研究開発ではMI注力、気候変動への対応も図る
東ソーは10日、都内で経営概況説明会を開催し、業績や事業戦略、研究開発、気候変動への対応などについて方針や考え方などを説明した。
山本寿宣社長は、「コロナ感染拡大により、上期は業績が大幅に悪化した。下期は各製品の需要回復で収益が回復すると見込むがカバーできず、通期では減収減益となる」とし、変動リスクとして、下振れ要因では、コロナ感染の再拡大による需要減少や製品市況の悪化、上振れ要因では、コロナ鎮静化による製品需要の急回復や海外市況の上昇を挙げた。
中期経営計画の基本方針については、「コロナ影響は引き続き不透明であるが、経営方針については変更しない。足元の需要環境を鑑みると、最終年度の数値目標の達成は厳しい状況だ。しかし、目標値と実際の結果を対比して問題点を検証することで課題を明確にし、次のステップに進みたい」との考えを示した。設備投資についても予定通りに計画を実行するが、3年間の累計では1600億円(当初1400億円)に拡大する見込み。300億円を設定しているM&Aについては決定には至っていないものの、バイオ関連を中心に引き続き探索を進めていく。
長期的なテーマであるクロルアルカリ事業の規模拡大については、大型投資となるため慎重に可能性を探っていくとした。具体的な投資案件として、スペシャリティ事業ではクロロプレンゴムのデボトルや臭素のスクラップ&ビルドを示し、半導体関連では需要増に対応して、石英ガラス素材・加工品の増設を検討している。インフラ関連では、倉庫やエチレン船など物流インフラの強化・効率化を挙げた。
研究開発については、新製品の開発加速やMI(マテリアルズ・インフォマティクス)技術構築による材料設計の効率化に注力。MIでは専任スタッフで構成するチームを東京研究センター内に編成しており、今後はスタッフを拡充し2023年度には「MIセンター」を設立すると明らかにした。
また、重点3分野(ライフサイエンス分野、電子材料分野、環境・エネルギー分野)では、SDGsを踏まえた研究を推進しており、新型コロナウイルス検査試薬などの進捗について説明を行った。
オープンイノベーションの取り組みでは、大学との社会連携講座の設置、NEDO助成事業などに積極的に参画している。山本社長は、「今後も研究開発に資源を投入することで、社会が必要とする技術・製品を創出し、世の中を支える素材産業としての責任を果たしていく」考えだ。
一方、気候変動への対応では、CO2削減を重要課題に位置づける。2025年のBAU排出量6%削減(2013年対比)は、省エネ、CO2削減の投資を継続的に行っていくことにより前倒しで達成できる見込み。政府が石炭火力設備のフェードアウトや2025年カーボンニュートラルを宣言したが、「CO2削減・有効利用推進委員会を中心に対応を検討していく」とした。
最後に、来年度について山本社長は「今上期はコロナ影響で販売数量が減少したことが業績に大きく響いた。来年度に関しても、コロナの収束が大きなカギを握ることは間違いない。原燃料価格や製品市況にも当然左右されるが、需給バランスが悪化しないことが重要だ」とした上で、「仮に事業環境が改善し販売数量が戻ってくれば、中計で掲げている目標数値に近づくことができるだろう」との期待を示した。