新年特集2007年(バックナンバー)

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2025年1月10日

・当時の原文のまま掲載しています。ご了承ください。(2007年1月5日掲載)

◇新年特集インタビュー◇
『合理化で収益体質、攻めの経営を加速』

ダイヤニトリックス取締役社長  袋谷勝義氏(2007年発行日当時 原文のまま公開) 

 ━昨年は原燃料高騰が問題になった。

 原油に連動しナフサも急騰したことを受け、2Q(4―6月期)から3Q(7―9月期)にかけて相当な値上げをお願いしてきた。国産ナフサレベルでは㎘5万円前後まで転嫁できたと考えている。AN(アクリロニトリル)は内外の需給バランスがタイト化しており、AAM(アクリルアマイド)、PAAM(ポリアクリルアマイド)も堅調に推移したため、プラントはフル稼働状態にある。このため固定費も圧縮、〝期ズレ〟も発生したがある程度は吸収できた。

 ━会社設立以来、着実に業績を伸ばしてきた。

 当社がスタートした01年当時は、ANにしてもAAMにしても、その収益性に対して確信を持つことができない、といった厳しい状況だった。だからこそ、三菱レイヨン、三菱化学の両親会社が危機感を持ち、互いの重複事業を統合することにより力を付け、国際競争のなかでいかに勝ち残りを図るか。この問題について考え抜いた末に出した結論として、合意に至っている。初年度は01年7月にスタート、事業期間は半年だった。以降、2年目からはAN市況における神風の存在も後押しに、シナジー効果が発揮され、好業績を収めることができた。03年以降は浮き沈みもあったが、収益を上げている。

 ━高収益体制を実現、高配当も実施している。

 おかげさまで、当初意図した以上の利益を上げており、配当を通じて両親会社の事業に貢献していると自負している。

 ━シナジー効果を創出、引き続き合理化を推進している。

 当社の生産体制として、ANは大竹に9万t、水島に11万5000t、AAMは横浜に2万t、黒崎4万5000t、ポリアクリルアマイド(PMMA)は富山1万4000t、黒崎に4000tとそれぞれ2拠点ずつ保有していることも活用してきた。今年は10月に横浜のAAMを5割増設し3万t体制に引き上げた。これまでは、生産能力が大きい黒崎から尼崎や川崎などのストックポイントを活用し、デリバリーせざるをえず、東西交錯輸送が余儀なくされていた。しかし、横浜を増強すれば東日本での供給力に余裕ができ、従来ユーザーへ直接納入することが可能となる。合理化効果だけで年間1億円超を見込んでいる。そのほか、PAAMでは生産品種の調整を行うなど生産の合理化を進めている。

 ━AAMといった自社の誘導品以外にも、グループ会社が安定供給先に。

 大竹では三菱レイヨンのアクリル繊維を中心に供給、水島ではAAMのほか、準自消ともいえるアクリル繊維、ABS樹脂、炭素繊維など誘導品群へ供給している。一連の供給体制整備による生産集約、合理化策が加わったことで効率化を推進、さらにAN市況が追い風となったこともあり高収益体制を構築できた。当社は、ANについては自消および準自消を中心に供給、外販は出荷全体の20%程度に過ぎない。

 ━そうした状況のなか両親会社の出資比率が変更となった。

 両親会社はAN系事業の経営環境が厳しいなか当社を発足させた。その後、生産合理化などシナジー効果を発揮し収益体制を確立してきた。今後も協調路線は変わらないものの、それぞれの特色をより生かせる体制を整えたといえる。三菱化学ではプロピレンなど石化原料に強みを持ち、三菱レイヨンはANやそれよりも下流であるAAM、PAAMなどの製品に1日の長がある。ダイヤニトリックスという会社が次の段階へ向かうためには、イニシアチブをとるものと、それをサポートするものと、出資比率を変更することにより役割を明確化した、ととらえている。

 ━現在推進中の中計「C―30」については。

 出資比率の変更により中計を見直すということはしない。売上高500億円、営業利益30億円が現状の実力。三菱レイヨンのROSは10%超にあるのに対し、当社は6%程度。まず、これを8~10%を目標に引き上げていく。次期中計においては営業利益50億円がターゲットになるだろう。

 ━地域的な拡大には、ダイヤニトリックス自身の中国進出も課題に。

 現在、中国では日系の製紙メーカーが現地進出したのを皮切りに、当社の直接のユーザーである製紙用薬剤各社も中国展開を推進している。こうした動きにより、アクリルアマイドの需要は成長しているものの、現段階では液状の製品を粉末化したものを日本から出荷、現地で再度液化して使用しており競争力の面で見劣りしているといわざるを得ない。また、日系メーカーへの供給責任を果たすためにも、現地生産は不可欠だ。加えて、中国では紙薬剤向け以外にも、民度の上昇から下水処理向けや、原油価格高騰によるEOR(原油増進回収法)向けにそれぞれ需要の伸びがみられる。

 ━中国進出においても、両親会社のチャンネルを活用する。

 生産面では三菱レイヨンが寧波において稼働しているアクリル繊維生産拠点において、同じAN系事業といういみでタンクなどの共有化が可能でシナジーが期待できる。また、販売面でも、三菱化学の現地法人にマーケティングを委託するなど、三菱化学グループとしての統合効果を期待している。中国進出の問題については詰めつつあるものの、決定にはいたっておらず、次期中計のなかで明確にしたい。

 ━ANからの生産体制の見直しも視野に入る。

 三菱レイヨンは中国の寧波にアクリル繊維5万tを稼働しているが、ANについては外部から購入している。そのほか、販路も持っており、親会社の事業基盤を強化するといった視点からも、キャパシティライトを含めた新たな供給源の確保へ向けた検討を進めていく。

 ━将来へ向けた拡大路線を加速するということだ。

 AN系事業の中心であるアクリル繊維が今後、国内で増強されたり、需要が戻ることがあるかといえば、ありえない。ステイ、ないし縮小傾向は続く。成長が見込まれるのは海外であり、積極的に打って出る。07年度を最終年度とするC―30は利益目標を30億円としているが、05年度は約29億円とほぼ達成、06年度上期も予算を順調にクリアしている。下期についても上方修正を指示しており、30億円により近づける数値を目指している。

 また、中計の目標も2割くらい上乗せし35億円にする方針を固めている。自消および準自消部分の18万tについては営業担当を一人しかおいておらず、固定費を徹底的に削減してきた。スリムな販売体制を敷くことで、市況に左右されない業績づくりを心がけている。一方でANメーカー側では米国スターリングなどが事業から撤退、デュポンも規模を縮小するなど、自然淘汰が進んでおり需給バランスも引き締まった状態が継続している。こうしたなかで、当社はANにはじまり、AAM、PAAM、触媒といった一貫したAN系事業を軸に、独自の技術や販路、両親会社を含めたシナジーを活用しながら事業規模を拡大し、2010年ごろには売上高を600億円から700億円まで積み上げ、利益も50億円を上回る水準を達成できるような会社にしたい。