花王など 使用済み紙おむつの炭素化リサイクル実証実験

, , , ,

2021年2月22日

 花王はこのほど、京都大学と「使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステム」の確立に向け、先月から愛媛県西条市協力のもと実証実験を開始した。使用済み紙おむつを炭素素材へ変換し、CO2排出量削減による環境負荷低減に貢献していく。炭素素材の産業利用を進め、空気・水環境の浄化、植物の育成促進への活用など、地球環境改善につながる研究技術開発を推進する。リサイクルシステムの開発は京都大学オープンイノベーション機構と花王が協力して行い、社会実装は2025年以降を予定している。

 使用済み紙おむつは年間200万トン以上が主に焼却処理され、燃えるごみの4~6%を占める。多くの水分を吸収しており、焼却炉の燃焼効率悪化の原因となるケースもある。今後、高齢化による大人用紙おむつの使用量増加に伴い、有効なリサイクル技術の確立が期待されるが、①衛生面と重くかさばることから頻繁な回収が必要、②構成材(パルプと多種のプラスチック)の分離が困難、といった課題がある。

 今回、使用済み紙おむつを回収前に炭素化する「炭素化装置」を開発する。低温・短時間で効率的に炭素化し、殺菌・消臭しながら体積を減らすのがポイントだ。衛生課題が解決し体積が減るため、回収頻度を減らせる。炭素化するため、焼却処理によるCO2発生を削減し環境負荷低減につながる。また、炭素化物は活性炭などの炭素素材への変換を目指す。

 先月から使用済み紙おむつを発生する保育施設(1カ所)におむつ処理装置を設置し、発生するごみの量や作業量、継続性など現場の運用面の課題を確認している。同時に、おむつ処理装置を基に炭素化装置の開発を進める。4月以降に開発した炭素化装置を設置し、炭素化物を回収する。容積が小さいため回収頻度は月1~2回と少なく、回収後は環境浄化や保育施設の園庭での植物育成促進に活用する。

 なお、子育て支援の一環として、花王は同保育施設にベビー用紙おむつ「メリーズ」を提供し、保護者・保育士の負担軽減を見込む。

 「使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステム」を確立することで、使用済み紙おむつリサイクルの課題を解決し、炭素化素材を産業利用する。そうすることで、リサイクルとCO2削減、プラスチックごみ問題の解決など地球環境改善、SDGs達成に向け貢献していく。