昨年を振り返えると、いくつかの甚大な被害をもたらした自然災害の発生があった。6月の大阪北部地震、6月末から7月初めには西日本豪雨が続き、9月に入ると近畿地方に上陸した台風21号と和歌山から本州を縦断した台風24号により大きな被害を受けることとなった。さらに、9月の北海道胆振東部地震は甚大な人的被害とともに、日本最初のブラックアウトを引き起こし、北海道経済は大きな打撃を受けた。被災地の皆様に心からお見舞いを申し上げるとともに1日も早い復興を願わずにはいられない。
さて、世界経済をみると「米国第一主義」を掲げるトランプ政権と、中国や欧州など世界の主要国との政治・経済摩擦が顕著となり、さらに中東や北朝鮮情勢に起因する地政学リスクは、株式や原油価格の乱高下をもたらしている。
また、12月に発生したフランスでの反マクロン政権に対するデモの暴徒化はポピュリズムの危うさを裏付けており、これらの混乱が世界経済の下振れを引き起こすことを危惧している。特に、米中の貿易摩擦は単に2国間だけの問題ではなく、サプライチェーンが繋がる各国に影響が出てきており、スマートフォン関連分野や自動車販売についても陰りが出始めてきている。
一方で、国内に目を転じれば、今年10月の消費税率引き上げに伴う消費の冷え込みが懸念されるものの、消費税実施前の駆け込み需要や、来年の東京オリンピック・パラリンピックの準備も佳境に入り、これに伴う需要拡大も見込まれるところだ。
こうした中、国内の石油化学業界の状況は、底堅い国内需要にも支えられ比較的堅調に推移している。特に、エチレン設備の稼働率は、2013年12月以降60カ月連続で90%超を維持しており、ここ3年では、ほぼ九五%を超えている状況だ(昨年十一月までの実績)。
しかしながら、設備の高稼働が継続しているときこそ、安定供給責任を果たすため、これまで以上に保安・安全の確保が重要となってきており、また、エチレン装置の高経年化が確実に進展する中で国際競争力を維持・向上していくためには、これまで以上に様々な努力を傾注していくことが不可欠となっている。
石油化学産業は、日本の「ものづくり」におけるサプライチェーンの出発点であるとともに、自動車・電機などの分野での先端技術開発に不可欠な機能性素材を創出している。つまり石油化学産業の強化は、日本の「ものづくり」の強化につながるため、会員各社とともにその自覚と誇りをもって事業の発展、競争力の強化に取り組んでいるところだ。
このような状況下、当協会としては石油化学業界の持続的発展に向け、①保安・安全の確保(経営層の強い関与、安全文化の醸成、IoT・AIの活用、産業保安に関する行動計画の策定)②事業環境の基盤整備(イコールフッティング、定期修理工事の課題などに関する検討)③グローバル化対応の強化(アジア石油化学工業会議、環境問題、海外の情報収集など)といった諸課題に積極的に取り組んでいく。