光のエネルギーを利用して水から生成した水素と工場などから排出されるCO2から、プラスチック原料などの基幹化学品(C2~C4オレフィン)を製造する基盤技術開発に取り組んでいる。同プロセスを実現するためには、光触媒のエネルギー変換効率の向上が重要なカギとなっている。

NEDOなど 光触媒で世界最高の水素生成エネルギー変換効率を達成

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2018年10月23日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem:アープケム)はこのほど、東京大学と太陽電池材料として知られるCu(In,Ga)Se2(略称:CIGS)をベースとした光触媒で、非単結晶光触媒の中で世界最高の水素生成エネルギー変換効率12.5%を達成したと発表した。

 今回開発した水素生成光触媒と、従来のBiVO4からなる酸素生成光触媒で二段型セルを組み立て、疑似太陽光照射下での水の全分解反応を試みたところ、太陽光エネルギー変換効率は3.7%を達成。この値は、2016年に公表された太陽光エネルギー変換効率の23%増に相当する。

 光触媒は太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換する機能性材料。太陽光の強度のピークは主に可視光領域(400~800㎚)にあるため、この波長域の光を吸収する光触媒ができれば、効率よく太陽光のエネルギーを利用できる。

 しかし、従来の光触媒は、吸収波長が主として紫外光領域(~400㎚)に限られるものが多く、可視光から赤外光領域にかけての光を利用できるように、光触媒の吸収波長の長波長化が課題の1つだった。

 このため、従来よりも長波長の光を吸収する光触媒材料として、硫化物やセレン化物といったカルコゲナイド系材料の開発を進め、CIGSベースの光触媒開発に至った。

 NEDOなどは今後、高性能な酸素生成光触媒を開発し、今回の研究で得られた水素生成光触媒と組み合わせることで、2021年度末までに太陽光エネルギー変換効率10%の達成を目指す。

 なお、アープケムは国際石油開発帝石、TOTO、ファインセラミックスセンター、富士フイルム、三井化学、三菱ケミカルの5社1団体が参画する研究組合。太陽光の下、①光触媒による水の分解で水素/酸素を製造し②分離膜を用いて水素を安全に分離し③合成触媒を用いて水素と二酸化炭素から化学品原料である低級オレフィンを製造する人工光合成型の化学プロセスを確立し、化石資源からの脱却や資源問題・環境問題の解決を目指す目的で、2012年に設立された。

 NEDOなどとともに、環境に優しいモノづくりを実現するため、太陽光のエネルギーで水から生成した水素と、工場などから排出される二酸化炭素を合成して、プラスチック原料などの基幹化学品(C2~C4オレフィン)を製造する人工光合成の研究開発を進めている。

NEDO 次世代浮体式洋上風力発電システム実証機が完成

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2018年9月10日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、丸紅などとのコンソーシアムで、日本初のバージ型浮体に風車を搭載した次世代浮体式洋上風力発電システム実証機を完成させた。

 同システム実証機は水深50m程度の浅い海域でも設置が可能なバージ型と呼ばれる小型浮体を採用し、コンパクトな2枚羽風車を搭載。今後、北九州市沖設置海域に向けて曳航し、係留、電力ケーブルの接続を行い、試験運転を行った後、今秋から実証運転を開始する予定だ。

 洋上風力発電は風車を支える基礎構造の形式により、海底に基礎を設置する「着床式」と、基礎を海に浮かべる「浮体式」に大別される。NEDOが実施した調査では、日本近海で洋上風力発電が導入可能な着床式と浮体式を比較すると、浮体式は着床式の約5倍の導入可能面積がある。

 しかし、世界的に商用化が進んでいる浮体式の一つであるスパー型は100m程度の水深が必要であるため、水深50~100mの範囲で着床式に対してコスト競争力のある浮体式の開発が課題となっていた。

 こうした中、NEDOでは2014年度から、同水深海域で適用可能な低コストの次世代浮体式洋上風力発電システム実証研究を開始し、実証海域の選定、浮体の設計、製造などを行い、今年6月にバージ型と呼ばれる小型浮体を製作。今回、NEDOと丸紅などのコンソーシアム(日立造船、グローカル、エコ・パワー、東京大学、九電みらいエナジー)は、このバージ型浮体にコンパクトな2枚羽風車を搭載した日本初のバージ型浮体式洋上風力発電システム実証機を完成させた。

 今後、北九州市沖15km、水深50mの海域に設置を行い、試験運転の後、今秋から2021年度までの予定で実証運転を開始する。なお、発電した電力は九州電力の系統に接続する予定だ。