三洋化成と子会社のAPB、グンゼの3社はこのほど、三洋化成とAPBが開発中の次世代型LIB「全樹脂電池」の樹脂集電体の量産化に向け覚書を締結したと発表した。最適な生産・供給体制の構築を目指す。
全樹脂電池は、バイポーラ電極構造(板状集電帯に垂直方向に電流が流れる)と高分子樹脂製の基本部材により、高品質、高い異常時信頼性、高エネルギー密度、形状・サイズの自由度、革新的な生産プロセスといった性能・特徴を全て同時に実現する次世代型LIBだ。
集電体は電気を取り出す端子で、一般には銅やアルミなどの金属が使用される。全樹脂電池の集電体は樹脂被覆した活物質を樹脂集電体に塗布したもので、従来のLIBよりも工程が短く製造コスト・リードタイムが削減できるとともに、これまでにない高い異常時信頼性とエネルギー密度を実現している。
バイポーラ積層型は部品点数が少なく樹脂製のため、電極の厚膜化が容易でセルの大型化が可能な上、形状自由度も高いことが特長だ。グンゼのフィルム製造技術をベースに3社で共同開発を進め、これまでに各種評価を通じて全樹脂電池の基本特性を確保し、現在は製品仕様の確定に向けた取り組みを推進している。
今後は、樹脂集電体の開発に加え、量産化を見据えた協力体制の継続・強化を確認し、同協業事業は新たなステップに入る。再生可能エネルギーの活用やIoT技術による電力インフラの高度化、災害対応など、今まで以上に電池や蓄電システムの重要性が高まる中、全樹脂電池は定置用蓄電池や各種モビリティ用途など様々な用途での展開を通じ、あらゆる生活の場面を豊かにしていく。
3社は樹脂集電体の生産・供給体制を構築することで全樹脂電池の量産化を促進し、持続可能な社会の実現に貢献していく考えだ。