《化学企業トップ年頭所感》積水化学工業 加藤敬太社長

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2021年1月13日

 昨年は新型コロナウイルスにより世界が一変し、社会全体で多くの課題が炙り出されてきた。リモートワークの一斉導入など働き方の変化やDXへの対応の必要性も顕在化した。コロナ禍以外でも地球温暖化による災害激甚化や、5G、自動車の電動化、2050年GHG(温室効果ガス)排出ゼロ目標など、大きな、そして非常に速い社会の変化が進行している。このような中、健全な危機感をもって、果敢にこれらの変化や課題に立ち向かうことが、社会の持続的成長への貢献、そして積水化学グループの持続的に成長につながると確信している。

 積水化学グループは創業以来、社会課題の解決に貢献する製品をイノベーションにより生み出し、社会とともに成長してきた。まさに私たちの仕事そのものがESGだと言える。ESGを経営の中心に置いた当社にとっては、社会の変化や課題は私たちが貢献できるチャンスだと前向きに捉え、どう貢献できるかを追求し、その取り組みを加速していきたい。

 中期経営計画2年目となる今年も引き続きコロナ禍が継続する前提で、持続的成長に向けた基盤強化、たゆまぬ構造改革を実行していく。新製品や新規設備投資など将来への仕込みも進めながら、コロナ禍の中で生まれるニーズ、そして回復後の市場をいち早く捉え、中期計画最終年度の目標達成に向けて、ギアを一段上げていく。

 いま世の中では「強い企業、すなわち、生き残る企業」と「そうでない企業」の選別が行われていると認識している。コロナ禍はまだしばらく続く。また、完全には元には戻らない前提での備えも必要だ。健全な危機感をもって、成長に向けて必要なことには聖域なく、果敢に挑戦する覚悟が必要だと考える。各事業では変化に対応した事業ポートフォリオの強化、高付加価値製品へのシフトなどやるべきことにスピードを上げて取り組む。

 一方、次期中期や長期ビジョンの達成に向けた仕込みもおろそかにはできない。持続的成長に不可欠な新事業の創出に向けては、イノベーションの種を仕込んでいくつもりだ。今年は丑年だ。英語で牡牛はBullと言うが、株式相場では牡牛の角が上向きなことからBull上り調子を表す。当社も牡牛のごとく、積水化学グループ全員で力強く上向きに進んでいきたい。

《化学企業トップ年頭所感》石油化学工業協会 和賀昌之会長

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2021年1月12日

 昨年は新型コロナウイルス感染拡大により、世界中が混迷を極めた。一時減少した感染者数も再び増大し、収束の見通しも予断を許さない。ワクチン接種により感染拡大が収束し、経済が本格的な回復軌道に乗ることを期待する。東京オリンピック・パラリンピックも開催され、世界に向けて日本の元気な姿を見せられることを祈る。

 化学産業の重要なテーマの1つが地球温暖化対策だが、菅政権の「2050年までのカーボンニュートラル達成」には、産学官を含めたオールジャパンによる長期継続的な取り組みが重要だ。化学産業が、ケミカルリサイクルや人工光合成など化学の力を生かしたソリューションプロバイダーとして重要な役割を果たすために、積極的な政策支援を期待する。

 世界経済は戦後最大級の減速状態にあり、需要と企業の生産性へのマイナス影響が続く恐れがある。さらに米中関係の緊張状態、不安定な原油価格動向による資源国の経済ひっ迫、中東の地政学的混迷など、国際情勢は多くの不確実要因を抱えている。米国の新政府体制で、自国第一主義から世界的協調路線へ世界経済の潮流が変わり、安定経済へ軸足が戻ることを期待する。

 わが国は環境変化への迅速・機敏な対応が引き続き求められ、石化業界もコロナ禍後を見据えて、正面から内外の課題に取り組むことが重要だ。国内のエチレン設備の実質稼働率は2013年12月以降90%超を維持しているが、「国内クラッカー3基停止による体質改善」「汎用品は海外、国産品は高機能化で差別化」「自動車産業などの主要ユーザーの回復や、マスク、衛生用品、防護服などの対コロナ関連製品や食品包装材への貢献」などが理由だ。石化業界が人々の生活に必要不可欠なエッセンシャル産業と認識され、高稼働が続く今こそ、安定供給責任を果たすための一層の保安・安全の確保が重要だ。

