大陽日酸 工業炉向け水素‐酸素バーナの開発を開始

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2021年6月23日

 大陽日酸はこのほど、水素ガスを燃料として使う工業炉向けの水素-酸素バーナの開発を開始したと発表した。日本国内では年間約11.4億tのCO2が排出され、そのうち約40%を産業分野が占める。さらにその25%は素形材産業を支える約4万基におよぶ工業炉から排出され、さらなる省エネルギー技術や化石燃料に代わる新たな燃料による燃焼技術の開発が急務となっている。

 これまで、NEDO事業などの連携プロジェクトで、化石燃料の高エネルギー利用効率型の工業炉の開発が推進されている。その効率はすでに理論限界に近い80%以上の実績が得られているが、脱炭素社会を目指す上ではさらなるCO2排出削減技術を開発する必要がある。

 同社では、カーボンフリー燃料としてアンモニアに着目。天然ガスにアンモニアを混合して燃焼させるバーナを開発し、様々な工業炉への展開を進めてきた。一方、水素ガスも工業炉向けのカーボンフリー燃料として注目を集めている。将来的には、都市ガスとLPGのように、用途や立地などに応じてカーボンフリー燃料を使い分けることが想定されている。

 こうした中、同社では水素を燃料とした水素-酸素バーナの開発に着手。工業炉分野でCO2排出削減の選択肢を顧客へ提案できるよう体制を整備することを決定した。水素-酸素バーナを工業炉へ適用する場合、①天然ガスと同じエネルギーを得るためには多くの流量が必要、②バーナ近傍が高温になりやすく、バーナへの熱負荷が大きい、③火炎温度が高くNOx排出濃度が高い、④天然ガスを燃焼させる場合より輻射伝熱が小さい、といった課題がある。

 同社は、従来のバーナ設計を見直し、十分に安定した燃焼が可能な構造を見極める必要を認識している。試験結果では、実際の炉で水素-酸素バーナを使用する場合、天然ガス-酸素バーナと同等の加熱能力を期待できる。また、シミュレーションの精度を確認できたことから、実炉へ水素‐酸素バーナを導入した際の予測が可能となった。さらに、550kW規模までの水素-酸素バーナの設計・製作にめどをつけることができた。

 同社は今後、これまでに開発した水素‐酸素燃焼技術をベースに、低NOx化、スケールアップなどの課題解決に取り組み、各種の工業炉向けに様々な顧客ニーズに対応できる最適な水素‐酸素バーナの開発を行い、実機への導入を提案していく。同技術を通じ、水素エネルギーの社会実装とCO2排出削減を目指す。