日本化学会 小林新会長「化学の力で世界的課題を解決」

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2020年5月26日

 日本化学会は25日、定時総会において、川合眞紀会長(分子科学研究所所長)の退任に伴い、三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長を新会長に選任した。

小林喜光新会長
小林喜光新会長

 同日、開催されたオンラインによる会長就任会見の中で小林新会長は「任期の2年間、日本化学会の一層の発展に尽力していく」と述べた。化学が果たすべき役割ついては、「社会では、グローバル化やデジタル化、ソーシャル化の中で、既成概念が覆されるような急激な変化が起きている。それに加え、昨今のコロナウイルスの感染拡大に翻弄されている。感染症対策にはデジタル化が必要だが、日本では

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産総研 高性能高信頼性n型有機半導体材料の開発に成功

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2020年5月25日

 産業技術総合研究所(産総研)は、東京大学、筑波大学、北里大学と産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリが、高信頼性かつ高電荷移動度、大気、熱、バイアス(動作電圧)ストレス耐性を併せ持ち実用に耐えうる塗布型n型半導体材料の開発に世界で初めて成功した。

 この材料は、新しい分子設計指針に基づく電子輸送性BQQDI(ベンゾイソキノリノキノリンジイミド)骨格を持つ塗布型n型有機半導体材料で、IoT社会のキーデバイスである電子タグやマルチセンサーの実用化を加速させることが期待される。

 現在汎用される主としてシリコン系の無機半導体は、電荷移動速度は高いが、重く、硬く、製造にも300~1000℃の高温が必要となる。一方、軽量かつ柔軟で、印刷による低温作製によりコストと環境負荷を大幅に軽減した有機系半導体が注目され、すでに無機半導体のアモルファスシリコンより1桁高い10㎠/V・s級の正孔移動度を持ち、実用に耐える環境ストレス耐性を示す印刷可能なp型半導体が報告されている。多種多様なハイエンドデバイス開発のためには、p型と同程度の安定性、プロセス性およびデバイス性能を併せ持つn型有機半導体が求められていた。

 こうした中、今回、ペリレンジイミド骨格に窒素を導入したBQQDI骨格を持つ有機分子が、大気下で安定なn型有機半導体の母骨格となることを発見。特に、フェネチル基を導入したPhC2‐BQQDIの単結晶が三㎠/V・sの電子移動度および高い信頼性因子を示すことを見出だした。大気下で6カ月以上安定にデバイスを駆動することが明らかとなり、熱ストレスやバイアスストレスに対しても極めて高いデバイス安定性が実証された。

 さらに、この優れた半導体特性が、無機半導体同様のバンド伝導機構に基づくことも実験的に証明された。分子力学計算と伝導計算からも、窒素を介した多点水素結合が分子間振動を抑制し電子移動度を向上させていることが明らかとなった。また、CMOS論理回路に応用することにも成功。

 BQQDI骨格は性能・耐性ともに前例のないn型有機半導体で、次世代エレクトロニクスの研究と産業の戦略材料になるだけにとどまらず、曲がるディスプレー、電子タグ、マルチセンサー、熱電変換素子、薄膜太陽電池などの開発への貢献が期待できる。

 なお、PhC2‐BQQDIは、来月上旬から富士フイルム和光純薬から試薬として販売される予定。

 

北里大学・花王 新型コロナに感染抑制能を持つ抗体を取得

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2020年5月25日

 北里大学大村智記念研究所、EME(Epsilon Molecular Engineering)、花王安全性科学研究所の研究グループはこのほど、新型コロナウイルスに対して感染抑制能(中和能)を持つVHH抗体の取得に成功したと発表した。新型コロナウイルス感染症の治療薬や診断薬の開発に繋がることが期待される。

 世界各地で新型コロナウイルス感染症拡大が大きな課題となる中、治療薬や検査法の開発が望まれている。これら課題を解決する手段の1つとして求められているのが、新型コロナウイルスと特異的に結合する抗体になる。こうした中、3者は協力し、新型コロナウイルスに結合するVHH抗体の作製に取り組んだ。

