島津製作所 1時間で判定、新型コロナ検査キット発売

,

2020年4月17日

 島津製作所はこのほど、開発を進めていた「新型コロナウイルス検出試薬キット」を4月20日に発売すると発表した。当面は国内のみの販売だが、5月以降の海外輸出も視野に入れて準備を進めていく。

新型コロナウイルス検出試薬キット
新型コロナウイルス検出試薬キット

 同キットの最大の特長は、煩雑な手作業を省いたことによる検査時間の大幅な短縮にある。また、手作業を行わずに済むため、人為的なミスの防止にもつながる。現状の遺伝子増幅法(PCR法)による新型コロナウイルス(SARS‐CoV‐2)の検出では、鼻咽頭拭い液などの試料(検体)からRNAを抽出して精製する煩雑な作業が必要であり、これが多数の試料を迅速に検査する際の妨げになっている。

 同キットではRNAの抽出・精製工程が省けるため、検査に要する人手を大幅に削減でき、かつ2時間以上かかっていたPCR検査の全工程を従来の半分である約1時間に短縮できる。96検体用PCR装置を用いて、96検体を検査した場合でも1時間半以内で行える。

 「新型コロナウイルス検出試薬キット」は、同社独自のAmpdirect技術をベースに国立感染症研究所の「病原体検出マニュアル 2019‐nCoV」に沿って開発。同技術は、生体試料に含まれるたんぱく質や多糖類などのPCR阻害物質の作用を抑制できるため、DNAやRNAを抽出・精製することなく、生体試料をPCRの反応液に直接添加できるもの。

 島津製作所は同技術を用いて、腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌、赤痢菌、ノロウイルスなどの病原体検出試薬を開発・販売しており、これまでに培った技術を応用し新型コロナウイルス検出試薬の開発を行った。誤操作などにより、陽性にもかかわらず遺伝子増幅が起きなかった場合に誤って陰性と判断しないよう、同キットの反応液には、増幅工程が正しく進んだことを確認するための参照成分を添加。これにより、偽陰性が生じる可能性を低減し、検査結果の精度向上が期待されている。

 なお、同キットの使用には、PCR装置や分注ピペット、恒温槽、小型遠心機をはじめとする機材や、試料・遺伝子の取り扱い技術を要するため、ドラッグストアなどの小売店や個人への販売予定はない。価格は、22万5000円(100検体分/キット、税抜き)。月間生産量は10万検体分。