中国の自動車生産回復も、需給悪化が解消されず
ブタジエン(BD)のアジア市況は、足元330~400ドル程度で取引されている。スポット・ナフサの市況が300ドル後半にまで上昇しているため、事業環境は一段と厳しさを増している状況だ。
BD市況は、昨年12月に米中貿易交渉が一部合意されたことを受け、2月の初めまでは900ドルを維持していた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大による世界景気の後退に加え、原油価格が急落したこともあり2月中旬以降は一気に下げ足を速めた。4月第5週の下値280ドルを底にやや持ち直したが、その後は300~400ドルで膠着状態となっている。
BD市況が低迷している背景として、アジア地域ではもともと供給過剰が続いていたことに加え、中東や欧州などから域外品の流入が強まったことや、域内では大型の石化設備も立ち上がってきたことが挙げられる。こうした中、コロナ禍からいち早く脱した中国市場では、汎用品の需要が強まりエチレンやプロピレンの市況が高騰。収益確保のため各社のクラッカーが高稼働となっているため、必然的にBDの供給量を増やす結果となった。需要家も先安観から買いに動かず、様子見状態を続けているようだ。
一方、需要は盛り上がりを欠く。BD需要の約7割を占める合成ゴムは、自動車向けが中心となるが、自動車生産が落ち込みタイヤ用途などは引き合いが弱い。ロックダウン(都市封鎖)が解除された中国では、自動車の生産・販売が、4月以降は前年同月比プラスで推移するなど回復傾向を強めてきたが、部材までにはまだ波及していないもようだ。
それに対し、ABS樹脂向けは、政府が景気刺激策を打ったことで家電向けなどの需要が戻りつつある。とはいえ、合成ゴムをカーバーするほどではなく、全体的に見れば力強さがない。供給増加が止まらない中、需要低迷が続くことで、BD市況はしばらく低水準で推移するとの見方が強まっている。