【バイオプラ特集】化学産業 プラスチック代替への動きに対応が急務

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2019年11月8日

産官挙げてバイオプラ普及に注力、環境問題に貢献

 日本の化学産業が技術開発を進めてきたプラスチックは、機能性を高めたことでフードロス軽減や自動車の軽量化など社会に新しい価値を提供し、社会問題解決に貢献してきた。

 しかし、アジア地域の新興国では使い捨てたプラスチックが河川から海洋に流出し、海洋プラごみや、マイクロプラ問題といった環境汚染が深刻化している。また、先進国が輸出してきた廃プラも、中国やASEAN各国が受け入れを拒否する動きが強まっている。こうした中、廃プラ問題の1つの解として、バイオプラスチックが注目を集めている。

 バイオプラには、植物原料の「バイオマスプラスチック」と、ある一定の条件の下で分解し、最終的には二酸化炭素と水にまで変化する「生分解性プラスチック」がある。すでに大手食品メーカーや外食チェーンなどでは採用が進んでおり、今後ますますニーズが高まると予想される。

 今回の異業種特集ではバイオプラについて、省庁や業界団体の取り組み、バイオ素材に注力する化学メーカーの研究開発や市場開拓、また今後の戦略や課題などについて聞いた。

【バイオプラ特集・インタビュー】経済産業省

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2019年11月8日

製造産業局素材産業課長 吉村一元氏

環境貢献分野で日本の技術をビジネス化

━プラスチックごみ問題への現状認識について。

 吉村 現在はプラスチックを使っていること自体が悪いように見られている。ただ、スーパーに並んだ商品を見れば分かるように、プラスチックがなければ食品を買うこともできない。わが国の根幹に位置づけられる重要な材料であることは間違いない。プラスチックは様々な分野で貢献してきたが、これからも成長する分野において大事な素材であり続けるだろう。

吉村課長
吉村製造産業局素材産業課長

 一方で、プラスチックごみの問題については国としても取り組んでいかなければならない課題だと認識している。世界でも推計で年間900万tものプラスチックごみが海洋へ流出し汚染につながっている。そこにはしっかりと対応していきたい。産業の発展とプラスチックごみ問題対策、この両輪で進めていく必要があるだろう。

 各国でもプラスチックへの対応は相当進んでいる。欧州では2018年にEUのプラスチック戦略を発表し、ホテルなどで使用される一部のワンウェイ(使い捨て)製品を2021年から禁止する規制案が提出され合意に至った。中国は2018年末に工業由来の廃プラ輸入を禁止し、タイやマレーシアといった東南アジア諸国でも輸入規制強化の動きが出ている。各国とも廃プラスチックの動きを注視しているのが実態だ。

 また、バーゼル条約では、国境を越えた有害廃棄物の輸出入に関する規制を定めている。2019年に開催された関係国の会議では、汚れたプラスチックごみを条約の規制対象とすることが決定され、2021年から施行される予定だ。汚れたプラスチックは完全に規制対象になる。世界的にも廃プラスチックの管理をしていこうという動きが進んでいると感じている。

━プラスチックごみ問題の解決に向けて、日本はどう動いたか。

 吉村 2019年2月に内閣官房の下に海洋プラスチックごみ対策の推進に関する「関係府省会議」が発足し、5月にその会議で「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」が策定された。この中では、対策分野の一番目に、「廃棄物処理制度等による回収・適正処理の徹底」が記されており、ポイ捨てや陸域での散乱ごみ、海洋プラスチックごみの回収などの課題が挙げられている。

 同じく5月には「プラスチック資源循環戦略」も策定された。3R(リデュース、リユース、リサイクル)とRenewableを徹底する基本原則となっている。ポイントは

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【バイオプラ特集・インタビュー】日本プラスチック工業連盟

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2019年11月8日

専務理事  岸村小太郎氏

バイオプラ・再生材、用途開発で消費者へ利用促進

━現在のプラスチックを取り巻く状況をどう捉えていますか

 岸村 海洋プラスチックごみ問題を発端に、脱プラスチックを巡る動きなども活発化している。確かにプラスチック業界に逆風が吹いているが、逆にいいチャンスではないか。例えば、来年7月から義務化されるレジ袋の有料化だ。プラスチックは安い、レジ袋はタダ、安いから大量に使って大量に捨てるといった消費者の意識が、少し変わっていくのではと期待している。