 VHH(Variable domain of Heavy chain of Heavy chain)とは、ラクダ科動物由来の抗体であり、高い安定性や微生物による低コスト生産が可能なことから注目が集まっている。

 今回の研究成果として、①花王はEMEが持つハイスループットVHH抗体スクリーニングを可能とするcDNAディスプレイ技術の提供を受け、ヒト培養細胞で発現させた新型コロナのS1たんぱく質を標的分子に用いたスクリーニングを実施し、候補となるVHH抗体の配列情報を取得、②花王は取得した配列情報から得られた候補遺伝子の人工合成を行い、微生物によるVHH抗体生産を行い、VHH抗体が標的分子と結合することを確認、③北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学Ⅰ研究室(片山和彦教授)では、候補VHH抗体の新型コロナ粒子への結合と、中和活性の有無を確認することで感染抑制能を評価。

 その結果、VHHを添加した場合に新型コロナの細胞への感染が抑制されていることを確認し、取得したVHH抗体は新型コロナに結合するだけでなく、感染抑制能を持つことが明らかになった。

 今回の研究成果は新型コロナウイルスの治療薬や検査薬の開発に繋がることが期待できる。今後、今回の成果を世界中で活用できる方法について検討し、発信していく考えだ。

 

ダイセル 「国連グローバル・コンパクト」参加企業に

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2020年5月22日

 ダイセルは21日、国際連合(国連)が提唱する「国連グローバル・コンパクト」に署名し、4月29日付で参加企業として登録されたと発表した。また同日付で、日本のローカルネットワークである「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入している。

 「国連グローバル・コンパクト」は、企業や団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することで、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み作りに参加する自発的な取り組み。世界160カ国以上の1万4000を超える企業や団体(5月現在)が参加している。

 同社は昨年6月に「サステナブル経営推進室」を設置し、持続可能な社会に貢献する体制を強化。「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の四分野からなる「国連グローバル・コンパクトの10原則」を支持し、今後も持続可能な世界の実現に向けて活動していく考えだ。

石化協 森川会長「厳しい局面下でも安定供給が重要」

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2020年5月22日

 石油化学工業協会は21日、今年で2年間の任期満了を迎える森川宏平会長(昭和電工社長)の退任に向けた挨拶文を発表した。

 初めに、協会が取り組む3つの重要課題について振り返った。①「保安・安全の確保」では、経営層の強い関与を重要視し、保安に関するトップ懇談会、事業所長の保安に関する意見交換会を実施。安全文化の醸成では、保安推進会議・保安表彰式、保安研究会、産業安全塾などの開催により、情報や教訓の共有化、危険に対する感性の向上、人材育成支援などを進めた。

 スマート化に向けた取り組みでは、IoT、AIなどの最新技術について会員各社向け勉強会や官民協同テーマ検討などに注力。森川会長は「新技術は今後さらに導入が進むと思われ、保安の向上、操業の安定化に寄与することを期待している」とし、「会員各社のプラントにおいては、幸いにして、死傷者を伴う重大保安事故の発生は無く、今後もこのような状況の継続と軽微な事故件数の低減を望む」と強調した。

 ②「事業環境の基盤整備」では、わが国石化産業が国際競争に打ち勝ち、持続的に発展していくために、税制改正や規制改革の実現に取り組んだ。第3次石環検の答申を受け、昨年12月に「今後の定期修理の在り方に関する報告書」をまとめている。

 ③「グローバル化対応の推進」では、アジア石油化学産業会議(APIC)に協力参加。また、中国石油・化学工業連合会(CPCIF)、日化協との共催で日中化学産業会議を毎年開催した。「交流を通して、同国の石化産業への取り組みの真剣さと技術的進化を肌で感じた。経済成長のみならず環境に対する意識の大きな変貌を目の当たりにし驚かされた」と感想を述べた。

 最後に森川会長は、「米中貿易摩擦の激化、原油・中東情勢など国際情勢も不確実性を増している状況だ。わが国経済は、コロナ禍の影響により、厳しい局面に直面している。今後、石化製品の需要は、一部分野で堅調さが見られるが、国内自動車生産の本格的な減産が実施されるなど、工業用途向分野のさらなる低下が見込まれる。新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく『緊急事態宣言』が徐々に解除されるとともに、国内経済活動が再開していくことが期待されるが、依然、第2波リスクは残るなど、新型コロナウイルスとの共存が求められる時期がしばらく続くことが予想される」と懸念を示した。

