日本触媒と大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻の宇山浩教授のグループは7日、様々な素材表面に抗菌および抗ウイルス効果の付与が期待できるコーティング材料を共同開発したと発表した。新たに開発したコーティング材料は、フタロシアニン金属錯体による抗菌・抗ウイルス効果と、酢酸セルロースによる接着機能を発現する。
両者は、同研究科に設置した「日本触媒協働研究所」を拠点に共同開発を進め、様々な細菌・真菌・ウイルスを不活化することが可能な一重項酸素を発生する光増感剤に着目。既存の光増感剤を比較評価したところ、一重項酸素放出能とその安定性の観点で、フタロシアニン金属錯体が最適であることを見出した。
さらに、日本触媒でこれまで培った赤外線カットフィルター用などの色素の設計技術を駆使してフタロシアニンの構造を最適化。酢酸セルロースへの分散性が高く、かつ長期間にわたり一重項酸素を生成可能なフタロシアニン金属錯体を開発した。
同開発品をコーティングしたアクリル板の抗ウイルス性能をISOに規定する試験方法で評価したところ、ヒトコロナウイルスを99.9%以上不活化することを確認。抗ウイルス効果をもつコーティング材料として衛生対策が必要な幅広い用途への利用が期待される。
両者は今後も、同協働研究所内で、同研究科の最先端の学術的な知見や情報技術基盤と、日本触媒の触媒、有機合成、高分子合成などの保有技術の融合を図るとともに、データサイエンスを活用することで、革新技術の創出と事業創出、そして研究人材の育成を推進していく。