岸村専務理事
岸村専務理事

 国のプラスチック資源循環戦略の中でも、有料化により「価値づけ」することで消費者のライフスタイル変革を促す、とあるように、レジ袋の価値づけを契機に、ほかのプラスチック製品にもいい影響が及ぶのではないだろうか。

 欧米などでは一定の消費者が、少々高くても環境にいいものを選ぶという感覚がある。われわれ業界が率先して、再生材を使用したもの、リサイクルしやすい製品といった環境にいいものを提供していけば、この製品は割高にはなるが環境にやさしいものを購入しようと、消費者マインドが変わってくるかもしれない。

 それがバイオマスプラなのか、生分解性プラなのかは別として、樹脂生産量の減少は考えられるものの、現行品より高い価格で買ってもらえればビジネスとしてうまく回るし、石油資源の使用量も減らせる。そういうきっかけになるのではないかと思っている。

━これまで環境対応などに、どう取り組んできましたか。

 岸村 当連盟は以前から、樹脂ペレット漏出防止対策や、リデュース・リサイクル検討委員会を設け、容器包装リサイクル法への対応を中心にした活動を行ってきた。その中で、ここ数年の環境・プラスチック問題を受け、もう少し幅広く、本当にあるべき環境対策やリサイクルについて検討をする場を作りたいとの思いから、今回のプラスチック資源循環戦略の策定となった。

━プラ工連版「プラスチック資源循環戦略」について。

 岸村 当連盟としては、行政や国内外の

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【バイオプラ特集・インタビュー】日本バイオプラスチック協会

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2019年11月8日

事務局長 横尾真介氏

バイオマスと生分解性、特長を訴求し普及を図る

━バイオプラ協会の沿革についてお聞かせください。

 横尾 当協会は1989年に生分解性プラスチック研究会(BPS)として発足した。当時は脂肪族ポリエステル系を中心とした生分解性プラの研究開発が進んでおり、実用化に関心を持つ企業が集まったのが始まりだ。

横尾事務局長02
横尾事務局長

 2000年にはグリーンプラ識別表示制度(GPマーク)を開始した。そうした中、2005年に「愛・地球博」が開催され、テーマである循環型社会の気運が高まったことに加え、原油価格が100ドル近くに高騰したため、バイオマス原料とナフサとの価格差が縮小し、石油資源の削減に寄与する植物由来の再生可能プラへ一気に注目が集まった。

 当協会は、バイオマスプラを取り込み、2006年にバイオマスプラ識別表示制度(BPマーク)を開始したこともあり、2007年に名称を「日本バイオプラスチック協会」に改称した。しかし、その後、原油価格が急落したことや、技術的なハードルがあったことからバイオマスプラへの関心が徐々に薄れ、当協会の会員数も2006、7年をピークに2017年まで減り続けた。

 しかしここにきて、地球温暖化問題や海洋プラごみ問題への関心が高まったことで、昨年には会員減少に歯止めがかかり、今年になって退会した企業が戻ってくるなど増加傾向となっている。

━バイオプラの普及に向け、どのような活動をしていますか。

 横尾 当協会の活動では、主に2つの柱でバイオプラの普及拡大を推進している。1つは先ほどもお話しした認証事業だ。BP(バイオマスプラ)マークやGP(グリーンプラ)マークが付いている製品が、地球環境に貢献していると、消費者が見ただけで判別できる識別表示制度に注力している。

 認証制度を始めた頃は、エコブームの追い風もあり企業の登録数が増加した。しかし、販売につながらなければ3年後の更新を行わないケースも多くあり、認証制度の浸透は難しい状況にある。そういった意味において、この制度のメリットを、消費者だけでなく企業も享受できる環境にしていかなければならないだろう。

 もう1つの活動は

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【バイオプラ特集・インタビュー】三菱ケミカル

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2019年11月8日

サステイナブルポリマーズ事業部長 三浦健治氏 / 企画管理グループ マネジャー 小林哲也氏

デュラビオ、PBSとも需要増加、設備投資を検討

━海洋ゴミ問題からプラスチックに逆風が吹いています。

 三浦 プラスチックという言葉自体がかなり悪者のように、報道などでは扱われている。ただ、そこは冷静になって、何が環境に負荷が大きいかを検証する必要があるだろう。プラスチックごみによる海洋をはじめとした環境汚染の問題と、温暖化ガス排出問題はしっかり分けて考えていくべきだ。

