花王 ワンウェイプラスチックの水平リサイクル実証事業を開始

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2020年9月28日

 花王はこのほど、東京都の「プラスチックの持続可能な利用に向けた新たなビジネスモデル」公募の事業者に採択されたと発表した。

 参加企業・団体と共に「ワンウェイプラスチックの水平リサイクルに向けた資源循環型モデル事業」に取り組む。期間は今月からの半年間。単一素材(モノマテリアル)の詰め替えフィルム容器、易剥離性のあるタックラベル、再生プラボトル容器の開発、使用済み容器の回収など、資源循環型システムの構築と社会実装を目指す。

 同社は1990年代より、製品の濃縮化による容器のコンパクト化、詰め替え・付け替え用製品の開発と普及など、包装用プラの削減に取り組んできた。一方これらの包装容器や飲料用のペットボトル以外の「その他プラ」容器のリサイクルは進まず、多くはエネルギー回収、単純焼却、埋め立て、海外輸出などの「ワンウェイプラ」の利用にとどまっている状況だ。輸出制限による国内処理状況のひっ迫、海洋プラ対策の観点から、「その他プラ」の国内資源循環は不可欠である。

 今回、花王が主体となりシステム全体を設計。多分野で環境配慮型製品開発を行う凸版印刷が単一素材の詰め替え用フィルム容器の製造、国内資源循環に取り組む市川環境エンジニアリングとNPO法人 地球船クラブ エコミラ江東が再生ペレットとそのボトル容器の開発、NPO法人 持続可能な社会をつくる元気ネットが生活者のモニター評価、通販事業で循環型製品の積極活用を計画するヴィアックスが試作品の配送という役割で、バリューチェーンの中で業界枠を超えて連携していく。 

 具体的には、再生プラボトルと単一素材の詰め替え容器を試作し、江東区の公共施設に配布する。使用済みプラ包装容品のペレット化には、現在江東区で実施中の、家庭で洗浄した食品用PS容器の回収・異物除去・高純度プラペレット化の仕組みを適用する。

 期間終了後も花王は、使用後の詰め替え容器を回収・洗浄・ペレット化した再生プラのボトル容器の試作に取り組み、将来的には詰め替え用フィルム容器から詰め替え用フィルム容器への水平リサイクルの実現を目指す。花王と参加企業・団体が積極的な発信と呼びかけを行い、多様なステークホルダーの理解と協力を得て、社会全体の取り組みとして進めていく考えだ。

花王とライオン フィルム容器のリサイクルで協働開始

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2020年9月18日

 花王とライオンはこのほど、プラスチック包装容器資源循環型社会の実現に向け、フィルム容器のリサイクル「リサイクリエーション」活動に協働して取り組むことを決定した。資源に戻す「リサイクル」と価値の創造「クリエーション」からなる造語で、同じモノではなく、より楽しい・よりよいモノを創り出すアップサイクル。「使ったら捨てる。このあたりまえを変えたい」というコンセプトだ。

 日本の日用品メーカーは1990年代から包装容器のプラスチック使用量の削減を進め、濃縮化による製品容器のコンパクト化とつめかえ・つけかえ用製品の開発・普及により大幅な削減を実施。2018年にはつめかえ・つけかえ用製品の割合は80%に達したが、使用する複合フィルム素材は多成分・不均質プラスチックのため、リサイクルの困難さがある。

 花王は「リサイクリエーション」を通じて、回収したフィルム容器を「おかえりブロック」というブロックに再生加工したり、ライオンも「ハブラシ・リサイクルプログラム」を通じて、使用済みハブラシを植木鉢などにリサイクルしてきた。

 しかし規模の拡大と継続には、特に複合素材のフィルム容器は単一成分への分離が困難、メーカーごとに異なる素材や設計が製品容器への再生を制約、などの課題が多い。容器の分別など、消費者を含めたステークホルダーとともに社会の意識を変えていくことも必要になる。

 そこで両社は企業の枠を超え、次の4つの活動を通じて回収・リサイクル全体の経済性の改善に取り組む。①消費者・行政・流通が連携したフィルム容器の分別回収のしくみの検討。②幅広い製品への利用、消費者の分別回収のしやすさ、企業間や業界間での共通利用を考慮したリサイクル材料・容器の品質設計。③回収・再生したリサイクル材料の活用方法の検討。④リサイクルへの消費者の理解・協力を深めるための普及促進・啓発活動。

