ユニチカはこのほど、長瀬産業と共同提案した「有機溶剤回収の省エネルギー化を目指した耐溶剤性分離膜プロセスの開発」が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2020年度「戦略的省エネルギー技術革新プログラム/実用化開発」の助成事業に採択されたと発表した。実施期間は、2020年7月~2023年2月。両社のほかに、神戸大学とナガセテクノエンジニアリングが参画し、ユニチカが開発したナイロン中空糸ナノろ過膜「WINSEP NF」の実用化を目指す。
有機溶剤の分離・濃縮に多用される蒸留法は、エネルギー消費の大きいプロセスのため、蒸留に由来するCO2排出量は国内化学産業のCO2排出量の40%に達し、日本のCO2排出量の約4%を占めている。蒸留に使うエネルギーを低減させる方法として、熱交換器による熱回収などがあるが、所要エネルギーを数割減らす程度で、抜本的な解決には至っていない。
一方、膜分離法は相変化を伴わない分離法であり、蒸留法と比べ100分の1~1000分の1もの大幅な省エネ化が可能になる。しかし、海水淡水化などの水処理分野では広く実用化されているものの、水処理用の膜は耐溶剤性がなく、有機溶剤分離には利用できなかった。
こうした中、ユニチカは耐溶剤性が高いナイロンに着目。研究を進めた結果、幅広い有機溶剤に耐性をもつナイロン中空糸ナノろ過膜「WINSEP NF」の開発に成功した。
今回の助成事業では、同開発品の実用化へ向けて、長瀬産業らとの共同開発を進めていく。「WINSEP NF」の特長は、①均質かつ緻密な孔形成により高い強度をもつ②溶液中に溶解した分子量1000程度の物質も分離する③フェノール類、含ハロゲン系溶媒を除く幅広い有機溶剤に使用可能で、トルエン、酢酸エチル、メタノールなどの溶剤系で安定的に膜分離できる―ことが挙げられる。
同開発品は、例えば電子産業、化学産業の分野で多量に排出される有機溶剤の回収再利用や、医薬・農薬産業の分野で生理活性物質を熱により失活させることなく濃縮したいといったニーズに応えられる可能性がある。幅広い有機溶剤で使用できることから、NEDO助成事業では具体的な用途を想定し、様々な分野での実用化に向けた研究開発を進めていく考えだ。