三浦部長02
三浦サステイナブルポリマーズ事業部長

 当事業部ではバイオエンプラ「DURABIO(デュラビオ)」と生分解性樹脂「BioPBS(バイオPBS)」の2製品を扱っているが、両製品ともバイオマス由来であり温室効果ガスの問題に対応できる。また、「BioPBS」に関しては、生分解性があることからごみ流出問題による環境汚染にも対応していける製品だ。

 昨年、ウミガメの鼻にストローが刺さった動画が公開されたことで、海洋プラスチックごみに対する世界の関心が一気に高まった。こうした背景の下、環境問題を意識していかないと企業としての存続が危うくなるといった考えを顧客が持ち始めており、当社製品への引き合いが強くなっている状況だ。

━三菱ケミカルではサステナビリティを重視しています。

 三浦 2011年に当時の小林喜光前社長(現会長)が、地球環境を維持していくためにはサステナビリティは避けて通れない課題という認識から、「KAITEKI」経営を打ち出した。経営指標の1つの軸としてMOS(マネジメントオブサステナビリティ)を掲げ、その中において、バイオマス由来や生分解性などのバイオプラスチックを大きな柱の1つに位置づけている。

 こうした中、三菱化学の時代の2010年にサステイナブルリソース事業推進室を立ち上げ、2013年にサステイナブルリソース事業部(現サステイナブルポリマーズ事業部)に組織変更した。当社はCSRの一環としてだけではなく、事業部としてバイオプラスチックを推進するという強い意思を持ってきている。

━バイオエンプラ「デュラビオ」の開発経緯についてお聞かせください。

 三浦 環境に優しいバイオマス原料を使って、従来にはない新しい機能性のある商品開発を目指したのが最初のコンセプトだ。その中の1つとして、ガラス代替をテーマとし樹脂開発をスタートした。

 ただ開発する上で、1つの大きな課題だったのは、

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【バイオプラ特集・インタビュー】三井化学

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2019年11月8日

理事・ESG推進室長  右田健氏 / 研究開発本部 研究開発企画管理部長 伊藤潔氏

経営にESG要素を組み込むプラスチック戦略

━環境意識が高まる中、いち早くESG推進室を設置されました。

 右田 ESGやSDGsといった様々な動きがある中で、まずは企業としてサステナブルな成長や発展を目指していく必要がある。社会課題から事業を考え、企業の方向性を決めていくことがESG推進室新設の本来の目的だ。

右田室長
右田理事・ESG推進室長

 われわれ素材メーカーは、プロダクトアウトになりがちだが、そうではなく、長期的に何が課題で、そのためにどんな技術や事業が必要になるかをきちっと考えていかなければならない。今のままのポートフォリオが、20年、30年経てば通用しなくなる可能性もある。ESGを利益も追求できる形で捉え、経営そのものとして進めていく考えだ。

 ただ、その後、海洋プラスチックごみなどの廃プラ問題が俄かにクローズアップされ、ESG推進室の役割が大きくなってきたというのが現状だ。

━その中で、プラごみ問題をどう捉えていますか。

 右田 グローバルな課題として重要な気候変動問題とプラスチックごみ問題については、表裏一体のものと捉えている。これらの課題への対応を通じて循環経済の実現に貢献していく考えだ。

 例えば、リサイクルは気候変動問題とプラごみ問題双方にとって重要な対策である。化学メーカーとして追求していくため、当社はリサイクル戦略とバイオマス戦略の両面からのアプローチを、プラスチック戦略の基本方針と位置づけた。CO2削減につながるバイオマスプラを拡充することで気候変動に対応し、資源循環へも貢献していく。

 一方では、回収しやすい材料研究、モノマテリアル化の提案、リサイクル技術開発といった戦略で循環経済への貢献を図る。つまり、今までは原料・素材生産から消費までの、一方通行の動脈系でしかやってこなかったが、それに加え、静脈系である回収・分別・リサイクルというところにも、新たなビジネス機会を見つけていくということだ。バリューチェーン全体を視野に入れた循環経済モデルの構築を推進していく。

