川崎重工は、神戸工場で建造中の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」の命名・進水式を11日に行った。
全長116m、型幅19mの同船は、世界初の液化水素運搬船。マイナス253℃に冷却し、体積が気体の800分の1となった液化水素を、安全かつ大量に長距離海上輸送するために開発された。来年秋ごろの竣工に向け、今後は、播磨工場で製造している1250㎥の真空断熱二重殻構造の液化水素貯蔵タンクなどを搭載していく。
同船の初仕事は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が進める「未利用褐炭由来水素大規模海上輸送サプライチェーン構築実証事業」となり、来年10~12月に国内試験を行った後、再来年1~3月にはオーストラリアで製造された液化水素を、約9000㎞の航海を経て日本へ輸送する航行試験が行われる予定だ。
水素は、地球温暖化対策のカギとなる次世代のエネルギーの1つとして注目されている。使用時にCO2などの温室効果ガスが発生しない特性をもち、発電や燃料電池自動車などでの活用が期待されている。
この水素が、石油や天然ガスと同じように一般的に利用される社会の実現に向け、川崎重工は2016年に岩谷産業、シェルジャパン、電源開発(Jパワー)と、技術研究組合CO2フリー水素サプライチェーン推進機構「HySTRA」を結成し、NEDOの支援の下、経済的かつ安定的に大量の水素を調達するための、エネルギーサプライチェーン構築に向けた技術開発を進めてきた。
現在、液化水素運搬船のほか、液化水素の受け入れ基地を兵庫県神戸市に、褐炭ガス化設備をオーストラリアに建設している。また2018年からは、岩谷産業、Jパワー、丸紅、豪AGL Loy Yangとコンソーシアムを組み、豪州連邦政府およびビクトリア州政府より補助を受けてガス精製設備、水素液化・積荷基地などを建設している。
川崎重工は水素事業を持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みとして、「つくる」「ためる」「はこぶ」「つかう」のすべてのフェーズで開発プロジェクトを推進。1981年にアジアで初めてLNG運搬船を建造した同社は、液化水素運搬船を世界で初めて完成させ、水素社会の実現を目指す。