産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、高周波平面回路などに用いる金属材料の導電率を100G㎐超までの超広帯域にわたって簡便に測定する技術を開発した。
通信インフラとし第5世代移動通信システム(5G)の事業化が進む一方で、次世代のポスト5G/6Gの研究開発も注目されている。6Gではさらなる高速大容量通信のためにミリ波(周波数100G㎐超)の利用が見込まれるが、周波数が上がるほど伝送損失は増大し消費電力も上がるため、低消費電力材料が求められている。
高周波回路では、伝送損失は誘電体基板の誘電損失と金属線路の導電率で決まるが、金属・誘電体接着面での導電率低下が問題である。産総研は、誘電体基板で金属円板を挟んだ平衡型円板共振器を用いて、170G㎐までの超広帯周波数帯の誘電率測定技術を開発してきた。
しかし、金属導電率に関しては、周波数100G㎐超帯での簡便・高精度な計測技術はない。今回、誘電体基板で金属箔を挟んだ誘電体共振器に対して、高次モード励振の共振特性から導電率を決定する電磁界解析アルゴリズムを開発し、10~100G㎐超の超広帯域にわたる簡便かつ従来と同等精度での計測を実現した。この技術により、5Gや6Gの低消費電力化に向けた材料開発が加速すると期待される。
技術の詳細は、オンライン開催の国際会議IMSで先月発表された。今回、独立した金属円板の導電率計測を実証したが、今後、銅箔を誘電体基板上に実装した銅張基板の導電率計測を実証するとともに、銅張基板のミリ波帯での損失低減に向けたプロセス技術開発に貢献していく。さらに、ポスト5G/6G時代を見据えて、500G㎐までの計測技術の開発を進める考えだ。