新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、海上輸送の脱炭素化に必要不可欠な水素やアンモニア、LNGなどを燃料とする次世代船舶の社会実装を進めるためのプロジェクト「次世代船舶の開発」に着手した。
「船舶産業」はグリーン成長戦略の重点分野の1つ。グリーンイノベーション基金事業の一環で、期間は2030年度までの10年間、事業総額は320億円の予定。水素・アンモニア燃料のエンジンを開発することで日本の造船業・舶用工業の国際競争力を強化。海運業も一体となった社会実装を進めて、ゼロエミッション船の普及をけん引する。
水素やアンモニアを燃料とするエンジンは技術的な課題が多く、世界的にも未開発だ。燃焼制御技術の向上や液体燃料タンクの開発が必要だ。また、既存のLNG燃料船にカーボンリサイクルメタンを使用して実質ゼロエミッション化する場合でも、未燃焼メタンの排気(メタンスリップ)を削減する必要がある。
これらを踏まえ、次世代船舶の社会実装を進めるために、国土交通省が策定した研究開発・社会実装計画に基づく「次世代船舶の開発」の公募を行い、「舶用水素エンジン及びMHFS(水素燃料タンクと燃料供給システム)の開発」(川崎重工業など)、「アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の開発」(日本郵船など)、「アンモニア燃料船開発と社会実装の一体型プロジェクト」(伊藤忠商事など)、「触媒とエンジン改良によるLNG燃料船からのメタンスリップ削減技術の開発」(日立造船など)の4テーマを採択した。
同基金事業の別プロジェクトでは、水素燃料やアンモニア燃料のサプライチェーン構築などを計画。供給拡大・低コスト化された水素・アンモニア燃料などを利用することで、世界のCO2総排出量の約2%を占める国際海運の脱炭素化への貢献を目指す。