 そして「このような状況にある中、安全で安定した国民生活を支えるためにも石化業界における製品の安定供給は引き続き極めて重要だ」と訴えた。

 なお、次期会長には、三菱ケミカルの和賀昌之社長が推薦され、7月2日に開催予定の定時総会で選出される予定となっている。

JSR 東大理物と包括連携、新技術・新材料の創出を図る

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2020年5月22日

 JSRは21日、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻(東大理物)と包括的連携に合意し、4月1日より、共同研究を開始したと発表した。東大理物は包括連携を通して、社会に深く浸透した様々な材料の機能の理解を深め、その探究を通して普遍的真理と新たな学問領域を見出だしていく。

 JSRはその成果として、アカデミアと産業界の融合による、新たな高機能材料を社会に導出する。また、包括連携にはフェローシップも含まれており、このような取り組みは東大理物130年以上、JSR60年以上の歴史の中で、互いに初の試みとなる。

 具体的な取り組みとして、①東京大学本郷キャンパス理学部1号館に協創オフィス「JSR・東京大学協創拠点CURIE」を設置。名称のCURIE(キュリー)は、物理学賞と化学賞、2度のノーベル賞を受賞したマリ・キュリー氏の名にちなみ、物理と化学の融合による大きな研究開発成果の創出を願い命名した。加えて、研究開発で重要な「好奇心(キュリオシティ)」、「知性(インテリジェンス)」および「感性(エモーション)」の意味も包含している。

 ②世界に羽ばたく人材育成のため、物理学専攻の博士課程学生を対象とした給付型フェローシップである、「JSRフェローシップ」を創設。今後ますます重要になる、理論、実験に限らず幅広い物理学を通して、学術界、産業界を発展させうる人材を支援することを目的としている。

 ③サイエンスと産業技術の融合による新技術・新材料の創出。JSRは製品の機能発現原理を深く理解し、サイエンスに基づく、物理と化学の融合により、非常に高い差別化性能を持つ製品開発を推進していく。さらに、東大理物は、この連携の中で多様な現象の探究と物理的視点に立った学理追求を行うことで、次世代の科学と応用の基盤となる成果を世界に発信していく。

 JSRの川橋信夫社長兼COO兼CTOは「当社製品のさらなる性能向上には、自然科学に基づいた原理原則を理解することの必要性を認識していた。東大理物は、素粒子から光、物性、宇宙、さらには、生物まで、あらゆる分野を網羅する、日本最大かつ世界でも最大規模の物理学研究の拠点であり、JSR製品の機能を飛躍的に向上させるサイエンスを共に構築できる最適なパートナーと考えている」とコメント。

 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻長の常行真司教授は「包括連携を通じて、材料分野だけでなく、幅広い科学分野で成果を創出し、さらには、基礎研究だけでなく社会の課題解決にも意欲的な人材の育成と輩出を目指す」と述べている。

住友化学、クラレ、旭化成建材の3社 日化協技術賞を受賞

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2020年5月21日

 日本化学工業協会はこのほど、優れた化学技術の開発や工業化によって化学産業ならびに経済社会の発展に寄与した事業者を表彰する「日化協技術賞」を発表。

 総合賞に住友化学の「低環境負荷・併産品フリーのクメン法プロピレンオキサイド(PO)製造プロセスの開発と工業化」、技術特別賞にクラレの「プラスチックシンチレーションファイバ(PSF)の開発と工業化」、環境技術賞に旭化成建材の「高性能発泡プラスチック断熱材「ネオマフォーム」「ネオマゼウス」の開発」を選定した。

 住友化学のPO製造技術は、クメンを循環利用し、副生物が実質的に水のみでPOだけを生産する世界で初めて工業化されたクメン法PO単産プロセス。独自開発のエポキシ化触媒と組み合わせることで、非常に高いPO収率と分離精製の省エネ化を達成し、優れた運転安定性を実現できるという特長が評価され、受賞に至った。

