横浜ゴム バイオエタノールからブタジエン生成

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2019年8月7日

 横浜ゴムは産業技術総合研究所(産総研)と先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)と共同で、インフォマティクス(情報科学)を活用し、バイオエタノールからブタジエンを生成する世界最高の生産性を持つ触媒システムを開発した。また、生成したブタジエンを使ったブタジエンゴムの合成にも成功。

 タイヤの主原料の1つで合成ゴムの元となるブタジエンは、現在、石油精製の副産物として工業的に生産されている。バイオマス(生物資源)からの生産技術の確立により、石油への依存度低減やサステナブルな原料調達の促進が期待できる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ)」の委託事業として実施した。

 超超PJでは計算科学や人工知能(AI)を積極的に活用することで、従来の経験と勘を頼りにした材料開発と比べ、開発期間を20分の1に短縮することを目指している。

 今回は超超PJが推進する「計算科学技術」「プロセス技術」「先端計測技術」の三位一体で開発を進めた。まず「計算科学技術」でバイオエタノールからブタジエンをより多く生成できる金属酸化物触媒を探るため、AIを使用した量子化学計算による一次スクリーニングを行った。

 バイオエタノールからブタジエンを生成するには複数段階の反応を経る必要があるが、それを5段階に分けて各段階の反応を緻密に計算したところ、特定の金属酸化物の組み合わせが最適であることを導き出した。

 次にそれらの最適な配合状態や反応条件を探索するため「プロセス技術」「先端計測技術」で、複数の条件下で試験する迅速触媒評価と、それぞれの反応性を高速に計測するハイスループット実験を実施。活性成分の触媒用担体での分布や量などの触媒調製条件、温度などの反応条件で最適解を発見した。世界最高の生産性を持つ、極めて高活性な触媒システムの非常に短期間での発見で、触媒開発におけるインフォマティクスの有用性を実証することにも成功した。

 今後はより高度なAI技術による計算科学をベースとしたキャタリストインフォマティクスの基盤を構築するとともに、多検体高速同時評価と高速計測技術を連携させたハイスループット実験を通して、2030年のバイオマス由来の合成ゴム実用化を目指す。

 

 

SEMI 産総研フレキシブルIoTコンソーシアム参加

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2019年5月9日

 SEMIジャパンはこのほど、産業技術総合研究所(産総研)が今年4月1日に設立したフレキシブルIoTコンソーシアムに参加したと発表した。

 同コンソーシアムは、フレキシブルハイブリッドエレクトロニクス(FHE)技術と、高度情報処理技術との融合を図り、サービスビジネスの開拓、開発促進を支援することを目的としている。SEMIは、同コンソーシアムの運営委員として参加し、エレクトロニクスの成長分野として期待されるFHE技術の進展をSEMI会員と共に加速する。

 同コンソーシアムの活動は、①研究会・シンポジウム・情報交換などの開催②内外技術動向・市場動向調査、技術セールス③デバイス/システム技術マッチング支援、サービス事業推進支援④推進戦略企画・策定(プロジェクト企画、ファンディングなど)、各種連携サポート⑤FHE関連の製造・評価・解析施設の活用、国家プロジェクト開発技術の活用⑥材料プロセス機能評価、実機試作、社会実装検証などによる技術の市場適合性検証、が計画されている。

 また技術支援のインフラとして、産総研の柏センターに設置された印刷などのFHE関連プロセス装置や各種評価・解析装置を設置し、コンソーシアム会員に提供する。

 SEMIは同コンソーシアムに、SEMIのグローバルな会員と活動のプラットホームを提供するとともに、参画を通じて、SEMI会員のFHE技術分野への参入や技術・ビジネスの発展を支援する。

NTT・産総研 固体中の核磁気共鳴現象の制御に初めて成功

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2018年9月10日

 NTTと産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、微細なメカニカル振動子を用いて、固体中の核磁気共鳴現象を制御することに世界で初めて成功したと発表した。

 超高速の演算を可能とする量子コンピューターや、絶対的な安全性が期待される量子情報通信、あるいは超高感度の検出技術を提供する量子センサーなどの量子技術で、量子メモリーの重要性が注目されている。量子メモリーとは長い時間、量子状態を保持できる素子で、その候補の1つとして固体中の核スピンの利用が提案されている。

 今回、微細なメカニカル振動子が引き起こすひずみにより、核磁気共鳴の周波数を素子単位で制御できることが実験的に示された。この技術により、集積素子で所望の量子メモリーの核スピンを個別に操作することが可能となり、固体素子による量子メモリを実現していく上で、重要な要素技術となることが期待される。

 今回の成果は、NTTで素子作製・測定を行い、産総研で理論計算に基づいたデータ解析を行うことで得られた。メカニカル振動子は、トランジスターなどと同様に、半導体ナノ加工技術によって作製されるため、半導体チップへの組み込みが可能となる。

 今後はこの技術を使い、複数の素子での核スピンの選択的制御を実現し、量子メモリーや量子センサーなどの集積化に向けたプラットフォームとしての活用を目指す。

 なお、今回の成果は8月28日付の英国の科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。また同研究の一部は、日本学術振興会の科学研究費補助金である新学術領域研究「ハイブリッド量子科学」の一環として行われた。