━製品ポートフォリオも変わってくる。

 右田 足元の製品構成は主に

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【バイオプラ特集・インタビュー】東洋スチレン

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2019年11月8日

常務執行役員技術本部長 和田福明氏 / 管理本部長  藤沢一秋氏

バイオポリスチレンで環境貢献、次世代製品にも注力

━プラスチックの資源化が課題となっています。

 和田 プラスチックは「割れなくて強い」という特長を生かして日常生活の中で役立ってきた。廃プラが海洋に流出することで、逆にその特長が海洋プラごみ問題を引き起こしてしまっている状況だ。

トーヨーエネライツBMの用途例
バイオポリスチレンの用途例

 化学業界では「海洋プラスチック問題対応協議会(JaIME)」が日化協を中心に設立されるなど取り組みが始まっており、その動向を注視している。これまで、プラスチックはワンウェイ(使い捨て)を前提とした事業フローとなっていた。

 しかし海洋プラごみ問題を契機に、プラスチックを循環可能なリサイクル資源にしていく気運が世界中で高まってきている。企業だけでなく一般消費者も、プラスチックを循環型社会の中で考えていく必要があるだろう。

━ポリスチレン(PS)はリサイクルが進んでいます。

 藤沢 PSの再生市場はモノがないくらい引き合いが強くなっており、顧客からの要望があっても、回収されたPSを確保することが難しい状況だ。回収しきれないPSをどうやってマテリアルリサイクル(MR)に組み込んでいくかが大きな課題となっている。

 和田 再生品は品質面で課題があるが、当社はバージン品と混ぜるなどの加工を行い、顧客はそれを用いた製品設計を進めるなど、用途開発が加速しているところだ。その一つの例としてコピー機のトナーカートリッジがあるが、回収品に不足分を加えることで再生品として成立している。

 同様に、テレビのバックカバーなど家電リサイクル法でシステムの整備が進んでいる分野もある。ただ、それ以外の分野で、樹脂メーカーとしてどれだけ責任を持って取り組めるかが長期的なテーマとなってくるだろう。

━そうした中、技術本部内に環境対策推進室を立ち上げました。

 藤沢 企業においても環境問題への対応が求められてきている。これまで、環境省や経済産業省など行政の動きを注視するなど情報収集を行ってきたが、10月1日に技術本部内に環境対策推進室を立ち上げた。

 PSケミカルリサイクル(CR)技術やバイオ製品の

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【バイオプラ特集・各社の動向】カネカ 

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2019年11月8日

生分解性ポリマー事業の本格展開へ、製造設備を増強

 カネカは「カネカ生分解性ポリマーPHBH」の本格的な事業展開を進めている。欧州でPHBHの海水中での生分解に関する認証を取得したほか、EUの全食品用途でPHBHの使用が可能となった。米国ではFDA(米国食品医薬品局)の食品接触物資に登録されている。

 国内でもポリオレフィン等衛生協議会の食品用器具・容器包装のポジティブリストに掲載されるとともに、セブン&アイ・ホールディングスや資生堂と製品の共同開発を開始した。このように、事業拡大に向けた環境が整ってきたことから、同社では今後、製造設備の増強と研究開発を促進していくことで、国内外で拡販を図っていく方針だ。

100%植物由来

 植物油脂を主原料とするバイオポリマーのPHBHは、3‐ヒドロキシ酪酸と3‐ヒドロキシヘキサン酸の共重合ポリエステルである。バイオマスを主原料に、土肥義治東京工業大学名誉教授(共同研究当時は理化学研究所理事)との共同研究による菌株育種・培養技術によって、微生物体内にポリマーを高度に蓄積させ、それを精製して取り出すクリーンプロセスで生産する。

 日常の使用条件下では安定である一方、生分解性が優れ、自然環境下でも分解されてCO2と水になる。100%植物由来であるため、化石資源由来のポリマーと比べ、CO2の増加が抑制され、地球温暖化防止に貢献することができる。

 また、共重合体の3‐ヒドロキシヘキサン酸の比率が増加するにつれ、柔軟な性質が出てくることから、共重合比率をコントロールすることで、硬質から軟質まで幅広い物性を示し、ポリエチレンやポリプロピレンに類似した物性も実現可能だ。

 バイオポリマーとして用途が広がっている硬質のポリ乳酸(PLA)に比べ、優れた耐熱性・生分解性・耐加水分解性・水蒸気バリア性を持っている。開発は科学技術振興機構(JST)の委託開発事業として行われた。