 両社は「リサイクリエーション」活動を継続し、フィルム容器からフィルム容器への水平リサイクルを目指し、フィルム容器リサイクルの社会実装を進める考えだ。

花王 ほこりや花粉、微粒子の肌への付着抑制技術を開発

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2020年7月20日

 花王は17日、肌を微細な凹凸膜で覆うことで、空気中に浮遊するほこりや花粉などの微粒子の付着を抑制できることを見出だしたと発表した。

 空気中にはほこりや花粉など目に見えない微粒子が浮遊しており、肌に付着すると肌がくすんで見えたり、かゆみや肌あれなどの原因となる上、長期的にはシミやシワなどの肌老化を助長するという報告もある。日本では花粉の時期に付着が気になるという声が聞かれるが、中国やタイ、ベトナムでは「微粒子大気汚染で肌の調子が悪くなる」、と感じる人がいずれも8割以上にのぼる。

 同社は、これらの課題に対して、浮遊微粒子の肌への付着に注目した。物体間に働く引力にはファンデルワールス力、静電気力、液架橋力があり、強さは対象物の大きさに依存する。ほこりや花粉など粒径2.5~30㎛の微粒子ではファンデルワールス力が相対的に大きく、物体間の距離が近いほどその力が強く働くため、粒子/付着面(肌)の距離の影響を調べた。

 異なる粗さの付着面と異なる粒径(2.5と30㎛)の微粒子の間のファンデルワールス力をシミュレーションしたところ、特定の粗さ領域では粒子が付着しにくいことを見出だした。直径10~50㎛程度の紫外線散乱剤(微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛)を使って微細凹凸構造を作ると、微粒子の付着を高効率で抑制できることがわかった。配合する油剤によっては、凹凸膜表面が油剤に覆われて付着抑制効果を失うが、紫外線散乱剤と油剤の濡れを制御することで表面の微細凹凸構造が維持され、微粒子の付着を抑制できた。

 こうして作った日やけ止めは、人工皮革での塗布試験で付着抑制効果を示し、ヒトでの5時間の外出試験でも、肌への汚れ付着は有意に少ないことが確認できた。今後、サンケアをはじめとする技術開発につなげていく予定だ。

花王 CNF疎水化技術、複合高機能樹脂の提供を開始

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2020年6月16日

 花王はこのほど、バイオマス由来のセルロースナノファイバー(CNF)を改質し、各用途の樹脂に配合することで、少量でも樹脂の強度や寸法安定性を向上させることを可能にした。この改質CNF配合高機能樹脂を、ユーザーニーズにあわせてカスタマイズした「LUNAFLEX(ルナフレックス)」シリーズとして提供を開始する。今後、改質CNF配合による物性向上が資源の効率的利用に寄与し、社会のサステナビリティに貢献することが期待される。

 CNFは、植物中でセルロース分子の束を形成しており、サステナブルな高機能素材として世界中でその有効活用が望まれている。高強度・高弾性など様々な機能を持つことに加え、樹脂に配合すると、樹脂の強度や靱性、寸法安定性の向上効果がある。

 しかし、分子間や分子内で強固に水素結合をしているため、ナノファイバーとして単離することは非常に難しい。 また単離した後もその表面は強い親水性を示すため、油性溶媒にはなじみが悪く、分散安定化は非常に困難だった。さらに、樹脂への配合の際にCNFが凝集してしまうなどの不具合が生じてしまうことが多く、樹脂中への均一ナノ分散には種々のノウハウが必要となる。

 こうした中、花王は独自に積み上げた界面制御技術に基づき、CNFの表面に様々な官能基を付加することで発現する機能を探索。その結果、親水性のCNF表面を疎水表面へと改質することが可能となり、CNFを樹脂へ均一ナノ分散することに成功した。

 同社は、複合化原料の提供だけにとどまらず、改質CNF配合樹脂を「LUNAFLEX」シリーズとして提供する取り組みを開始。表面改質を施して樹脂への分散・混合性を向上した改質CNFを光硬化性アクリル樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、および熱可塑性フェノキシ樹脂に対して配合したところ、顕著な物性の向上が認められている。

 同社は今後も、ユーザーが使用する様々な樹脂や使用場面に対して同社CNFが有効活用されるよう、新たな製品、性能を提案していく考えだ。