NEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」において、旭電化研究所とアルファー精工、シナプスの3社はMEMS技術による格段に薄型・小型・高伝送特性の電子部品の開発に成功した。
シリコン素材だけでなく金属と樹脂に適用でき、
2022年3月9日
2022年1月20日
NEDOはこのほど、東北緑化環境保全、電力中央研究所、東京情報大学、ガステックと共同で、地熱発電所の冷却塔排気を対象とした環境影響評価(環境アセスメント)のための技術ガイドラインを策定し、ウェブサイトに公開した。
地熱発電は時間や天候に左右されず出力が安定しており、ベースロード電源として注目される。日本は世界第3位の地熱資源をもつ一方、環境アセスメントの手続きに3~4年かかることが課題。環境アセスメントの円滑化や開発期間の短縮などを目指し、NEDOは2013年度から「地熱発電技術研究開発」に着手。今回、その中の「冷却塔排気に係る環境影響の調査・予測・評価の手法」に関する3件のガイドラインを策定した。
「地熱発電所の冷却塔から排出される硫化水素の予測手法の基本的な考え方」では、大型のスーパーコンピュータを使う詳細予測数値モデルと簡易予測数値モデルの精度を確認し、2つの予測モデルの使い分けや予測・評価条件を明確化。最適な数値計算の考え方をまとめた。地域特性に応じた環境配慮が可能になる。
「地熱発電所におけるUAVを用いた樹木モニタリング調査手法」では、現行の目視モニタリング調査で行う評価の客観性と調査時間・労力の問題に対し、UAV(ドローン)によるマルチスペクトルカメラ画像から植生指数を算出し、植物の状態を客観的かつ迅速に確認する作業手順・分析方法をまとめた。広範囲を短時間で、また樹木のわずかな活力差も検出でき、影響の有無をより詳細に把握できる。
「地熱発電所の新設・更新に係る冷却塔から排出される蒸気による樹木への着氷影響に関する環境配慮」では、樹木への着氷の詳細は不明で予測評価手法もないため、着氷成長率の定量的予測手法を開発し、着氷発生の気象条件の目安とその範囲の予測手法を提示。着氷の発生リスクや影響範囲を把握し、適切な環境配慮が検討できる。
今後NEDOは、同ガイドラインが環境アセスメントの円滑化や開発期間や費用の低減など、地熱事業の推進に活用されることを目指す。電力中央研究所は、硫化水素や着氷影響の予測精度の向上・高度化の研究開発を引き続き行う予定だ。
2021年4月15日
NEDOは13日、安心安全なドローン基盤技術開発に関する記者説明会を開き、プロトタイプを公開した。
ドローン市場は急拡大しており、2025年の国内市場は5000億円規模になり、特に災害時の被災状況調査や監視・捜索などの政府・公共部門を始め、老朽化するインフラの点検、スマート農業や物流などの産業用途が9割近くを占めると予測される。
一方、小型ドローン(重量2kg以下)の8割は中国製で、撮影画像や飛行ルートなどの “NEDO 安全安心なドローン基盤技術開発で実機を公開” の続きを読む
2021年3月10日
NEDOはこのほど、事業成果を集約し、各装置がもつ加工品質の計測・評価技術やデータベースといった共通基盤技術を組み合わせることで、レーザー加工の課題解決に寄与する「柏Ⅱプラットフォーム」を構築した。
NEDOが実施中のプログラム「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」(2016~2020年度)では、東京大学、産総研、三菱電機、スペクトロニクス、大阪大学、浜松ホトニクス、パナソニック、パナソニック スマートファクトリーソリューションズ、金門光波、千葉工業大学、レーザー技術総合研究所、ギガフォトン、島津製作所などが参画し、様々な特徴をもつ、最先端のレーザー光源・加工機を開発してきた。