 研究では、土壌微生物の一種が脂肪酸や植物油を炭素源としてPHBHを生産することを見出だしたが、当初発見した野生菌の生産能力は、目的とする組成のPHBHを工業生産レベルで製造するには著しく低いものだった。その後の開発の結果、野生菌からPHBH合成遺伝子などを複製することで、単位培養液当たりの生産能力を高め、数千tから数万t規模の培養生産が可能なPHBH高生産菌の開発に成功した。

高効率のプロセスを開発

 開発のポイントとなる水系での大量発酵生産については、

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【バイオプラ特集・各社の動向】クラレ 

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2019年11月8日

植物由来ガスバリア材「PLANTIC」を展開

 クラレはガスバリア材のラインナップの1つとして、バイオマス由来の「PLANTIC」を展開している。

 同社にはプラスチックの中で最高レベルのガスバリア性を持つEVOH樹脂「エバール」がある。「エバール」は優れたガスバリア性により内容物の劣化を防ぐことから、食品包装用途を中心に幅広く使われており、世界シェアで約65%(同社推定)を占める。「PLANTIC」はそのバリエーションで、エバールに近いガスバリア性に、生分解性を併せ持たせた。

 「PLANTIC」はオーストラリアの産学連携研究により開発されたでんぷん由来の生分解樹脂であり、同国のPLANTIC社が2003年に商業化した。2009年にハイバリア包材を商業化したことで、2011年に同国の大手スーパーマーケットに採用され、食肉包装用にPETと組み合わせたトレーとして使われている。

 クラレは2014年に日本と韓国で「PLANTIC」フィルムを販売する代理店契約を結び、翌年、PLANTIC社の全株式を取得して傘下に収めた。

 「PLANTIC」の環境性については、単層HPグレードがTUV Austriaの生分解性認定(活性汚泥中・土壌)、コンポスト性認定(工業・家庭)、バイオマス認定を受けている。また、PETと「PLANTIC」を組み合わせた多層フィルムのトレーは、PETの再生工程中に「PLANTIC」層が溶出し影響を与えないことから、リサイクル容器として認定されている。

 一方、日本では多層フィルムが日本有機資源協会のバイオマスマーク製品に認定されており、「PLANTIC」の焼却で発生するCO2は、日本のCO2発生量から除外される。現在、「PLANTIC」フィルムはPLANTIC社で製造され、国内外に供給している。

米社に樹脂を供給

 米州でも、これまでグローバルに食品包装材料を供給する米シールドエアー社と、米国・カナダ・メキシコでの食肉・魚介類などの生鮮食品に使用する「PLANTIC」製食品包装用フィルムの販売代理店契約を結んでいた。

 このほど、さらに事業を進展させることになり、クラレの100%間接出資子会社であるクラレアメリカとシールドエアー社との間で樹脂供給契約を結び、樹脂をシールドエアー社に供給し、同社がフィルムに加工することになった。

 樹脂についてはクラレが

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【バイオプラ特集・各社の動向】帝人 

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2019年11月8日

植物度70%の「プラネクスト」、自動車部品で採用

 帝人の「PLANEXT(プラネクスト)」は、トウモロコシの実などから製造されるイソソルビドをベースとした樹脂で、その植物度は約70%にもなる。透明性・耐薬品性・耐傷付き性・耐久性に優れることから、自動車・エレクトロニクスや光学用途、医療、食品、化粧品用途など、幅広い市場で用途開発を進めている。

 その1つが昨年2月に発表した、耐ガソリン性と成形性を両立した「プラネクスト」製のフィルム。独自のポリマー改質技術と製膜技術を駆使することで、スマートエントリーシステム用のドアハンドルへの対応を可能にした。

 また、このフィルムに加工メーカーの特殊金属蒸着技術を付加することにより、クロムメッキに代わる金属メッキ代替フィルムの生産も行うことができ、ホンダロック(宮崎市)のスマートエントリーシステム用のドアハンドルに採用された。

 近年、自動車用のドアロックとして、ドアハンドルに触れるだけで施錠・開錠が行える、スマートエントリーシステムの開発が進められている。スマートエントリーシステムは、センサーの誤作動防止のため、ドアハンドル部分を非導電性とする必要があるが、導電性のあるクロムメッキをベース樹脂の表面に使用したドアハンドルでは、実現できなかった。

