東レと筑波大学はこのほど、心房細動の再発を検出するための診断ツールとして、繊維技術を使用したドライ電極を備えた医療用スマートウェア(着衣型心電計)による2週間の心電図測定の有用性を検証した。
心房細動は全死亡や心血管死、脳梗塞の主要なリスク因子で、高齢化の進行に伴い国内患者数は100万人超と著しく増加している。アブレーション(焼灼)治療が広く普及しているが、再発するケースがあり、約半数は自覚症状がないため、心電図で記録されないと診断することが難しい。心房細動を漏れなく心電図で検出することは、治療方針を決定する上での重要な課題となっている。14日間連続で心電図検査をすれば高い検出率を確保できるが、従来の検査では、導電性クリームやゲルを介して電極を皮膚へ貼り付けるため、数日間でカブレなどの皮膚トラブルが発生することがあり7日間程度が限度だった。
今回の研究では、皮膚に優しい導電性繊維によるドライ電極を備えたスマートウェアについて、臨床的な有用性を特定臨床研究にて検証した。初回のアブレーション治療を受けた67人の被験者を対象に心房細動の検出率を比較。標準的な24時間ホルタ心電図検査では4人の心房細動の再発を認めたのに対して、スマートウェアによる2週間の心電図検査では、12人の心房細動の再発が認められた。つまり平均14日間の連続検査を達成しつつ、ウェアラブルなドライ繊維電極を用いた長時間の心電図検査により、ホルタ心電図に比較して、統計的有意差(P=0.008)をもって、3倍高く心房細動の再発を検出できる臨床有用性を実証した。
スマートウェアは着脱が簡単で、被験者はモニタリング期間中でも入浴可能、着用感についても被験者の約8割が、ホルタ心電図より優れていると回答している。これまで見逃されていた発作性心房細動の検出も可能となり、スマートウェアは、原因が特定されていない脳梗塞である塞栓源不明脳塞栓症の診断などにも展開できると期待される。