日本ゼオンなど バイオマスからブタジエンを生成、新技術を共同開発

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2021年4月14日

 日本ゼオンはこのほど、横浜ゴム、理化学研究所(理研)と共同で設置している「バイオモノマー生産研究チーム」の研究により、バイオマス(生物資源)から効率的にブタジエン(BD)を生成できる世界初の新技術を開発したと発表した。

バイオマスからブタジエンを生成
バイオマスからブタジエンを生成

 主に自動車タイヤなどの合成ゴムの主原料であるBDは、現在、ナフサ熱分解の副生成物として工業的に生産されている。バイオマス由来BD生成技術を確立すれば、石油依存度の低減に繋がり、地球温暖化の原因とされるCO2の削減に貢献できる。

 日本ゼオンは2013年より、理研(環境資源科学研究センター)、横浜ゴムとの共同研究で、バイオマスから合成ゴム原料のモノマーを生成できる技術を培ってきた。昨年4月には、理研の「産業界との融合的連携研究制度」を利用して、社会実装に向けた研究を加速させるため「バイオモノマー生産研究チーム」を設置。さらなる高生産酵素と効率的な精製技術確立に向けて各々の知見・技術を有機的に融合して研究を進めてきた。

 今回、同チームは新しい人工代謝経路と酵素で、優れたBD生成能をもつ細胞の創製に成功。これにより、微生物によるバイオ合成から生成されるムコン酸を中間体として経ることが可能となり、また、これまで開発してきた酵素の知見を取り入れることでBDの発酵生産でのコストを大幅に削減することが期待できる。

 これらの成果が今回、ロンドンを拠点とし生物学、化学などの分野の研究論文が掲載されているオンライン専用ジャーナル「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載される。

 なお、「バイオモノマー生産研究チーム」は、同じく合成ゴムの主原料であるイソプレンについても、2018年に、世界初となる新しい人工経路の構築と高活性酵素の作成により優れたイソプレン生成能をもつ細胞を創製。この細胞内で出発原料であるバイオマス(糖)からイソプレン生成までを一貫して行うことに成功している。ゼオングループはこれからも産官学の垣根を超えた研究に積極的に取り組み、「持続可能な開発目標(SDGs)」達成に貢献していく考えだ。

ブタジエン市況 4月以降は300~400ドルで推移

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2020年7月13日

中国の自動車生産回復も、需給悪化が解消されず

 ブタジエン(BD)のアジア市況は、足元330~400ドル程度で取引されている。スポット・ナフサの市況が300ドル後半にまで上昇しているため、事業環境は一段と厳しさを増している状況だ。

 BD市況は、昨年12月に米中貿易交渉が一部合意されたことを受け、2月の初めまでは900ドルを維持していた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大による世界景気の後退に加え、原油価格が急落したこともあり2月中旬以降は一気に下げ足を速めた。4月第5週の下値280ドルを底にやや持ち直したが、その後は300~400ドルで膠着状態となっている。

 BD市況が低迷している背景として、アジア地域ではもともと供給過剰が続いていたことに加え、中東や欧州などから域外品の流入が強まったことや、域内では大型の石化設備も立ち上がってきたことが挙げられる。こうした中、コロナ禍からいち早く脱した中国市場では、汎用品の需要が強まりエチレンやプロピレンの市況が高騰。収益確保のため各社のクラッカーが高稼働となっているため、必然的にBDの供給量を増やす結果となった。需要家も先安観から買いに動かず、様子見状態を続けているようだ。

 一方、需要は盛り上がりを欠く。BD需要の約7割を占める合成ゴムは、自動車向けが中心となるが、自動車生産が落ち込みタイヤ用途などは引き合いが弱い。ロックダウン(都市封鎖)が解除された中国では、自動車の生産・販売が、4月以降は前年同月比プラスで推移するなど回復傾向を強めてきたが、部材までにはまだ波及していないもようだ。

 それに対し、ABS樹脂向けは、政府が景気刺激策を打ったことで家電向けなどの需要が戻りつつある。とはいえ、合成ゴムをカーバーするほどではなく、全体的に見れば力強さがない。供給増加が止まらない中、需要低迷が続くことで、BD市況はしばらく低水準で推移するとの見方が強まっている。