BASF 水系バリアコーティング製品の中国生産を開始

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2021年6月11日

 BASFはこのほど、ヒートシール可能な液体バリア用水系フィルム形成ディスパージョン「JONCRYL(ジョンクリル)HPB」を同社上海浦東工場で生産すると発表した。消費地近くで生産することで、省エネルギーとCO2排出量削減を実現する。

 「ジョンクリル HPB」はFDA(米国食品医薬品局)に食品接触材料として認可され、テイクアウト用のボックスやカップなどの食品包装に使用できる。ポリエチレン樹脂系ラミネートと同等の性能だが、使用後の再利用が可能で、製紙工場で生産されるバージンパルプの一部を古紙パルプに置き換えることで環境影響を最小限に抑えられる。

 近年、アジア太平洋地域では水性バリアコーティングの需要が大幅に増加。食品や飲料のブランドオーナーと食品包装資材メーカーは、より持続可能なソリューションの導入に取り組んでおり、同社は市場のニーズに対応しグローバルと地域の顧客基盤をサポートするために、グローバル生産拠点を拡大している。ディスパージョン&レジンのマーケットリーダーとして、革新的な製品を通じて安全で持続可能なソリューションの開発をサポートしていく。

NEDO 航空機エンジン向け合金開発と材料DBの構築

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2021年6月10日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、航空機エンジン用国産材料の競争力強化に向け、革新的な合金開発と材料データベースの構築を行う2件の研究開発事業に着手した。

 CO2排出量削減に向け、低燃費・高性能の航空機が求められている。その中で、航空機エンジンには高い安全性や品質保証体系、航空当局の認証管理などが要求されることから、欧米企業を中心とした寡占状態にある。日本の航空機エンジン産業は国際共同開発への参画を通じて事業規模を拡大してきたが、さらなる拡大には技術革新による優位性を維持し、設計段階から開発に携わる戦略的パートナーとなることが不可欠だ。

 今回、航空機エンジン用材料開発のための「革新的合金探索手法の開発」と、国産材料の競争力強化のための「航空機エンジン用評価システム基盤整備」事業に着手。高温・高圧環境に耐え、軽量で耐熱性、耐摩耗性、熱伝導性、導電性などに優れる合金の開発には、金属元素の組み合わせとプロセス条件決定のための膨大な実験が必要で、天文学的な時間がかかる。そこで合金探索に必要な良質のデータを大量かつ高速に収集し、マテリアルズ・インフォマティクスによるデータ駆動型合金探索手法を開発し、航空機エンジンへの適用可能性を模索する。

 一方、航空機エンジンには材料段階から厳しい認証基準などがある。国産材料の競争力を高め、材料データを効率的に得るために、関連企業や研究機関などと連携してデータベースを整備し、それに基づいて実際に部材を製造し性能評価試験などを行う。

 参加企業・機関はJX金属、IHI、川崎重工業、三菱重工航空エンジン、本田技術研究所、三菱パワー、産業技術総合研究所、金属系材料研究開発センター、物質・材料研究機構、筑波大学で、プロジェックトリーダーは東京大学大学院工学系研究科の榎学教授が務める。新合金を開発し、認証取得に必要なデータベースを構築し、航空機エンジンへの適用と日本の航空機エンジン産業の国際競争力強化を目指す。新合金による軽量化とエンジン高効率化による燃費改善で、2040年に約93万tのCO2排出量削減が期待される。

カネカ 生分解性ポリマーの発泡成形品が魚箱に採用

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2021年6月10日

 カネカはこのほど、「カネカ生分解性ポリマーGreen Planet」を発泡加工した「Green Planet発泡成形品」を開発し、水産事業者に鮮魚用魚箱として採用されたと発表した。

カネカ生分解性ポリマー Green Planet™(発泡ビーズ)
カネカ生分解性ポリマー Green Planet(発泡ビーズ)

 地球規模でのプラスチック汚染が問題となり、海洋マイクロプラスチック問題への対策が急がれる中、今回の採用は海洋汚染対策への直接的ソリューションとしての扉を開くもので、水産漁業関係者からの高い関心を集めている。