特に、難加工材の高品位加工を目指した今までにない短波長の高輝度レーザー加工機や、広範囲の焼き入れ加工などを可能とする高出力半導体レーザー、銅のマイクロ溶接などで期待される高出力高輝度青色半導体レーザー、加工や計測用途に期待される短波長ファイバーレーザーは、同プロジェクトで新たに開発した技術として早期実用化を進めるとともに、今回構築した加工プラットフォームで幅広くユーザーを掘り起こしていく。
NEDOと13法人は今後、レーザー加工に関する産学官協創のために東京大学が設立した「TACMIコンソーシアム」と連携し、様々な材質、用途での加工事例を蓄積していくことで、同プラットフォームの機能向上に取り組む。これにより各種装置の特性とユーザーニーズの効率的なマッチングや装置横断的な加工データ取得を実現し、効率的かつ迅速な最適加工条件の探索が可能なものづくりの実現を目指すとともに、日本の競争力強化に貢献していく。
2021年3月1日
旭化成ファーマ、NEDO、産総研は25日、植物や微生物の細胞を用いて高機能品を生産するスマートセル技術を活用し、体外診断用医薬品の原料となる酵素「コレステロールエステラーゼ」の 生産効率向上に成功したと発表した。
今回構築したスマートセル は、従来の微生物(野生株)と比べ30倍以上の生産能力を持つ。これにより、生産工程における電力消費量も低減できるため、CO2排出量を年間約23t削減(従来比約9.6%削減)する効果も期待できる。
病院での診察や健康診断では、多くの体外診断用医薬品が使用されている。その1つである生化学検査試薬は大半が 酵素を主な原料としており、酵素の働きを用いて体内の物質の濃度を測定する。
血中コレステロールを測定するコレステロールエステラーゼは、微生物のバークホルデリア・スタビリスなどから菌体外に分泌・生産されることが知られている。ただ、この野生株における分泌は複雑に制御されていることから、従来法に基づいた大腸菌を宿主とした遺伝子組換え技術による高生産化は困難。
野生株を育種する古典的な方法での高生産化が試みられてきたが、生産量は野生株の約2.8倍までしか上昇させることができず、国際競争力があり低コストで高い生産効率が見込まれる新たな技術の開発が求められていた。
こうした中、3者は2016年度から、生物細胞が持つ物質生産能力を人工的に最大限まで引き出し、最適化した細胞(スマートセル)を使って省エネルギー・低コストで高機能品を生産するスマートセルプロジェクトに取り組んできた。
そして今回、新規構成型プロモーターと宿主バークホルデリア・スタビリスの機能改変を組み合わせることで、コレステロールエステラーゼの生産能力を野生株の30倍以上に引き上げたバークホルデリア・スタビリススマートセルを構築することに成功。これにより年間に使用する培養量と製造回数を削減しても従来と同量のコレステロールエステラーゼ生産が可能となった。
旭化成ファーマは今後、このスマートセルで生産したコレステロールエステラーゼを早期に事業化し、高機能な化学品や医薬品原料などを生産する「スマートセルインダストリー」の実現を目指す。
2020年9月24日
出光興産はこのほど、同社が提案する「風力発電機の長寿命化に向けたマルチスケールトライボ解析・実験による最適潤滑剤設計」が、NEDOの助成事業として採択されたと発表した。
潤滑剤の性能(耐摩耗性・長期安定性)向上を図り、洋上風車の軸受や歯車で使用する潤滑剤の平均交換頻度を現状の5年から15年へと3倍に延長することで、機械の長寿命化を実現する新技術開発を行う。なお、事業期間は、2020~2022年度の3年間。
NEDOの「風力発電等技術研究開発/風力発電高度実用化研究開発/風車運用・維持管理技術高度化研究開発」事業では、日本の洋上風力発電の導入拡大に向け、国内風車のダウンタイムと運転維持コストの低減、さらに発電量向上を目指した技術開発を行うことで発電コスト低減を目指すもの。今回の事業では、洋上風車の運転維持コストを低減する各コア技術の開発を目的とする。
同社は、「風車運用・維持管理技術高度化研究開発」事業の中で、兵庫県立大学および岡山大学と協働し新技術開発として、洋上風車の軸受や歯車のメンテナンスフリー化に寄与する潤滑剤の最適な分子構造の創出と実証を行う。
