米国寒波で複数プラントが停止、需給がタイト化
ウレタン原料であるMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)は、2月に米国で発生した寒波によるプラント停止の影響が波及し、アジアのスポット市況が急騰している。足元の市況はモノメリック3400ドル/t、ポリメリック3300ドル/tとなっており、特にポリメリックはトラブル要因などで高騰した昨年11月の水準以上になっている状況だ。
MDIは昨年、コロナ禍の影響を受けた4-6月期の需要は大きく減退したものの、中国の経済活動の再開に伴い、年後半には回復傾向を強めた。こうした中、大手メーカーの稼働調整や定修要因に加え、欧米メーカーにトラブルが発生したことにより、秋には需給バランスが一気にタイト化。低迷していた市況が、11月には、モノメリックで3500ドル/t、ポリメリックは2700ドル/tにまで急騰した。その後、定修やトラブルといった要因が解消されたことで、1月にかけて市況は弱含みとなった。
しかし、2月に入り、石油・石化プラントが集積しているテキサス州やルイジアナ州に大寒波が襲来。停電や断水などが発生したことで各社のプラントも停止を余儀なくされ、MDIメーカーも供給が困難になったことからフォースマジュールを宣言した。この事態を受け、中東メーカーなどがアジアに輸出していた玉を欧米地域に振り替えたため、アジア市場が再びタイト化しスポット市況が急騰する結果となっている。また今回は、断熱用途などに使用されるポリメリックが騰勢を強めた。MDIはモノメリックとポリメリックが併産されるが、保存期間が短いモノメリック見合いの生産となる。そのため、供給不足を懸念した需要家がポリメリックを買い増しているようだ。
一方、原料ベンゼンとのスプレッドは拡大傾向にある。ベンゼンも年明けから上昇基調となり、3月のアジア価格(ACP)は、前月比95ドル高の855ドル/tとなった。これを踏まえたスプレッドは、モノメリックで2500ドル程度、ポリメリックで2400ドル程度となり、4-12月期(モノメリック1300ドル程度、ポリメリック1100ドル程度)に比べ大幅な改善となる。MDIメーカーにとっては、想定以上に収益が改善していると言えるだろう。
今後についても、しばらく市況が崩れるとの見方は少ない。寒波影響によるFM宣言は解除されてくるものの、正常稼働に戻るまでには時間が掛かることに加え、中国では春の需要期を迎えることから、需給タイトが続く見通し。とはいえ、MDIの各メーカーが稼働を高めてくる可能性や、コロナの状況次第では需要が落ち込むことも想定される。近年、MDI市況は外部環境によって変調しやすくなっており、今後の市場動向に注目が集まりそうだ。