 「カネカ生分解性ポリマー」は同社の発酵技術と高分子技術を融合させ開発した100%植物由来の生分解性ポリマーで、特に海水中生分解性の「OK Biodegradable MARINE」認証を得ている。ストローや化粧品容器など様々な分野で採用が進んでいる。今後、発泡性ポリスチレンビーズに替わる製品として、水産漁業・農業分野での生鮮食品輸送容器、養殖用フロートなどの漁業資材、また発泡ビーズを詰め物としたクッション、家電・家具の緩衝包装材などの製品開発を加速し、環境対応製品として販売を強化する。

魚箱(Green Planet™ 発泡成形品)
魚箱(Green Planet 発泡成形品)

 同社はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し「循環型社会への貢献」を掲げており、環境負荷低減に貢献する素材として用途展開を加速し、環境問題へのソリューションを提供していく。

 

三井化学 新素材「無孔調湿フィルム」の市場開発を開始

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2021年6月10日

 三井化学は9日、無孔でありながら湿度をコントロールできる新素材フィルム「無孔調湿フィルム」(開発品)の市場開発を開始したと発表した。 

  同開発品は、液体や雑菌などの異物を通過させずに、湿度のみの調整が可能な素材。透湿性の高いフィルムにウレタンフィルムがあるが、同素材は低湿度でも一定の高い透湿性を示す。 

 一方、開発品は、低湿度の条件下では一般的なポリオレフィンフィルムのように水蒸気をほとんど通すことなく、高湿度の条件になるにつれ水蒸気を徐々に通しやすくなるという特異的な性能をもつことから、「まるで呼吸するかのように」空間の湿度をコントロールできる。

 原料は特殊ポリオレフィン。調湿性のある多くの素材が複合素材なのに対し、単一素材のためリサイクル性が高いといった特長も備える。用途には建築素材やアパレル・防護服などを想定。屋根材や壁材に使うことで、室内の湿度が高まる夏場は湿気を逃がし、逆に乾燥状態になりやすい冬場は湿気を逃さず湿度を保てることが期待される。また、不織布と貼り合わせて防護服などに利用すれば、患者の血液や雑菌を通さずに医療従事者の汗などの湿度を逃がすことで、医療活動の快適化につながる。

 コロナ禍を機にリモート社会へのパラダイムシフトが始まった今、生活空間の快適さの重要性がますます高まると想定される。三井化学は「無孔調湿フィルム」をこうした要望へ貢献できる素材だと捉え、新たな市場開拓を目指す。

 なお開発品は、第3回感染症対策総合展(6月17~19日、ポートメッセ名古屋) 、第9回高機能プラスチック展(6月23~25日、インテックス大阪)への出展を予定する。

 

日本触媒 三次元細胞培養容器で膝関節症の臨床研究を開始

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2021年6月10日

 日本触媒は9日、三次元細胞培養容器「ミコセル」で作製した脂肪由来幹細胞凝集塊の変形性膝関節症に対する臨床研究について、共同研究先のそばじまクリニック(大阪府東大阪市)で二例の被験者への投与が行われたと発表した。

「ミコセル」を用いた変形性膝関節症に対する臨床研究

「ミコセル」は、日本触媒が独自技術により開発した三次元細胞培養容器で、粒子径がそろい生体内での状態に近い細胞凝集塊を多量に作製できるのが特長。両者は、「ミコセル」によるヒト脂肪由来幹細胞凝集塊の変形性膝関節症に対する安全性、および有効性のデータ取得を目的とした臨床研究を実現するため共同研究を今年2月から実施してきた。

 今回の臨床研究では、患者自身の脂肪由来幹細胞を「ミコセル」で細胞凝集塊とし、これを膝関節内に注射で投与する。計5人の患者へ投与して来年3月までに細胞凝集塊の安全性を確認する計画だ。なお、臨床研究は、そばじまクリニックが「第2種再生医療等計画」を再生医療等委員会へ申請、昨年6月に承認され12月に近畿厚生局に受理された。両者は臨床研究を通して、細胞凝集塊を使った治療の実用化と再生医療のさらなる発展に向けて貢献していく。