新技術開発は、これまで潤滑剤開発で培ってきた基材最適化技術・評価方法をベースにし、そこに兵庫県立大学のシミュレーション技術とMI(マテリアルズインフォマティクス)技術を駆使したスーパーコンピューターによる大規模実証計算を利用。データに基づく理論的根拠による最適な基材の分子構造や潤滑剤の組成を予測する。基材候補には、両大学で開発した、摩擦・摩耗の低減に寄与する複数の新材料(トライボナノマテリアル添加剤)も対象に加える。
出光興産は、これまでも技術立脚型のグローバル潤滑油メーカーとして新しい価値創造に取り組んできた。今回の採択を受け、洋上風力発電の導入拡大に向けた日本発の新技術開発をさらに推進する考えだ。
2020年8月28日
出光興産はこのほど、NEDOが実施する「太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の長期安定電源化技術開発」事業について、100%子会社のソーラーフロンティアが提案する「結晶シリコン及びCIS太陽電池モジュールの低環境負荷マテリアルリサイクル技術実証」が共同研究事業として採択されたと発表した。
使用済み太陽電池(PV)モジュールは、2030年代から急激に増加することが予想されている。こうした背景から、ソーラーフロンティアでは、低コストかつ環境負荷の低いリサイクル技術の確立が重要であると捉え、継続的にCIS薄膜太陽電池モジュールのリサイクル技術開発を進めてきた。
昨年度に取り組んだ、NEDOとの共同研究事業では、これまでの研究開発や技術実証で確立した低コスト分解処理技術をベースとして、CIS薄膜太陽電池モジュールの全ての部材に関するリサイクル用途を明確にし、マテリアルリサイクル(MR)率を約90%まで向上させるめどをつけた。
今回、採択されたNEDOとの共同研究事業では、昨年度の研究開発で確立した技術を、より低コストで環境負荷の低いリサイクル技術へと進化させていく。
具体的には、4年間(2020~2023年度)で、CIS薄膜太陽電池に加えて、結晶シリコン系太陽電池のリサイクル技術開発にも取り組み、分離処理コストをCIS薄膜太陽電池、結晶シリコン系太陽電池を問わず3円/W以下、MR率を90%以上とすることを目指す。
同社の生産拠点である国富工場(宮崎県)に、市販サイズのモジュールを処理する実証プラントを構築し、最終年度までには目標としたリサイクル技術を連続運転により実証する予定。同研究開発では宮崎県工業技術センターや宮崎大学とも協働することで、リサイクル技術の開発をさらに加速させる。
出光興産は中期経営計画の中で、重点課題の1つである「次世代事業の創出」の主な取り組みにサーキュラービジネスを掲げ、その一環としてPVモジュールのリサイクル技術開発を推進している。この計画の下、ソーラーフロンティアはリサイクル市場の拡大に備え、より低コストかつ環境負荷の低いリサイクル技術開発を行い、主力電源としての太陽光発電のさらなる普及拡大と持続可能な社会の実現に向けて貢献していく考えだ。
2020年8月7日
宇部興産はこのほど、名古屋大学と共同で、NEDOの「廃プラスチックを効率的に化学品原料として活用するためのケミカルリサイクル技術の開発」委託事業の公募に対し、「複合プラスチックの高度分離技術開発」を提案し採択されたと発表した。なお同事業の委託期間は2020年度末まで。
今回採択された技術は、包装用多層フィルムなどに代表される複合プラ製品を成分別に分離するもの。同技術により複合プラスチック廃棄物から単一のプラスチックを得て再生するマテリアルリサイクル技術の開発を目指す。
また、採択された技術は、低エネルギーかつ安価なコストで成分を分離できる可能性があり、革新的なリサイクル技術として資源使用量や温室効果ガス(GHG)排出量の削減に高い効果が期待される。
今回の事業採択を受け、新規分離技術の開発を産学の協働により加速するとともに、社会実装を見据え対象となる廃棄物の調査と処理プロセス適用時のLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)評価を行っていく。