 クラレのPSFは、独自製法で開発したプラスチック製光ファイバー。コア(内側)は蛍光剤入りのポリスチレン樹脂、クラッド(外側)はメタクリル系樹脂の多重構造で、放射線が当たると発光する性質を持つ。高い発光量、透明性、優れた線径精度は世界中の研究者に認められ、放射線検出用素材のデファクトスタンダードとなっている。今回、PSFの技術開発と製品性能、世界的な研究機関への安定供給実績、民生用途への拡大などが評価された。

 旭化成建材の高性能発泡プラスチック断熱材は、フロン系ガス不使用や断熱性を長時間維持するといった課題を克服した製品。旭化成建材は、フェノール樹脂組成の抜本見直しを行い、フェノール樹脂発泡体の脆さ改善と強度の大幅向上を達成。さらに独自の発泡ガス組成や添加剤などの最適化により、革新的なフェノールフォーム発泡成形技術の開発に成功した。断熱材の開発が、環境負荷低減に顕著な効果を持ち、わが国の化学技術の進歩と産業の発展に大きく寄与するものとして評価された。

 

東レ RO膜の高性能化に寄与する重要知見を獲得

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2020年5月19日

 東レはこのほど、理化学研究所の開拓研究本部前田バイオ工学研究室・杉田理論分子科学研究室との共同研究を通し、逆浸透膜(RO膜)の透水・物質除去機能の向上に寄与する重要知見を獲得した。

 透水・物質除去機能を担うポリアミド(PA)分子同士が形成する相互作用のネットワークの強さと、水分子の拡散挙動の関係を明らかにしている。東レは、解析結果を活用し、かん水淡水化、廃水再利用および廃水をゼロ化するZLD(Zero Liquid Discharge)向けの革新省エネルギーRO膜を始めとした、先端分離材料の開発を加速していく方針だ。

 世界では、地球規模の水不足・水質汚濁などの問題が深刻化しつつあり、安全な水の確保はSDGsの重要なテーマ。RO膜を用いた浄水技術は、持続可能な水資源を確保するための技術として、世界各地での採用が進んでいる。しかし、従来のRO膜では、造水量を高めると水質が低下してしまうトレードオフの関係があるため、高品質の水を得るための除去性能と省エネルギーを実現する透水性能の向上には、RO膜中での水分子の拡散挙動の詳細解明が望まれていた。

 研究グループは、RO膜のPA分子構造でのPA分子同士および水分子との相互作用を解析し、PA分子集合体中の水分子の集合状態と運動性に及ぼす影響の解明に成功。その結果、PA分子同士が形成する相互作用のネットワークが疎なほど、水分子同士の相互作用が促され、運動性の高い水分子の集合体が形成されることを確認した。

 東レはすでに東京大学との共同研究によりPA分子集合体中のPA分子と相互作用して動きにくい「束縛水」と、運動性の高い「自由水」の関係性を解明しており、自由水は束縛水と比べて10倍以上速く拡散することを見出だしている。これらの研究成果を応用し、微細な細孔の構造とその中での水の動きを精密に制御できれば、透水・除去性能に優れた高性能RO膜が得られる。

 なお、今回の研究成果は、科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」の支援を受け、「世界の豊かな生活環境と地球規模の持続可能性に貢献するアクア・イノベーション拠点」の事業・研究プロジェクトによって得られた。

 東レは今後も、地球上の誰もが十分にきれいな水を手に入れられる社会の実現に寄与するため、産学官の連携により、世界各地への社会実装を目指して研究・技術開発を推進していく。

 

日化協 淡輪会長「化学がグローバルな社会課題を解決」

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2020年5月18日

 日本化学工業協会は15日、定例となる淡輪敏会長(三井化学会長)のオンラインによる会見を開催した。淡輪会長は今月で2年の任期を満了するため今回が最後の会見となる。

 淡輪会長は、「新型コロナウイルスの感染拡大は、生活や企業活動に大きな影響を及ぼしている。化学産業にとって最も重要な課題は工場の安全操業を維持することであり、従業員の感染防止に最大限努めている。

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