産総研 有機シラン合成用高効率ロジウム錯体触媒を開発

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2021年6月9日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が進める「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」について、産総研が有機ケイ素原料を効率的に合成できるロジウム錯体触媒を開発したと発表した。副生成物の発生が少なく精製工程が簡略化でき、シランカップリング剤の基幹原料を収率99%以上で合成できる。

 シランカップリング剤は無機材料と有機材料を結合する性質をもち、高機能複合材料に広く利用されている。様々なシランカップリング剤を安価に供給することで、エコタイヤや半導体封止樹脂、FRP(繊維強化プラスチック)などの高機能複合材料の低価格化が期待できる。多くのシランカップリング剤の基幹物質となるクロロプロピルシランは、白金やイリジウム錯体触媒を使って、ヒドロシランと塩化アリルの反応により合成されるが、収率は70~80%程度で、複数の副生成物が生成する。

 今回、触媒構造と生成物の関係に着目。新しい触媒はロジウム金属とフッ素を含み、2つのリン原子がロジウム金属に結合する配位子を組み合わせた。副生成物を生成する触媒構造は不安定なことから、主成分を生成する安定な触媒構造に変化するため、副生成物の生成反応が大幅に抑制される。微量のロジウム錯体でも、目的のクロロプロピルシランを実験室レベルで99%以上の収率で単一合成できた。触媒量5㏙の場合、触媒回転数(触媒が不活性化するまでの触媒1分子当たりの反応回数)は14万回に達し、工業触媒として十分な耐久性をもつことが確認された。

 産総研は引き続き同事業でシランカップリング剤反応のスケールアップ実験を行い、工業的な実施可能性を検証する。また触媒性能の解析を進めて、高機能で安価な有機ケイ素材料の提供を目指す。

NEDOなど 耐久レース参戦水素エンジン車に水素提供

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2021年6月8日

 新エネルギー・産業技術総合開発機(NEDO)など6者は、先月21~23日に富士スピードウェイで開催された「スーパー耐久シリーズ2021第3戦」の参戦車両に、水素エンジンの燃料の一部として低炭素水素を提供した。

 参戦車両は、トヨタ自動車が新たに開発した、レーシングチーム「ORC ROOKIE Racing」の水素エンジン車で、燃料電池車が水素と酸素の化学反応で発生した電気でモーターを駆動するのに対し、水素を燃焼して動力を発生させるもの。ガソリンエンジンの燃料供給系と噴射系を変更。微量のエンジンオイル燃焼分を除き、走行時にCO2を発生しない。優れた環境性能と同時に、音や振動を含めた「クルマを操る楽しさ」を実現する可能性を秘めている。

 一方、NEDOが提供した低炭素水素は、福島県浪江町の実証設備「福島水素エネルギー研究フィールド」(FH2R)で製造した水素。東芝エネルギーシステムズ、東北電力、東北電力ネットワーク、岩谷産業、旭化成とともに、再生可能エネルギーと世界最大級の水素製造施設を利用し、低コストでクリーンな水素製造技術の確立を目指している。昨年2月の完成以降、主に圧縮水素トレーラーやカードル(ガス貯蔵容器)で定置式燃料電池の発電用途として福島県内の需要先へ供給する実証試験を行っている。

 NEDOは今後もFH2Rでの取り組みを通じ、水素エネルギーの普及拡大に向けた情報発信を進めていく。なおレースで最終ドライバー務めたトヨタの豊田章男社長は、水素社会にあっても既存の内燃機関を生かすことの重要性に言及した。結果は完走。走行距離1634Km、走行時間11時間54分、水素充填回数35回、充填時間は4時間5分であった。

三井化学ファイン 酵母由来コラーゲンがヴィーガン認証取得

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2021年6月8日

 三井化学ファインはこのほど、化粧品の原料などに使用される酵母由来コラーゲンが、肉・魚介類、卵・乳製品、はちみつなど動物由来の原材料を含まないものとしてヴィーガン認証を取得したと発表した。国内初。

