JSRは17日、リチウムイオン電池(LIB)の高容量化や安全性向上などを実現する「ロールtoロール方式」の連続リチウムプレドープ技術を開発したと発表した。来年1月27~31日にフランスのストラスブールで開催されるAABCヨーロッパで発表する。
LIBでは、電池内部でリチウムイオンが電解液を介して正極と負極間を行き来することで充放電が行われる。電池容量や出力に優れるシリコン系やハードカーボン系などの負極材のニーズは高いものの、これらの負極材では初回充放電時の副反応で、一部のリチウムイオンを消費してしまうため、電池本来の充放電容量を最大限発揮できないことが課題とされていた。
同社のプレドープ技術は、初回充電時のリチウムイオン消費分をあらかじめ負極材に添加させることで、この課題を解決し、電池を高容量化することができる。例えば、シリコン系負極材に同技術を適用すると、電池の容量を従来対比で20~40%程度向上させることが可能だ。
また、正極材を過剰に使用しなくて済むため、LIBの安全性も向上するほか、負極の劣化が抑制されることでLIBの寿命が延びるなど、LIBの技術水準を底上げする革新技術である。
同社では、長年にわたりリチウムプレドープ技術の研究開発を行っている。連結子会社のJMエナジーでは、 プレドープ技術を使用した蓄電デバイスであるリチウムイオンキャパシタの量産実績もある。その知見を生かして今回、ロールtoロール方式のプレドープ技術の開発に至った。
同方式は、LIB製造工程で通常採用されている方式のため、LIBメーカーは材料や製造工程を大きく変更することなく、技術の導入が可能となる。
近年、省エネルギー化・低炭素社会の実現に向け、LIBを中心とした蓄電デバイスの重要性が高まっており、さらなる高容量化・高出力化・安全性向上などが求められている。同社は今後もさらに検討を進め、LIBをはじめとする各種蓄電デバイスの付加価値向上に最適なソリューションを提供し、この分野の発展に貢献していく考えだ。