 一方、金属蒸着したプラスチックフィルムは非導電性で、すでに金属メッキの代替フィルムとして、自動車の外装用途に実用されているものの、ドアハンドルには耐ガソリン性と成形性の両立が求められるため、使われていなかった。これに対し、帝人は「プラネクスト」を独自のポリマー改質技術で改良することにより、耐ガソリン性と成形性を両立した「プラネクストSN4600」を開発し、量産化に成功した。

 また同製品に特殊な製膜技術を加えることにより、ドアハンドルを含む自動車外装用途に使用可能なフィルムの開発も実現した。開発したフィルムは「プラネクスト」の特性である耐薬品性・透明性・高表面硬度に加え、優れた耐ガソリン性と成形性、耐候性を備えている。

 ポリマー改質技術により耐ガソリン性を付加されたことで、セルフ式ガソリンスタンドなど、ドライバーの手にガソリンがつきやすい状況下での使用に適している。

 また、耐熱性と製膜条件を最適化することで成形性を高め、複雑な形状の成形を可能にした。さらに、優れた耐候性基材を保護するためのUVカット機能をフィルムに付与することによって耐候性を高め、紫外線による基材の変色を防止している。帝人はこのフィルムをドアハンドル以外の自動車部品にも積極的に用途展開し、拡販を図っていく方針だ。

植物由来成分30%のPETも

 同社には植物由来の素材として、もう1種類、グループ会社の帝人フロンティアが展開している「PLANTPET(プラントペット)」がある。これは、PET樹脂を構成する成分の一部を、植物由来原料に置き換えたものだ。

 PET樹脂を構成するエチレングリコールを植物由来に切り替えたことで、成分の30%強が植物由来となっており、これは放射性炭素年代測定法(14C年代測定法)により検証することができる。素材の1部を植物由来とすることで、化石資源の消費を抑えることができ、温室効果ガスの削減効果が示されている。

 有限資源を再生可能な資源に転換することは、環境負荷の低減につながり、物性・品質は化石由来のPETと変わらないことから、すでにPETボトル用途では世の中に広く普及し始めている。それ以外では、カーシートやユニフォームが多く、衛生材料や産業資材などでも使われている。

 PETボトルをめぐる環境負荷低減への取り組みということでは、帝人フロンティアは回収したPETボトルを溶かし、マテリアルリサイクル技術により再生したポリエステル繊維「ECOPET(エコペット)」を製品化している。

 その取り組みの一環として、野外音楽フェスでのPETボトルリサイクル活動を支援しており、8月に総合エンタテインメント企業エイベックスグループの夏の野外ライブイベント「a‐nation(エイ・ネーション)2019」、9月には山梨県山中湖村の野外音楽フェス「Mt.FUJIMAKI(マウントフジマキ)2019」に協賛し、リサイクル活動をサポートした。

 「エイ・ネーション2019」は、エイベックスグループが2002年から毎年開催しており、会場内で発生した使用済みPETボトルを回収するリサイクル活動「LOVE.PEACE&CLEAN」を行っている。同社がサポートするのは10回目。「地球に優しいfes.」と「地球に優しい企業」のコラボレーションによって、世の中に環境に優しい活動を発信し、その継続と拡大を目指している。

 今回は「エイ・ネーション2019」の最終公演となる8月17、18日に開催される大阪会場(ヤンマースタジアム長居)で実施した。同社はこのリサイクル活動の啓蒙・推進に貢献するとともに、ペットボトルの回収に協力した来場者に、「エコペット」を使用したボンフィン(ミサンガ)を配布し、地球環境への負荷を低減していきたいという思いを伝えた。

 一方、「マウントフジマキ2019」では、同フェスとして初めての試みとなるPETボトルのリサイクル活動をサポートした。同社は「エコペット」を使用したリストバンド型チケットを提供するとともに、会場内で発生する使用済みペットボトルを回収するエコブースを設置し、社員がエコブースへの誘導や資源ゴミの分別・回収をサポートした。

 回収したペットボトルは「エコペット」へとリサイクルし、資源の循環に協力する。また、リサイクルを身近に感じてもらえるよう、来年「マウントフジマキ」が開催される際には、オフィシャルグッズやリストバンド型チケットに「エコペット」を使用してもらう予定だ。