三井化学はこのほど、2020年「三井化学 触媒科学賞」の受賞者に、ミュンスター大学教授のFrank Glorius博士を決定した。
同氏は、効率的な有機合成反応を実現するための様々な触媒を開発。N複素環カルベン(NHC)配位子にいち早く着目し、金属・NHC錯体を使った選択的なアレーン水素化を実現し、ナノ粒子触媒にも適用できることを明らかにした。さらに、C‐H結合活性化のための触媒開発でも顕著な功績を残し、独創的な可視光フォトレドックス触媒や有機触媒も開発している。最近ではスマートデータ生成の方法や機械学習でも成果を挙げている。
これらの幅広い研究が触媒科学の発展に大きく貢献していることから、今回の受賞に至った。同賞は、三井化学グループが2004年に制定。化学と化学産業の持続的発展への寄与を目的に、世界の触媒科学分野で特に優れた業績のある研究者を表彰している。2005年に第1回の表彰を行っており、今回は第8回目となった。授賞式と記念講演は、新型コロナウイルス感染拡大を鑑み、来年秋の実施を予定している。
なお、「三井化学 触媒科学奨励賞」は2氏が受賞。スタンフォード大学助教授のMatteo Cargnello博士は、触媒構造と触媒活性の関連をこれまでにない精度で解明した固体触媒科学の進展への寄与により受賞。
また、東京大学准教授の岩﨑孝紀博士は、遷移金属アニオンと典型金属カチオンの協調触媒を用いる様々な有機合成反応を開発した点が高く評価された。