ダイセルは12日、2021年3月期の連結業績を発表した。売上高は前年度比5%減の3936億円、営業利益7%増の317億円、経常利益9%増の347億円だった。当期純利益はポリプラスチックスの完全子会社化などにより約4倍の197億円となった。年度前半の需要低迷に対し、コストダウンと後半の需要回復で減収増益となった。
セグメント別では、メディカル・ヘルスケア事業部門は増収増益。コスメ・健康食品事業は中国向け化粧品原料が増加したが、国内の市況が下落した。キラル分離事業はカラムの増加や中国・インドの販売が好調に推移した。
スマート事業部門は減収増益。液晶表示向けディスプレイ事業は車載向け高機能フィルムが増加するも、ディスプレイ用途が低迷した。電子材料向け溶剤やレジスト材料などのIC/半導体事業は、堅調な需要で販売が増加し、原燃料価格の低下が増益に効いた。
セイフティ事業部門は減収減益。エアバッグ用インフレータなどは、自動車生産台数の年後半の回復で販売数量は微減となった。
マテリアル事業部門は減収増益。酢酸と酢酸誘導体は、年度前半の市況低迷が大きく響いた。アセテート・トウは為替影響による販売価格が低下した。カプロラクトン誘導体やエポキシ化合物などは前半の落ち込みや欧米向け需要が低調となった。コスト削減や原燃料価格低下により増益。
エンジニアリングプラスチック部門は減収増益。POM、PBT、液晶ポリマーなどのエンプラ事業は年度前半の自動車、スマホなどの需要減少が後半の回復でカバーできなかった。ABSやエンプラアロイなどの樹脂コンパウンド事業も需要が減少し、シート、成形容器、包装フィルムなどの樹脂加工事業は包装フィルムの販売が減少した。
その他部門は防衛関連事業の販売数量増加により増収増益だった。
通期の連結業績見通しは、需要回復による増収、酢酸原料と化粧品原料プラントの減価償却費増加による営業利益と経常利益の減少、特別損失の前年度計上とポリプラスチックス完全子会社化の年間寄与による当期純利益の増加を見込み、売上高4200億円、営業利益270億円、経常利益290億円、当期純利益220億円を見込む。