東洋紡 室内光で高変換効率のOPV用発電材料実用化へ

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2020年4月2日

 東洋紡はこのほど、薄暗い室内で世界最高レベルの変換効率を実現するガラス基板の有機薄膜太陽電池(OPV)小型セルや、軽くて薄いPETフィルム基板のOPVモジュールの試作に成功した。

OPV用発電材料
OPV用発電材料

 同社は昨夏より、再生可能エネルギーなど先端分野の研究を行うフランスの政府研究機関CEAと共同研究を実施していた。今後は温湿度センサーや人感センサーなどのワイヤレス電源用途を中心に同材料を電池メーカーなどに提案し、2022年度中の実用化を目指す。

 OPVはその特徴から、次世代の太陽電池として注目を集めている。溶媒に溶かした炭素や硫黄原子などを含む有機物の発電材料を、電極を備えたガラスやプラスチックの基板上に塗布するなどして作製される。軽くて薄い形状に加工できることから、現在普及している無機太陽電池では設置が困難な壁面や布地などにも貼付が容易になる。あらゆるものがインターネットにつながるIoTに欠かせないセンサー類や、ウェアラブルデバイスのワイヤレス電源として展開が期待されている。

 同社は、ファインケミカル事業で長年培った有機合成技術を応用し、低照度の室内用光源でも高い出力が得られるOPV用発電材料の開発に取り組んできた。開発中の材料は、ノンハロゲンの溶媒にも容易に溶かすことができ塗布時のむらが抑えられるため、個体差が少なく安定した発電が可能になる。

PETフィルム基板のOPVモジュール
PETフィルム基板のOPVモジュール

 同材料の早期実用化に向け、昨年6月から半年間、CEAと共同研究を実施。溶媒の種類や塗布の手法を最適化したことで、世界最高レベルの変換効率を実現するガラス基板のOPV小型セルの試作に成功した。

 薄暗い室内と同等である220ルクスのネオン光源下の検証では、卓上電卓に使用されるアモルファスシリコン太陽電池の1.6倍に相当する約25%の変換効率を確認した。また、ガラスよりも発電材料の塗布が難しいPETフィルムを基板にしたOPVモジュールの作製にも成功。有効面積18㎠の試作品が、同照度下で約130㎼の出力を達成した。