 当協会はわが国の石化産業の持続的発展のため、「保安・安全の確保・向上」「事業環境の基盤整備」「グローバル化対応の強化」や広報活動、IT利活用の推進に積極的に取り組んでいく。皆さまの一層のご支援とご協力をお願い申し上げる。最後に、新型コロナ感染拡大の早期の終息と日本経済の着実な回復・発展を願う。

 

《化学企業トップ年頭所感》日鉄ケミカル&マテリアル 榮敏治社長

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2021年1月12日

 昨年はコロナの1年だった。景気の急減速で、上期は経常赤字37億円となった。下期は回復基調だがコールケミカル事業は厳しく、化学品事業も需給環境が依然厳しい。機能材料事業と複合材料事業は好調な半導体需要と増能、拡販、価格改善でおおむね順調で、新規事業MCNDも出荷を開始し、全社で通期黒字化に取り組んでいる。

 生活スタイルも変化し、テレワークが拡大した。処遇制度や通信インフラを整備し、就業スタイルを多様化させたい。一方で米中対立、通商規制や混乱、日韓関係などの世界情勢を見ると、欧米やアジア市場など、新たなビジネス展開が必要だ。

 こうした中、2021年度から始まる新しい経営計画を策定した。長期視点の5年計画とし、事業ごとの方向性を定め、2025年度の事業構造と収益目標を掲げた。事業の選択と集中でポートフォリオを健全化し、経営を安定させる。コールケミカル事業・化学品事業依存の収益体質から脱却し、機能材料・複合材料・新規事業をもう一方の柱にする。景気変動に強い体質にし、日鉄グループへの収益貢献と、従業員にとって魅力ある会社・職場を目指す。

 初年度の今年は次の2つに注力する。第1は「2021年度の収益回復」だ。商機を逃さず確実に収益を上げ、すべての事業を黒字化する。第2は「経営計画初年度の取り組み」で、確実な第一歩を踏み出す。目標に向けた実行計画策定と進捗管理を毎年行う。業務効率化も、PC環境の活用、情報の共有、取引の電子化、システム構築で進めるが、重要なのは社員一人ひとりの効率化マインドだ。無駄な仕事、改善方法など絶えず自問し問題提起すること。定年延長も始まる。新人事制度をベースに柔軟な勤務体系など、働き方改革にも着手する。

 そして、最大の課題の1つが安全・環境・防災・品質に関わるコンプライアンスだ。最低限の要請だが、昨年は休業・不休業災害、環境・防災事故を起こし過去最悪だった。全社で事故・災害ゼロ、コンプライアンス違反ゼロに取り組む。

 最後に、最も大事なのは働く人々の心身の健康だ。まずコロナ感染予防に万全を期し、職場全体で心のケアに努める。元気に仕事でき、活気溢れる職場を目指す。

 

《化学企業トップ年頭所感》JNC 山田敬三社長

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2021年1月12日

 今年はJNC設立から10周年の節目の年で、中期経営計画「Think & Act 2021」の最終年でもあり、例年にも増して大事な1年となる。

 昨年は新型コロナウイルス一色の1年で、あらゆる分野で社会課題が浮き彫りになった。その中にあって、化学産業はその技術力や役割を改めて示すことができた年だった。当社も長い歴史の中で様々な課題や困難、ハンディキャップに直面しながらも、これを全員の力で克服して創業時からの不変の役割を果たしてきた。今回も社会とともに成長することができる力を蓄え、直面する難題を乗り越えていく準備はできつつある。

 まず、今年度の目標を達成すること。そして4月から始まる中期経営計画の最終年度である2021年度をどのような年にするのか、我々の行動次第で決まることは言うまでもない。「必ず、やり遂げる1年」にする。

 10年、20年、30年先のJNCグループの未来のために、今年は耕すべき畑を耕し、蒔くべき種を蒔く1年だ。より多くの笑顔をもたらす成功を収めるために、そこへの心配りと仕事ぶりを期待している。

