SABICはこのほど、熱可塑性プラスチックを活用したEVバッテリー・パックのコンセプトをシステム工学アプローチにより開発した。
柔軟な設計、性能や安全性の向上、コスト削減など自動車業界で求められる重要ニーズに対する軽量プラスチックの可能性を示すもの。ガラス繊維30%充填の難燃性(FR)ポリプロピレン(PP)コンパウンド「STAMAX」FRロング・グラス・ファイバーPP素材と金属とのハイブリッド構造に特徴があり、金属素材を使用した通常のバッテリー・パックと比べ、30~50%の部品軽量化、エネルギー密度の向上、部品点数の削減と組み立てプロセスの簡素化によるコスト削減、設計の自由度、熱制御、安全性、耐衝撃性などが向上する。
薄肉ハウジング内のパウチ・セルに個々のバッテリーを統合、熱可塑性プラスチックによる二重壁構造とリブ型パターンによる軽量化と構造要件への適合、そしてプラスチック素材の熱伝導率の異方性により熱管理性能を最適化する。また、筐体やカバーに「STAMAX」を使用することで難燃性UL94 V-0を達成し、電磁・高周波干渉遮蔽用カバーに金属を被覆できる。「STAMAX」と金属とのハイブリッッド構造へ統合することで熱伝導の最適化、落下テストへの適合、サイド・フレーム部材での大衝撃エネルギーの吸収が可能になる。
同社はチーフ・エンジニア、特別研究員、シニア・サイエンティストからなる技術チームを結成。OEMから工作機械メーカー、試験機関にいたるバリューチェーン全体にわたり継続的に協力し、早ければ2024年には、熱可塑性プラスチックで成形された複数の大型バッテリー筐体が量産型EVに採用されると予測している。EVの要件を満たす新素材の開発に加え、大型部品の製造・接合・組み立て、耐衝撃性、バッテリーの熱管理、難燃性、電気特性、性能試験などに向けたテクノロジーの実現に取り組んでいく。