神戸大など 糖で微生物を制御しポリマー原料生産向上

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2020年1月24日

PMPE技術による大腸菌を用いたモノづくりのイメージ図
PMPE技術による大腸菌を用いたモノづくりのイメージ

 神戸大学などの研究グループは、糖を使い分けることで微生物の増殖と物質生産を独立してコントロールする「Parallel Metabolic Pathway Engineering(PMPE)」という新しい技術を開発し、ナイロンの前駆体となるムコン酸の生産性向上に成功した。

 神戸大学大学院工学研究科の藤原良介博士後期課程学生(日本学術振興会特別研究員DC1)、田中勉准教授、理化学研究所環境資源科学研究センターの野田修平研究員らの研究グループは、科学技術振興機構(JST)などの助成を受け新技術の開発に取り組んだ。

 同研究では、食糧生産と競合しないリグノセルロース系バイオマスの、主な加水分解物の糖であるグルコースとキシロースに着目。このグルコースをモノづくりに、キシロースを微生物の増殖に使えるような代謝デザインを施した大腸菌を構築した。

 微生物を利用したモノづくりでは、原料が微生物自身の増殖などに利用されるため目的生産物の生産性が低下する一方、増殖を制限すると微生物が弱り全体の生産量が減るという問題がある。これは、通常の微生物では、取り込んだグルコースとキシロースを1つの代謝系で代謝し、目的物質を生産すると同時に微生物が生きるために使用するため。

 そこで、PMPE技術では、微生物の代謝を2つに分けて糖代謝を独立させることにより、グルコースは全て目的物質の生産に、キシロースは微生物の生育・維持のために使われるようにした。グルコースは生育・維持のためには一切使われないため、収率を大きく向上させる。

 同研究では、改変した大腸菌にムコン酸生産経路を導入し、グルコースとキシロースからムコン酸生産を行い、最終的にムコン酸を4.26g/ℓ生産することに成功した。その収率(理論上の最大収量に対する実収量)は世界最高値となる、1gのグルコース当り0.31gとなった。

 さらに、PMPE技術の他の目的生産物への応用を検討した結果、芳香族化合物であり必須アミノ酸でもあるフェニルアラニンや、食品や医薬品の添加剤として用いられる1,2‐プロパンジオールの生産性を向上することにも成功。PMPE技術が様々な物質の生産性・収率の向上に有効であり、汎用性の高い技術であることを示した。

 糖を使い分けさせることで微生物の代謝を制御するPMPE技術により、さまざまな糖類が混在する実バイオマスの有効利用にも大きく貢献できると考えられている。