《化学企業トップ年頭所感》日本触媒 五嶋祐治朗社長

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2021年1月12日

 昨年は、コロナに明けてコロナに暮れた1年だった。業績の急激な悪化や三洋化成工業との経営統合の中止という、大変厳しい結果に深くお詫びする。

 今年は、中期経営計画期間が3月末で終了する。経営環境の劇的な悪化も加わり目標達成は困難となったが、得たものも多く、それらをどう生かすかが課題だ。SAPサバイバルプロジェクトによるコスト削減、新規事業分野への挑戦、仕事革進活動など、今後さらに応用・展開・進化させていく。

 コロナ禍影響が続くため、4月からの2021年度は単年度予算で進め、次期中長期経営計画は2022年度から開始する。そこでは、既存事業の強みを再強化して安定収益源とし、技術基盤を生かした新規事業の展開で事業領域を広げ、外部環境変化に対する耐性強化を主眼とした成長戦略を構築する。あわせて、規模や収益力の増強に加え、環境負荷低減などサステナブル社会への貢献にもつながる経営計画を目指す。

 まずは足元の業績の立て直しを確実に図る。即効性のある方策だけではなく、将来にもつながる踏み込んだ方策にも着手している。新規事業テーマも個々の事業性を再確認し、優先順位を見極めながら集中的に進めていく。これらの方策で、2年以内の業績回復を図る計画だ。私自身もこれまで以上に危機感をもち、時には大胆な決断をもってやり抜く覚悟で臨むので、皆さんの結束と参画を是非お願いする。いざという時の結束力と集中力、解決力は当社伝統の力だ。今回も必ず結果を出していこう。

 今年は創立80周年を迎え、発行準備中の社史には当社の歴史を再確認できる記録がたくさん載せてある。次の100周年に向けて拠り所とすべき手掛かりを学び、将来に向けて「TechnoAmenity」という当社企業理念を生かし、さらなる成長を果たすための計画に結び付けなければならない。足元の環境や業績は最低の状態で発射台は低く、伸びしろは大きい。このような前向きな気持ちで、この節目の年を元気よくスタートしよう。

 今年も安全・安定操業をしっかりと継続し、皆さんとともに健康で幸多い年となることを祈る。

 

《化学企業トップ年頭所感》東レ 日覺昭廣社長

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2021年1月12日

 昨年は新型コロナウイルス感染拡大で世界中の経済活動が同時に停滞するという事業環境下で、社員全員が日々の事業活動に真摯に取り組んだことに感謝する。経済再開に伴い世界の景気動向は回復基調にあるが、事業環境は依然不透明であり、事業課題と実行計画を全社で共有しベクトルを合わせ、確実に計画を達成していく。

  昨年5月に長期経営ビジョン「TORAY VISION 2030」(ビジョン2030)と中期経営課題「プロジェクト AP-G 2022」を発表し、取り組み始めた。2018年発表の「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」に示す、2050年に向けて東レグループが目指す世界を実現するために、地球規模の課題を革新的な素材の力で解決し企業価値を高めるためのマイルストーンで、「持続的かつ健全な成長」を実現するための統一指針だ。

 「AP-G 2020」は2020年度からの3年間にやるべき成長実現のための中期課題。主題の「強靱化と攻めの経営」は、持続的かつ健全な成長に向けた「攻めの経営」と、財務体質強化など「攻めのための守り(強靭化)」を両輪で実行するもの。新型コロナウイルス感染拡大による生産活動・消費行動・物流の停滞など、不確実性が増す事業環境下で、経営基盤を一層強化する方針だ。

 「ビジョン2030」の策定に合わせて、「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」という企業理念をはじめとする経営思想を「東レ理念」として体系化した。これは創業以来継承されてきた先人の意思と経営姿勢で、我々が受け継ぎ将来に伝えていく東レグループの財産だ。持続的成長をグローバルに実現するため、「東レ理念」の理解と共有に取り組み、全社員が東レグループで働くことに誇りをもてる職場風土の醸成を目指す。

