【化学企業 入社式訓示⑥】東洋紡 竹内郁夫社長

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2021年4月9日

 当社の創業者である渋沢栄一氏は、150年も前にサステナブル(持続可能)な社会づくりやSDGsに通じる思想をもっていた。当社はそうした志の下で作られた会社になる。渋沢氏の座右の銘の1つであり、思いのこもった言葉「順理則裕(じゅんりそくゆう)」を企業理念としている。「なすべきことをなし、ゆたかにする」といった意味だが、このことを誇りに思うとともに、一緒になって渋沢氏の志を実現していきたい。

 皆さんはこれから、人生の貴重な時間の多くを仕事に充てることになるが、ぜひ仕事を楽しんでもらいたい。仕事を楽しむためには、「主体的に考え、前向きに行動すること」が必要だ。仕事を「自分事(じぶんごと)」として捉えることで、仕事の全体像や自分の役割などが見えてくる。仕事を通じてお客様や同僚に感謝されること、自分の製品が社会に役立っていると実感できること、いろいろと工夫してそれらを達成できたときの仕事の面白さは格別だ。その満足感を早く体験してもらいたい。また、自分の苦手な業務を通じて自分の能力が広がることがある。未知の分野を避けずに、ぜひ挑戦してほしい。

 今年は、東日本大震災から10年という節目の年にあたるが、私は、1995年の阪神淡路大震災の際に西宮で被災した。不安な日々を家族と過ごしながら「私たちは生きているのではなく、生かされているのだ」と実感した。私たちは、普通に仕事や生活ができることを当たり前のように思いがちで、つい不平や不満が出てしまう。今一度、ご両親やご親族、友人など多くの周りの人に支えられてきた結果として、今があることを考えてみよう。多くの方への感謝を忘れないことで、謙虚さ、真摯さが生まれてくるからだ。

 私も今日が社長としての初日で緊張しているが、社長としての責任を楽しめるよう、しっかり努力したい。皆さんも、変化を恐れず、変化を楽しんで、東洋紡の未来を作っていこう。そして、何よりも安全に留意してほしい。