産総研など 細胞パターニングを効率化するデバイス作製

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2020年6月8日

 産業技術総合研究所(産総研)と理化学研究所(理研)の共同研究グループはこのほど、水溶性タンパク質のアルブミンを原料としシリコーンゴムの鋳型で型取りすることにより、細胞培養用の微小デバイスを簡単に作製することに成功した。

 微小デバイス開発のための工学的成果にとどまらず、微小デバイスを用いた細胞培養により、微小環境が細胞に与える影響や、細胞と細胞接着基材表面のタンパク質との相互作用の理解への貢献が期待されている。

 細胞生物学では、細胞が接着する基材表面を化学的処理などにより、細胞が接着する部分としない部分に分画する、細胞接着エリアの制御「細胞パターニング」という手法が行われる。理研が開発してきた寒天由来のアガロースを用いた細胞パターニング法による細胞培養用デバイスは、長期間の細胞培養でも安定していたが、作製(乾燥)に3日以上かかることが課題だった。

 今回、半導体製造に使われるフォトリソグラフィー手法に注目し、微小な溝を彫ったシリコーンゴム鋳型を作り、材料の流入挙動を解析。材料溶液の流入量は主として溝のサイズに依存し、溶液粘性とは無関係に多様な材料が使用できることが明らかになった。

 産総研が開発した「架橋アルブミン」水溶液は、いったん乾燥すると水には溶けず、固形材料に加工できる。これを使い、1日以内で細胞パターニング用の微小デバイスを作製。7日間の細胞培養にも耐えた。またアガロース同様、表面に細胞が接着しないことも確認できている。

 今回使用した架橋アルブミンを利用すれば、細胞培養用の微小デバイスが短期間で作製でき、実験の効率化が図れる。さらに、同技術を「細胞接着性」の水溶性タンパク質に展開することで、細胞の形状や発生・分化といった細胞機能と細胞接着性タンパク質の、相互作用理解のための特定構造・形状を持つ細胞接着性微小デバイスへの応用も可能だ。

 理研では、シリコーンゴム鋳型などの微細加工デバイスサービスを提供しており、産総研の架橋アルブミンと組み合わせることで、世界中の研究者が同手法に容易にアクセスできるとしている。

 

SEMI パワー化合物半導体の投資額、21年に最高額へ

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2020年5月28日

 SEMIはこのほど、世界の半導体前工程ファブのパワー半導体と、化合物半導体デバイス向け投資が、最終製品の需要回復により2021年までに59%もの急成長を遂げて、この製品分野では過去最高となる69億ドルに達するとの見通しを発表した。

 今年は、後半からの需要回復が年間の下げ幅を緩和し、ファブが新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)からの回復の波に乗ることで、8%減まで縮小すると予測。パワー・化合物半導体デバイスは、電力を制御するために、コンピューティングや通信、エネルギー、自動車といった数々の産業で使用されている。 COVID‐19の拡大を抑制するために「外出禁止(ステイホーム)」が世界中で求められる中、サーバー、ラップトップPCなどのオンライン通信の中核となる電子機器の需要が急増している。

 「SEMIパワー及び化合物半導体ファブアウトルック2024」は、800以上のパワー・化合物半導体関連の設備/ラインのデータを収録し、その設備投資と生産能力を2013~24年までの12年間にわたって網羅。2019年については、804の設備/ラインの合計で200㎜ウェーハ換算月産800万枚の生産能力が確認されている。

 今後2024年までに生産を開始する38の新規設備/ラインが全体の生産能力を20%押し上げ、月産能力は970万枚に達する見通し。地域別に見ると、2019~24年の間に最も成長が著しいのは中国で、パワー半導体の生産能力は50%、また化合物半導体の生産能力は87%増加する。同期間にパワー半導体のファブ生産能力が大きく増加するのは、欧州/中東と台湾、また、化合物半導体のファブ生産能力が増加するのは米国と欧州/中東が見込まれる。