帝人は4日、航空機のエンジン関連部材などをターゲットに、高い耐熱性と耐衝撃性を兼ね備えたビスマレイミド(BMI)系プリプレグを開発したと発表した。プリプレグは、炭素繊維シートに樹脂を含侵したもので、炭素繊維複合材料(CFRP)の中間材料として使用される。
開発品の最大の特長は、BMI系樹脂を使用しながらも、高耐衝撃性を付与した国内初の技術にある。BMI系樹脂は、一般的に耐熱性を向上させると耐衝撃性が低下し非常に脆くなるため、衝撃を受けた際に発生する炭素繊維層と樹脂層の剥離やクラック(亀裂)など、CFRPの損傷が問題となっていた。加えて、流動性が高く、成形が困難な場合があった。
そこで、同社が培ってきた技術をもとに樹脂組成を適正化。ガラス転移温度が280℃以上、衝撃後圧縮強度が220MPa以上と、これまで世界的に難しいとされてきた高次元での耐熱性と耐衝撃性の両立を実現した。また、線膨張係数が小さく、低温・高温のいずれの状態でも優れた寸法安定性を維持・発揮できる。さらに、樹脂粘度を調整することでレジンフロー(成形工程での加圧によりプリプレグ中の樹脂が流れ出す現象)を適度に制御し、BMI系樹脂を使用した従来のプリプレグに比べて成形性を向上させるとともに、硬化処理に要する成形時間の短縮にも成功した。
同社は、未来の最新鋭航空機に求められる技術として、炭素繊維原糸から織物基材、熱可塑性樹脂を使用した中間材料などの用途開発やラインアップ拡充と、これらを活用した市場展開を強力に推進している。今回の新開発品・熱硬化性プリプレグを加え、さらには先月に買収を発表した、航空機向け耐熱複合材料事業を展開する米国レネゲード社のノウハウを活用し、航空機のエンジン部品など、高温下での用途に向けたグローバル展開を加速していく考え。
今後もマーケットリーダーとして、川上から川下までのソリューション提案力をいっそう強化し、2030年近傍までに航空機用途で年間9億ドル超の売上を目指す。