宇部興産グループは、「UBEグループ環境ビジョン2050」を定め、自然と調和した企業活動の推進に取り組み、2050年までにGHG排出量の80%削減を目指している。また、中期経営計画の基本方針の1つとして「資源・エネルギー・地球環境問題への対応と貢献」を掲げており、さらなるGHG排出量の削減や、環境負荷低減に貢献する新たな技術・製品の創出と拡大に取り組んでいく考えだ。
2020年8月7日
出光興産はこのほど、同社が提案する「フィルム型超軽量モジュール太陽電池の開発(重量制約のある屋根向け)」および「移動体用太陽電池の研究開発」の2件が、NEDOの「太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の新市場創造技術開発」事業の共同研究事業として採択されたと発表した。事業期間は、2件とも5年間(2020~2024年度)。
NEDOの「太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の新市場創造技術開発」事業は、太陽光発電の主力電源化推進を目的に従来の技術では太陽光発電の導入が進んでいない場所(重量制約のある屋根、建物壁面、移動体向けなど)に必要とされる性能を満たし、各市場の創出・拡大に資する技術開発を目指すもの。
新技術開発は、100%子会社のソーラーフロンティアが生産・販売する「CIS太陽電池」(銅・インジウム・セレンを材料とする化合物系の太陽電池)の技術を応用する。
出光興産はこれまでも次世代太陽電池の開発に取り組んできた。今回の事業採択を受け、太陽電池の設置場所拡大へ向けた新技術開発をさらに推進していく。
2020年7月21日
ユニチカはこのほど、長瀬産業と共同提案した「有機溶剤回収の省エネルギー化を目指した耐溶剤性分離膜プロセスの開発」が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2020年度「戦略的省エネルギー技術革新プログラム/実用化開発」の助成事業に採択されたと発表した。実施期間は、2020年7月~2023年2月。両社のほかに、神戸大学とナガセテクノエンジニアリングが参画し、ユニチカが開発したナイロン中空糸ナノろ過膜「WINSEP NF」の実用化を目指す。
有機溶剤の分離・濃縮に多用される蒸留法は、エネルギー消費の大きいプロセスのため、蒸留に由来するCO2排出量は国内化学産業のCO2排出量の40%に達し、日本のCO2排出量の約4%を占めている。蒸留に使うエネルギーを低減させる方法として、熱交換器による熱回収などがあるが、所要エネルギーを数割減らす程度で、抜本的な解決には至っていない。
一方、膜分離法は相変化を伴わない分離法であり、蒸留法と比べ100分の1~1000分の1もの大幅な省エネ化が可能になる。しかし、海水淡水化などの水処理分野では広く実用化されているものの、水処理用の膜は耐溶剤性がなく、有機溶剤分離には利用できなかった。
こうした中、ユニチカは耐溶剤性が高いナイロンに着目。研究を進めた結果、幅広い有機溶剤に耐性をもつナイロン中空糸ナノろ過膜「WINSEP NF」の開発に成功した。
今回の助成事業では、同開発品の実用化へ向けて、長瀬産業らとの共同開発を進めていく。「WINSEP NF」の特長は、①均質かつ緻密な孔形成により高い強度をもつ②溶液中に溶解した分子量1000程度の物質も分離する③フェノール類、含ハロゲン系溶媒を除く幅広い有機溶剤に使用可能で、トルエン、酢酸エチル、メタノールなどの溶剤系で安定的に膜分離できる―ことが挙げられる。
同開発品は、例えば電子産業、化学産業の分野で多量に排出される有機溶剤の回収再利用や、医薬・農薬産業の分野で生理活性物質を熱により失活させることなく濃縮したいといったニーズに応えられる可能性がある。幅広い有機溶剤で使用できることから、NEDO助成事業では具体的な用途を想定し、様々な分野での実用化に向けた研究開発を進めていく考えだ。