 我々は素材メーカーとしてこれまでの経営姿勢を貫き、革新技術で新市場創出を進め、付加価値の高い製品を世界に提供していく。今年も東レグループ社員一人ひとりが先端材料で社会を変えるという高い志をもち、「事業を通じた社会貢献」という創業以来の「東レ流の経営」を実践し、豊かな社会の実現に貢献することに誇りをもって仕事に取り組むことができるようにしていきたい。

 

《化学企業トップ年頭所感》クラレ 川原仁社長

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2021年1月12日

 新型コロナウイルス感染拡大の世界経済への影響は今後もしばらくは続くと想定され、今年後半からの回復を期待する予測もあるが、まだ先行きは不透明といえる。移動や交流が制限される中ではあるが、できないことを嘆くのではなく、それらを解決する適切な手段を見出だし、どうすれば新しい形や方法で目的を達成できるかを考え、実践することが求められている。グループ社員の力を合わせて、難局を乗り越えていきたい。

川原社長
川原社長

 2021年度は、当社が2026年に迎える創立100周年に向けて、2022年度から始まる次の中期経営計画を策定する年にあたる。これまでに決定・着手した将来への仕掛け、戦略的投資を着実に遂行し成果を獲得するとともに、コロナ禍の影響で揺らいだ稼ぐ力の再検証を行い、着実な収益力の向上を図る一方で、構造的に収益力に懸念がある製品や事業分野については本質的な改善・改革も辞さない姿勢で臨まなければならない。

 次期中計に向けては、ITの戦略的活用によりデジタル・トランスフォーメーションを全社的な取り組みとして推進し、業務プロセスの改革や顧客起点の事業戦略を加速することで、競争優位の強化を目指す。

 さらには、持続可能な自然環境への貢献、生活環境の向上などの諸課題に対しても、企業としてどのように取り組むか、サステナビリティの観点を十分に踏まえて策定の議論を進める必要がある。「世のため人のため、他人(ひと)のやれないことをやる」という当社創業以来の企業理念を具体的に実行し、クラレらしいやり方で社会への貢献を果たすことが求められている。クラレグループの皆さんの自発的、積極的な参画と活発な議論を経て、クラレグループが一つになって進むべき方向性を示せるように充実した1年としていこう。

 また、クラレの新社長として、当社グループを「安全で、安心して働ける会社」「前向きな姿勢で活力と創造力のみなぎる企業」「誇りをもって働ける会社」にしたいと考えている。2026年の創立100周年と、さらにその後に続く将来を見通したクラレグループのあるべき姿を描き、それを実現するために努力をすることは、大きな挑戦であり喜びでもある。クラレの長い歴史の中でも、大きな節目となるであろう今後の数年間を皆さんとともに歩み、大きな目標に向かって邁進したいと考えている。

 

《化学企業トップ年頭所感》クレハ 小林豊社長

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2021年1月8日

 世界の新型コロナウイルス感染者は約8000万人におよび、ワクチンの開発と供給が急がれている。接種が行き渡るまで、私たちは感染拡大防止に取り組まなければならない。

 昨年は、社会にとって想定外の事態が常に発生しうること、企業にとって永続的な安定や繁栄は保証されたものではないということ、を痛感した1年であった。激変する世界にあって、当社が持続可能(サステナブル)な企業となるためには、技術立社企業として「クレハらしさ」をより強固にする必要がある。そのためには、外部環境を常に意識し、他に先駆けて変化に順応するとともに、「やり抜く文化(コミットメント)」を根付かせることが一層重要となる。

 安定した事業運営の実現に全力を尽くしつつ社会課題の解決に貢献し、差別化された製品・技術を開発して、一層の企業価値向上に取り組んでいく。

《化学企業トップ年頭所感》トクヤマ 横田浩社長

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2021年1月8日

 昨年は、新型コロナウイルスがもたらしたパラダイム転換の年ということに尽きる。現代文明をもってしても防ぎきれない自然の猛威を目の当たりにし、地球温暖化防止の動きが大きく進んだ。社会の分断や中間層の没落がクローズアップされ、行き過ぎた新自由主義の見直しの気運が高まった。テレワークの進展は従来の働き方や組織・人事システムのあり方に課題を突き付け、緊急経済対策の支給遅延が行政改革を迫るなど、あらゆる社会経済システムの構造的課題が浮き彫りとなった。

