富士フイルムはこのほど、薬剤を患部に届けるドラッグ・デリバリー・システム(DDS)技術を応用したリポソーム製剤の開発・製造受託サービスを開始すると発表した。
また、同サービスの対象を、低分子医薬品のみならず、次世代医薬品として期待されている核酸医薬品にも広げるため、核酸を内包するリポソーム製造装置の開発・製造・販売のリーディングカンパニーであるカナダのPNI社とパートナーシップ契約を締結。今後、低分子医薬品や核酸医薬品をターゲットに、リポソーム製剤の生産プロセス開発や製造の受託を行っていく。
リポソーム製剤は、細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質などをカプセル状にした微粒子(リポソーム)の中に薬剤を内包した製剤。生体内の血中での薬剤の安定性を向上させ、さらにリポソームの素材を工夫することで細胞膜を透過させ細胞内まで薬剤を効率的に届けることが期待できるため、低分子医薬品のみならず核酸医薬品への応用研究が活発化している。
同社は、幅広い製品開発で培い進化させてきた、高度なナノ分散技術や解析技術、プロセス技術を生かして、既存抗がん剤を均一な大きさのリポソームに安定的に内包する製法を確立。現在、その製法を応用したリポソーム製剤の臨床第Ⅰ相試験を米国で進めている。
また、富士フイルム富山化学では、国内で初めて商業生産に対応したリポソーム製剤工場「701工場」を建設し、今年2月に稼働させた。今回、富士フイルムは独自リポソーム製法や「701工場」を生かして、低分子医薬品を対象としたリポソーム製剤の生産プロセス開発や製造の受託を開始する。
また、「701工場」にPNI社のリポソーム製造装置「NanoAssemblr Platform」を導入。同装置とリポソーム製剤の基盤技術を組み合わせた受託基盤と、同装置のラボ機が世界中で導入されている、PNI社の顧客基盤などを活用して、核酸医薬品を対象としたリポソーム製剤の生産プロセス開発や製造を受託していく。
今後、富士フイルムは、低分子医薬品や核酸医薬品の分野で、顧客が求めるリポソーム製剤の最適な生産プロセスから治験薬製造・商業生産までの受託に対応し、ビジネス拡大を図っていく。