「酵母由来コラーゲン」取得したヴィーガン認証マーク
「酵母由来コラーゲン」取得したヴィーガン認証マーク

 コラーゲン製品は魚を含めた動物由来のものが多いが、近年の環境保護といったエシカル(倫理的)志向の高まりから、海外を中心に非動物由来コラーゲンの利用が増加している。同社は、独自の発酵法により非動物由来の「酵母由来コラーゲン」(粉体と液体)を製造する。今回、国内初のヴィーガン認証を取得したことから、今後は国内外の化粧品原料向けに広く提案していく考えだ。

 同製品は、動物由来コラーゲンに比べ分子量が小さいため溶解性と操作性に優れるほか、従来のコラーゲンと比較して熱に強く、120℃でも沈み込みや沈殿物が出ない、においが少ないといった特長も併せもつ。三井化学ファインは引き続き環境に配慮した化粧品原料の拡充を進め、サステナブルな社会に貢献していく。

東レなど グリーン水素PJ、P2Gシステムの試運転を開始

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2021年6月8日

 東レなど4者は7日、甲府市米倉山(こめくらやま)の電力貯蔵技術研究サイトで共同技術開発を進めてきた、再生可能エネルギーの電力でグリーン水素を製造し、化石燃料の利用を低減させることを目的としたプロジェクト「H2-YES」(エイチ・ツー・イエス)について、P2G(パワー・ツー・ガス)システムの試運転を開始したと発表した。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業である同プロジェクトには、東レのほか、山梨県、東京電力ホールディングス、東光高岳が参画している。P2Gシステムは、水の電気分解から水素を製造する技術。

 カーボンニュートラル(CN)社会の実現に向け、再エネの導入拡大とGHG(温室効果ガス)削減による貢献が世界的に期待されている。特に「H2-YES」では、メガソーラーの変動する電力と、大型の固体高分子型水電解装置により水道水から水素を作り出し、水素吸蔵合金システムに水素を貯蔵するなど、安全・安心にグリーン水素を利用できるシステムを構築。将来の再エネの大量導入に併せ、様々な地域や場所への同システムの展開を目指していく。

 今回の試運転は今年秋頃までを予定しており、水素の製造や貯蔵などに係る試験調整を行いつつ、山梨県内の工場やスーパーマーケットへ輸送し利用する一貫したシステムにより、社会実証試験を全国に先駆けて開始する。

 今後は、段階的に水素の製造量を増加させ、年内をめどに、当初目標である「1時間あたり300N㎥、年間45万N㎥」の水素による本格的な実証試験へと移行する計画。4者は、2050年までにGHG排出を実質ゼロにするCN社会の実現に向け、「P2G」システムのさらなる高効率化・大容量化と、国内外への普及を図るとともに、エネルギー需要家の化石燃料の利用をグリーン水素に大きく転換させるため引き続き協力して取り組んでいく。

 

三菱ケミカル 植物由来のPTMG開発、サンプル提供を開始

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2021年6月8日

 三菱ケミカルは7日、植物由来原料を使用したPTMG(ポリテトラメチレンエーテルグリコール)「BioPTMG」を新たに開発し、サンプルの提供を開始したと発表した。

BioPTMG ロゴ
BioPTMG ロゴ

 PTMGは、反発弾性や耐摩耗性といった特徴から、ポリウレタン弾性繊維(スパンデックス)などに伸縮性を付加する素材として使用されている。同社が植物由来の原料を使用して開発した「BioPTMG」は、石油由来のPTMGの性能と同等の反発弾性、耐摩耗性、耐加水分解性、低温での柔軟性などの優れた特性をもつため、インテリア、ファッションから工業資材に至るまで幅広い分野での活用が可能。スパンデックス以外にも、ポリウレタンエラストマーやポリエステルエラストマーでの使用が想定される。

 同社は、今回開発したグレードにとどまらず、さらに多くのグレードを開発・拡充することで、顧客ニーズに応えていく。また「BioPTMG」をはじめとする植物由来の素材の研究開発を加速させ、持続可能な社会へのソリューションを提供することで、SDGsの達成に貢献する。