 当社にとって最大の環境変化は、「2050年カーボンニュートラルを目指す」という政府方針だ。当社も、世界の低炭素化の政策や新技術の調査・検討などを通して、低炭素化ストーリーを策定した。今年4月から始まる新中期経営計画は、それを色濃く反映している。日本の人口減少からも伝統事業の国内市場の縮小は不可避で、成長事業の拡大とニュービジネスの創出なくして会社の発展は望めない。

 石炭火力発電を競争力の源泉とする従来の戦略を根本的に見直し、「ネットカーボンゼロ」を前提に、2050年に健全に存続できる会社のありようをイメージし事業構造の転換を進める。具体的には「環境・健康・電子」をキーワードに成長事業を底上げし、海外ビジネスを拡大し、成長事業を主軸にした事業構造を目指す。一方、伝統事業はこうした活動を支えるキャッシュカウとして、エネルギー効率を最大限に高め低炭素化を図りつつ経済性を維持し、存在意義を追求する。

 成長事業の拡大には、マーケティングとイノベーションの機能強化が最大のポイントだ。また伝統事業、成長事業のいずれにおいても新技術や新プロセスの開発・導入は必須で、DXなどを活用して仕事を革新し、世界と戦う競争力を実現しなければならない。

 全役職員がより能力を高め、仕事へのあくなき情熱と遊び心をもって、勇気を出して一歩前に踏み出せれば、開発主導型企業へ脱皮し事業構造を転換できると確信する。先輩が残した仕事を土台に、将来のトクヤマを支えてくれる人々のための新しい土台を作ることが我々に課せられた最大のミッションだ。力を合わせて新しいトクヤマを作っていこう。

 

《化学企業トップ年頭所感》帝人 鈴木純CEO

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2021年1月8日

 新型コロナウイルスは社会の様相を大きく変え、帝人グループの事業も大きな影響を受けた。2021年を迎えたが大きな改善は見られず、ウイズコロナの環境をニューノーマルと捉え、感染予防を前提とした生活や業務を続けることが必要だ。負の影響だけではなく、遠隔医療などデジタル化で急速に進展する可能性が高まった事業もある。こうしたチャンスを確実に捉えるために、できることを可能な限り前倒しで進めたい。

 グローバル展開のため、各国の行動制限などの影響を受けやすい事業もある。特にマテリアル事業は大きな影響を受けたが、繊維・製品事業は医療用防護具など社会と事業業績に大きく貢献した。ヘルスケア事業やIT事業の下支え、北米自動車産業の想定以上の回復など、通期業績見通しは新型コロナ発生前の想定に近づきつつある。

 中期経営計画の取り組むべき社会課題は長期的視点で選択しており、長期ビジョンや戦略に大きな変更はない。各施策は、足元の状況を把握し最善な方法を検討して俊敏に行動に移す、変化への対応力が求められる。未来の社会から見て正しいと思える価値を提供する方法やタイミングは、再確認してほしい。

 社員に意識してほしいことは、まず「安全の確保」だ。安全に対する意識向上を徹底し、事故につながる要因を排除する。次は「認知力と俊敏性」で、変化の速い社会で状況を正しく認知し素早く対応する俊敏性だ。異なる視点や認知力をもつ人たちと話し、異なる意見に耳を傾け、正しいと思える認知を得たら速やかに行動に移し、変化する社会に合ったイノベーティブな価値の創造や提供につなげる。そして「リスクの捉え方とリスクテイク」だ。不確実な世界では、リスクを取らずに今までの事業環境に留まるという考え方では適応できない。イノベーティブな価値提供のためにきちんとリスクテイクした試みは、失敗とはしない形にしたい。

 我々は「未来の社会を支える会社になる」ため、持続可能な社会の実現に貢献することを目指している。社員が一丸となりたゆまぬ変革と挑戦を続け、社会とともに歩んでいくこと、さらには社会に先鞭をつけていくような会社になるということを新年の抱負としたい。