東ソーはこのほど、同社が所蔵する臭素に関わる歴史的資料が、資源に乏しい日本にあって臭素製造の歴史を現代に伝える貴重な資料として、日本化学会より第12回「化学遺産」に認定された。認定対象となった資料は、①臭素分離濃縮装置の竹の充填材、②臭素製造設備修理時のアルバム、③磁製臭素容器、④磁製臭素容器の図面の4つ。
同社は国内最大の臭素メーカーとして製造販売を手掛けている。臭素の大量生産の歴史は、1941年に海軍が航空機燃料のアンチノック剤の添加剤の原料として、臭素の大量生産を化学会社に要請したところから始まる。当時の最大の技術的課題は酸性度の高い臭素設備内部の充填材だったが、東洋曹達工業(現・東ソー)は竹材を選択。当初、竹材の寿命は長くて半年と言われたが、実際には10年以上も使用でき安定生産に寄与した。
南陽事業所(山口県周南市)では、1961~1973年まで操業した臭素製造設備で使用した竹の充填剤の一部を保存・公開しており、今回、化学遺産に認定された4つの資料も保管している。なお、認定化学遺産第056号「苦汁・海水を原料とする臭素製造設備と磁製容器」として同社グループ会社のマナックが所蔵する臭素蒸留塔および磁製容器も一緒に化学遺産に認定された。