宇部興産など PEFC向け高性能触媒の合成に成功

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2021年11月16日

 宇部興産、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、産業技術総合研究所(産総研)、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)は15日、共同で、固体高分子型燃料電池(PEFC)向けの高性能なコアシェル型触媒の合成に成功し、その高効率合成も実現したと発表した。

 PEFCは、高いエネルギー変換効率や長寿命、低温作動(室温~100℃)などの特長をもち、FCV(燃料電池自動車)の動力源や家庭用コージェネレーションシステムなどで利用されている。

 エネ変換効率をより向上させるためには、正極(カソード電極)での酸素還元反応(ORR)の活性を高める必要があり一般的には白金が採用されている。しかし白金は高価で資源量も少ないため、使用量を大幅に低減しながらもエネ変換効率を向上させる手法の確立が求められている。

 そこで近年は、触媒粒子の外表面(シェル)部分のみに選択的に白金を存在させ、粒子の内部(コア)部分を他の金属で置き換えた構造をもつコアシェル型触媒により、白金利用効率の向上を目指す研究が活発化。しかしコアシェル型触媒の合成法として普及している銅‐アンダーポテンシャル析出(Cu-UPD)法は工程が非常に複雑かつバッチ式であるため、生産性が低いことが課題となっていた。

 こうした背景の下、NEDOは「超超プロジェクト」で、計算・プロセス・計測の三位一体による機能性材料の高速開発に取り組んでおり、その一環として四者共同で、カソード触媒の白金使用量の大幅な削減を可能とするコアシェル型触媒を効率的に合成する技術開発を行ってきた。

 今回、1日当たり数十種の触媒を連続・自動合成することが可能なハイスループットフロー合成装置を使って、短時間で最適なコアシェル構造をもつ触媒合成条件を確立し、またプロセス条件を最適化して、従来比十倍以上の触媒の高効率合成プロセスを実現した。この成果によりPEFCで課題となっている高い白金コストを大幅に低減することで、燃料電池触媒のより一層の社会実装を促進するとともに、脱炭素社会の実現に貢献する。