ベンゼンは一段高で600ドル台、SMは大幅下落
アジア地域の12月第1週の石化市況では、エチレンは下値ステイ、上値10ドル高の950~1000ドル/tでの取引となった。上値が1000ドルを回復したのは2019年5月以来となる。春先から停止していたナフサクラッカーが再開されたことで、ナフサクラッカーのトラブルで強まっていた先高観が収まりつつある。また、需要家の間で玉を確保する動きが一巡したこともあり小幅な値動きとなった。 ナフサとのスプレッドは539ドル/tにやや悪化したが、石化メーカーにとって依然として好環境が継続している。
プロピレンは下値、上値とも5ドル高の960~1055ドル/tとなった。前週に75~100ドル/tと大幅に価格が上昇したこともあり、やや調整局面となっている。ただ川下のポリプロピレン需要は自動車向けや衛材向けなど堅調に推移しており、足元の市況水準が大きく崩れるとの見方は少ない。
ブタジエン(BD)は、下値、上値とも50ドル安となり、1250~1350ドル/tでの取引となった。高値が続くものの、2週連続での下落となっている。プラントの再開でタイト感が薄まりつつあることが、上値を抑える要因となった。
一方、芳香族は原油価格の上昇基調に伴い3製品とも強含みとなった。ベンゼンは64ドル高の654ドル/tと、3月第1週以来となる600ドル台を回復。スプレッドも243ドルと大幅に改善している。
それに対し、価格が高騰していた誘導品のスチレンモノマー(SM)は、108ドル安の919ドル/tと、4週ぶりに1000ドル/tを割り込んだ。停止していた設備が再稼働する中、緩衝材向けや断熱材向けの発泡用途の需要が減少したことが背景にある。ベンゼンとのスプレッドも173ドル縮小の265ドル/tまで悪化した。
トルエンは21ドル高の466ドル/tと5週連続で上昇。キシレンは22ドル高の491ドル/tとなり、ナフサとのスプレッドも13ドル拡大の80ドル/tに改善した。原油価格に連動し市況は徐々に切り上がっているものの、誘導品の需給バランスの悪化が解消されていない。
今後については、原油価格の動向が注目される。OPECプラスの減産幅が縮小されたことや、コロナ感染でワクチン接種が開始されたことなどを材料に、WTIは、今月18日には49ドル台に上昇し50ドル/tが目前に迫っていた。しかし、英国でコロナ変異ウイルスが確認され再びロックダウンに突入するなど先行き不透明感が強まり、足元では47ドル台にまで急落している。原油価格の不安定化はナフサ価格の乱高下にもつながりかねず、これから年末にかけて市場動向が注目される。