中外製薬はこのほど、創薬研究のさらなる加速に向け、国内製薬企業で初めてクライオ電子顕微鏡装置を導入したと発表した。
クライオ電子顕微鏡装置は、2017年にその基幹技術にノーベル化学賞が授与され、革新的な技術として注目を集めている。今回の同装置の導入は、創薬研究の必須プロセスである、標的タンパク質と結合した新薬候補化合物分子の立体構造解析を目的としている。
同社は、創薬研究の際の立体構造に基づく化合物デザイン(SBDD:ストラクチャー・ベースド・ドラッグ・デザイン)を重視し、精緻なデザインの追求による質の高い新薬候補化合物の創製を目指している。これまで立体構造の取得に同社が主に行ってきたX線結晶構造解析は、標的分子となる細胞内タンパク質を結晶化するプロセスを必要とする。中分子医薬品の標的タンパク質は、結晶化が難しいものが多く、化合物デザインの精緻化の課題となっていた。
クライオ電子顕微鏡装置による解析は、結晶化のプロセスを必要とせず、解析の大幅な効率化とともに、結晶化の難しい細胞内タンパク質を含む、より広い対象への立体構造解析が実現。これにより、SBDDが強化され、化合物デザインの成功確率の向上が期待される。
同装置は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社より導入され、中外製薬の鎌倉研究所で、中分子医薬品を含む様々な新薬候補化合物の立体構造解析に使用される。