富士フイルム バイオ医薬品能力を増強、英国を拠点に投資

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2020年3月31日

 富士フイルムはこのほど、バイオ医薬品の生産能力を拡大するため、バイオ医薬品CDMO(医薬品開発製造受託)の中核会社FUJIFILM Diosynth Biotechnologies(FDB)の英国拠点に約90億円を投じて製造設備を増強すると発表した。同設備は、微生物培養によってバイオ医薬品の原薬を製造するためのもので、2022年以降の稼働を予定している。

 バイオ医薬品は、副作用が非常に少なく高い効能が期待できることから、医薬品市場に占める割合が高まっている。現在、バイオ医薬品には、ホルモン製剤や抗体医薬品、遺伝子治療薬などがあり、それぞれの製造には、微生物培養や動物細胞培養、ヒト細胞培養などが用いられる。ただ、非常に高度な生産技術と設備が必要とされるため、製薬企業やバイオベンチャーは優れた技術と設備を持つCDMOにプロセス開発や製造を委託するケースが急増している。

 富士フイルムは、バイオ医薬品のプロセス開発や製造の受託拡大に向け、高効率・高生産性の技術開発に加えて積極的な設備投資を推進。現在、FDBの米国拠点に動物細胞培養タンクやヒト細胞培養設備など大規模投資を行い、抗体医薬品や遺伝子治療薬の受託能力を増強している。また、微生物培養によるバイオ医薬品市場についても、30年以上にわたる受託実績と、業界トップクラスのたんぱく質産生効率などを実現する高生産性技術「pAVEway(ペーブウェイ)」を強みに受注を拡大させている。

 今回、同社は、新規顧客からの生産要請に加え、既存顧客からの増産要請にも対応するため、FDBの英国拠点に設備投資を行い、微生物培養によるバイオ医薬品の原薬の製造設備を増強する。具体的には、2000リットル微生物培養タンク(2基)や精製設備などを備えた製造ラインを新設。さらに、既存製造ラインのユーティリティ設備や精製プロセス設備なども増強することで、生産量を大幅に向上させる。

 なお、今回の設備投資により、英国拠点では、微生物培養による原薬の生産能力が、現状比約3倍となる。同社は、ホルモン製剤や抗体医薬品、遺伝子治療薬、ワクチンなどあらゆる種類のバイオ医薬品の生産プロセスを開発し、少量生産から大量生産、原薬製造から製剤化まで受託できる強みを生かして事業成長を図り、2021年度にバイオCDMO事業で売上高1000億円を目指す。