産総研 即時・持続性ウイルス不活化コーティングを開発

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2021年4月22日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、就実大学と共同で即時性と持続性に優れた抗ウイルスコーティングの作製技術を開発した。

 消毒薬クロルヘキシジン(CHX)を含浸させたアルミナ(Al2O3)ナノポーラス膜で、多様な素材表面に質感と強度に優れ、耐久・持続性のある抗ウイルスコーティングを形成する。固体表面のウイルスは低温低湿下では1週間にもわたり感染力を保つため、ウイルスの不活性化は接触感染回避に重要だ。

 エンベロープ型ウイルスに対して界面活性剤による清拭は有効だが、ドアノブや手すり、つり革など公共のものには頻繁には行えず、短時間でのウイルス不活性化とその持続性が求められる。塗布しただけの薬剤は水や油に溶出し、長期間の抗ウイルス効果はない。薬剤を練りこんだ樹脂コーティングも、薬剤が表面に出にくく効果が不十分であり、密着性を落とす場合もある。

 今回、耐久性に優れたナノポーラスセラミックス膜に薬剤を担持・固定化する技術を開発した。強固な密着力と機械強度をもつ厚さ1㎛以上のナノポーラスセラミックス膜を、セラミックス微粒子を金属や樹脂、ガラスなどの基材表面に常温で吹き付け、その衝撃力だけで緻密なセラミックス皮膜を形成する産総研のエアロゾルデポジション法で作製。含侵用薬剤は、水溶液中の帯電状態や親油基の長さ、分子の立体構造などの観点でCHXを選定した。

 ステンレス基板上に作製した抗ウイルスコーティングの抗ウイルス効果を、A型インフルエンザウイルスを使ってISOのウイルス不活性化評価試験で評価した結果、24時間の抗ウイルス活性値は4.5以上、不活性化率は99.997%以上、2時間では各々3.7以上、99.98%以上であった。

 CHXの残留量をラマン散乱分光法で評価した結果、塗布しただけの薬剤は水溶液中の超音波洗浄1分30秒で消失したが、今回のコーティングでは10分後も残存した。乾燥環境でのボール・オン・ディスク試験(摩擦摩耗試験の一種)30分間でも、数分の1程度は残存していた。またコーティング表面の摩擦係数は1前後で、ビロードの様な感触である。

 今後は企業に呼びかけ、早期の実用化を目指す考えだ。