三井化学と名古屋大学はこのほど、ヒトの眼に近い眼球モデルを搭載した眼球手術訓練シミュレーター「Bionic‐EyE」が、2019年度グッドデザイン賞(主催:日本デザイン振興会)を受賞したと発表した。高い技術に加え、医療従事者の技術向上や、将来的な医療用ロボットの性能向上への貢献が高く評価された。
同シミュレーターは、東京大学と共に行った、内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)によるオープンイノベーションで開発。三井化学の材料技術と、名古屋大学未来社会創造機構・新井史人教授と小俣誠二特任助教の精密工学技術に、東京大学眼科教室・相原一教授の医学的知見や、東京大学工学研究科・光石衛教授と原田香奈子准教授の医療ロボット技術を組み合わせた。
ヒトの眼球の特性を研究し、材料を層状に構成することで、数ミクロンの非常に繊細な組織である白目の感触を忠実に再現。難易度の高い緑内障の手術スキルを画期的に向上させることに貢献している。
緑内障は失明原因の第1位。患者が増加する中、緑内障手術時の白目の薄切りと縫合という難易度の高い手術には、若手医師の早期育成が喫緊の課題となっている。従来の訓練では、ヒトの眼球より硬いブタの眼球を使用するなど、訓練の有効性や衛生面、動物愛護の観点からも問題があった。